ダンスレッスン「ほぉら、君は、姿勢は、いいんだから、そのまま! ワン、ツー、スリー」
ワルツのリズムに乗せながら、不安が残る足捌きに自然と首が下を向く度姿勢を正される。
まるで(というかまさに!)抱き合うような姿勢で彼女をホールドしているコチラとしては胸の高まりが止まない。
流石にもう彼女の足を踏みつけたりはしない程度には上達したとは思うが、意地悪そうに笑う彼女に「これではまだ王子にリードして貰うわけにはいきませんねぇ」と、傍目には私のリードに見えるようにその実彼女に誘導されているのだ。主導権を握ろうと力を入れるタイミングさえ見透かされるようにスッと身を引かれ、また次のターンではこちらの力をそのまま流され彼女のターンの軸とされる。
パーティでお相手いただくだろう少女たちと違って、婦人は私の教育係で幾らか歳上である為か私より少し背が低い位で、この体勢だとほとんど頬と頬が触れ合う位置になる。
最初に出会った彼女の腰程の背丈だった頃から、彼女より身長を伸ばすことができたのは神の恵みか私の執念か……。
城のダンスホールでのダンス練習も後わずか……
私は右手で彼女の腰を抱き寄せつつ、どうやって婦人を兄王の婚姻相手を選別するパーティに連れ出し、私の結婚相手だと宣言するかを考えてるのだった。