月の悪魔仕事帰りの夜道で「はい、おねーさん止まってー」って後ろから腰に手を回して首筋に冷たい何かが突きつけられる。何も分からず手を上げて抵抗はしないと意思表示をする。「物分りがいいね。さらに帰してあげられなくなっちゃった」ずっと楽しそうな口調で話すが、私は彼を知らない。
「ど、どちら様ですか…?」震える声で聞いてみる。すると肩を持たれてくるりと回される。少し身長が高めの金髪の瞳が大きく好青年といえるような男がいた。「忘れちゃった?まあ、無理もないか」あちゃーと言わんばかりの反応を取られる。忘れてる。私は何か忘れている。誰か忘れている。
「同じ故郷だったんだけど…うーん。あっ!こうすればわかるかな?」そう言って丸く整った髪をぐしゃぐしゃにする。そしてニカッと歯を見せて笑う。この顔は見たことがある。「もしかしてボサボサ頭の📱くん…?」やっとわかった。軽い口調。金髪。大きい瞳。好青年。笑顔が明るい。📱くんだ。
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