蛍と一緒に夏祭りに行くのだと、浴衣姿で現れた菅原くんが、月島家の門扉の左右に飾られた絵付きの灯篭を指してあれ誰の絵? と問う。
恥ずかしいけど、
「俺と蛍が小学生の頃に描いた夏休みの宿題」
母が灯篭に貼って、未だに毎年飾っているのだ。
「え、小学生っつたら明光くんの何年物? すげーな」
目を細めて綺麗だな、と灯篭の目の前に座り込んで、額も頬もほんのり橙色に染める。
綺麗だなって、それはこっちの台詞だ。
彼は蛍が好きで、蛍も彼のことを誰よりも大事に想っていて、だから俺の想いは誰にも明かせない。彼の両耳を両手で塞いで後ろからそっと顔を寄せ、振り返る彼の耳元に「好き」と呟いた。