君のこと / まや ふわりと揺れるフォームミルク。カップに入ったそれをゆっくりと口に運ぶ。
(カフェラテとか飲むんだ…)
ひと息おいてから二口目。もしかして猫舌なのだろうか。
日和は目の前にいる彼のことをほとんど知らない。泳ぎのタイムならば嫌でも記憶に残っているけれど。
高校の頃から大会で会う機会はよくあったが特に仲が良いわけでもなく、これといってまともに話した記憶もない。だからこそ、自分にしばしばつっかかってくる彼のことを日和は不思議に思っていた。
暖かみのある照明に深い色のテーブル。店内のレコードから流れるジャズが、二人の間に流れる気まずい沈黙に混ざる。堅苦しすぎないゆったりとした雰囲気とあたたかいカフェラテが日和を心地よくさせてくれ、その居心地のよさに普段ならば長居してしまいそうなものだが、今日はどこか落ち着かない。
1766