無題1 右上 「三墨。こっち見て」
「なんだ」
「えい」
そう言って彼女、同居人の游は、自らの頬に人差し指を向けて、何やらにこにこと微笑んで静止している。そうして数秒した後、すんと真顔に戻る。
「どう?」
「……何が?」
決して無碍な対応をしたわけではなく、率直に、意図が、行動と問いかけの両方がという意味で、よく分からないのでその感想を素直に口にしたところ、露骨にがっかりした顔を向けられる。理由がよく分からないが、非常に釈然としない。
「かわいいポーズ、一週間くらい練習してたのに」
「今の行動にそんな意味が……」
というか一週間もそんなことしていたのか、俺はそんな姿一度も目にしていなかったが、陰ながら何かしらの努力をしていたのだろう。
1838