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    某くじパロ
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    #Ikeshu

     カシャカシャとシェイカーを前後に振ってドリンクを混ぜる。頃合いになったところで蓋を開けてカクテルグラスへと注いだ。グラスを指で支えて床を滑らせるように相手へと提供する。
    「お待たせしました、ベルベットハンマーです」
    「お、おお……」
     カクテルを出された相手、闇ノシュウはカクテルと僕を交互に見てパチパチと手を叩いた。誰もいないこの場では彼の手の音が響く。手を叩き終わったシュウはグラスに手を伸ばして少し持ち上げ、くるくると回して笑みを浮かべた。
    「すごいね、アイク。バーテンダーみたいだよ」
    「みたい、じゃなくてバーテンダーだよ」
    「そうだった」
     今日は僕達のバーが来週開店するからシュウをお客に迎えて接客の練習をしていた。本当はヴォックスやルカも呼んでみんなで練習をするつもりだったけれど、今日はみんな遠方へ行って開店に必要なものを仕入れに行っていた。味の確認もしてもらいたかったけどシュウ相手に飲んで欲しいと言えるはずもなく、出来上がったカクテルの見た目を楽しんでもらって後で僕がすべていただくつもりだ。
    「ねぇ、アイク。これはどういうお酒?」
    「これはコーヒーリキュールに生クリーム、ホワイトキュラソーをいれたもので、オレンジ風味にコーヒーのほろ苦さを調和したカクテルなんだ。生クリームが入っているおかげで口当たりなめらかで甘口だよ」
    「コーヒーなんだ。おいしそうだね、後で飲んでもいい?」
    「だーめ、美味しくて飲めちゃうけどこれすごくアルコール高いんだ。シュウが飲んだら一口で倒れちゃうよ」
    ちぇー、っとシュウは少し唇を尖らせて残念そうに声を出す。そんな彼から取り上げるかのようにグラスを自分の元へと引き寄せてグラスに口をつける。うん、配合は丁度いいか気がする。甘さを求めるならもう少し生クリームを多めにしてもいいかな?ぶつぶつと呟きながらノートにメモを取り、ふとノートから視線を上げると楽しそうに笑っているシュウと目が合う。
    「……えっと、どうしたの?シュウ」
    「もうすぐなんだなって。アイクがやっと自分のお店持てるようになるんだな〜って、そのノートを見て嬉しくなっちゃってさ」
     シュウは僕がメモしていたノートを指差して嬉しそうに笑う。綺麗とは言い難い、所々水に濡れてシワシワになったこれは僕がバーテンダーを目指し始めた頃からつけ始めたもの。もう何年もカクテルについて勉強してメモしているからボロボロで、シュウは僕が勉強しているのを1番近くで見て、支えてくれていた人だ。そんな彼に言われると、改めて夢が叶うのだと実感して鼻の奥がツンとした。
    「……ねぇ、シュウ。今日は次で最後にするから、一杯だけ付き合ってよ。アルコール低いのにするから」
    「勿論。僕好みにしてくれる」
    「お安い御用だよ」
     シェイカーを取り出してリキュールを中に注いでいく。全て注ぎ終わったら蓋を閉めてさっきと同じように前後にシェイカー振ってグラスへと注いだ。最後にカットしたレモンをグラスの縁に添えてシュウへと差し出す。
    「どうぞ、アプリコットフィズです」
    「……、綺麗だね」
     ありがとうと受け取ったシュウはグラスを光に当て、反射でキラキラと光るそれをみて頬を緩ませた。彼の分と一緒に自分の分を作って注いだグラスを持ってバーカウンターを出る。そして彼の隣に座ってグラスを傾けた。
    「ありがとね、シュウ」
    「アイク、これからだよ。でも君なら絶対成功する」
     グラス同士をくっつけてコツンと音を鳴らしてから口をつける。口の中で広がるフルーツの甘みに自然と頬が緩んだ。
    「美味しい……。これ、初めて飲んだ。何入ってるの?」
    「アプリコットリキュールにレモンジュース、それに砂糖も加えているから甘くてシュウ好みでしょ?」
    「うん、凄くぼく好みの味だよ。すごいね、アイクは」
    「ひひ、ありがとう。……ていうか、シュウ?君も来週からここで働くんでしょ?ちょっとは覚えてね?」
     はーい、と伸ばしながら返事したシュウは再びグラスに口をつけて僕が作ったカクテルを飲む。飲む際に髪が揺れ、ちらりと見えた耳が赤く染まっていることに気付いた。よくよく見ればいつもよりはマシだけどシュウの頬が赤くなっている。比較的アルコール度数は低いカクテルだけど、シュウにとって酔うには十分なお酒だったかもしれない。
    「シュウ、もしかして酔っちゃた?顔真っ赤だよ」
    「ん、へへ……。大丈夫だよ、これ全部飲み切れるから」
     アルコールのせいかいつもよりもへにゃへにゃな笑顔を見せるシュウはちびちびとお酒を飲む。最後まで飲み切ったシュウの瞳はとろんと蕩けていて、そんな彼が僕の手をきゅっと握りしめて口を開く。
    「ぼくも、がんばるからね。あいく、といっしょに、おみせするからね」
     ついに限界がきてしまったのか、シュウは言葉が終わると同時に僕の方に身体を預けてそのまま眠ってしまった。僕の方ですやすやと気持ちよく眠るシュウを起こさないように優しく抱き止めて頭を撫でる。君がいたから僕は頑張れた。これからも僕のそばで支えていてね。

    「      」
     
     眠ってしまった彼には届かない言葉を送り、僕は彼を抱き上げて店をあとにした。
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