俺にとって、シュウは友達よりも距離の近い、家族みたいな存在だった。
母親に連れられ、まあまあ大きい街から地方へ引っ越した。だだっ広い田んぼと畑の間に、ぽつんぽつんと木造住宅が建っている。その後ろには木が生い茂るでっかい山々。絵に描いたようなド田舎。
俺はまだ9歳のガキだった。慣れ親しんだ前の家を離れる寂しさとか、新しい学校でやっていけんのかなとか、とにかくいろんな感情がごっちゃになって、車に揺られる度ぐらぐら考えていたのを覚えている。
「はい、じゃあ自己紹介をどうぞ」
「ミ、ミスタリアスです…よろしくお願いします…」
黒板の前で挨拶をした時、自分に向けられるたくさんの目に耐えられなくて下を向いた。たくさんっつっても、そのクラスには10人しか生徒がいないんだが。今じゃ1クラス40人いる高校に通う身からすれば、なにそのくらいでびびってんだよって話だけど。
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