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    qomqompurinn

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    qomqompurinn

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    ちかいぶ二次創作

    愛されたいのはきみにだけ⚠付き合ったあとの時空。
     
     男の人って、感覚おかしい人多いなって、たまに思う。
     
    「俺、神崎のこと好きだわって最近思ったんだよね」
     彼女と婚約したばかりだと通話で嬉しそうに報告していた目の前の男性はその指輪のついた左手をハンドルの上で煌めかせながら、私に向かって愛の告白をしてきた。赤信号が憎たらしく輝く。まだ1回しかリアルで会ってない、てかそれも大人数での顔合わせだったのに。ゲーマー仲間だからと信用して努めて普通に振舞ってたのが馬鹿馬鹿しい。絶望感からがっくりと肩が落ちた。
    「……結婚する予定は?」
    「あいつとはちゃんと別れる。てかレス気味だったし、あいつも俺の事好きって気持ち薄れてきてるなって感じてたから」
    「…………」
     絶句で言葉が出てこない。ほんと最低だ、そして私も最悪の気分だ。赤信号は私の気なんて知らずに青へと変わって、車は前進する。こんな気分であと数分間彼に最寄り駅まで送られないといけないのか?免許持ってるからってあまり調子に乗るなよ。こうなることなら……呼んどけばよかった。静寂が気まずく私と彼の間に落ちるが、彼はそんな空気を微塵も感じていないのか、続けるように口を開く。
     
    「良かったらこれから俺の家で飲み直しとかどう?神崎も疲れたでしょ」
     
     ……はぁ。本当にどうしちゃったんだろう。この前まで普通にゲームして、普通に話せてたはずなのにな。これから誘いにくくなっちゃった。やっぱり会うの辞めておけばよかった、ろくなことにならないや。彼の車の甘ったるい芳香剤と煙草の匂いが鼻先に香って、少しずつ頭が痛くなってくる。空気の読めないムーディーなBGMも相まって、苛立ちがむかむかと募った。
    「駅までどれくらい?」
    「え?いや、俺の家向かってるけど」
     私が断るより先に連れて行こうとする、そういうところが本当にダメ。マジで女の子の扱い分かってないね、彼女さんが可哀想だよ。こういう時、下手に刺激すると車から降りさせてもらえなくなる。無理やりに何かをされないように、少し考えて言葉を口にした。
    「1回帰ってから考えたい。整理できない」
     考えたいのは貴方との関係じゃなくて、断り文句の方だけど。そういえば助手席の私にちらりと視線を向けて「うん、いいよ。前向きに検討してくれると助かる」なんて笑った。な~にが前向きにだ、お前の指輪は何のためにあるんだよ。ああ、本当に最悪の気分。こんなに気持ち悪さを感じたのは久しぶりだ。ゴキブリの方がまだかわいげがある。外は晴れの天気予報が外れて、ぽつりぽつりと弱い雨が窓を叩いていた。
     非常に気まずい無言の間をスマホを弄って耐える間、目に映るのは昨日送ったトーク画面。単語で返されるぶっきらぼうなメッセージに、ほっとため息を吐きそうになった。こういうことで頼ってしまうのは申し訳が立たないが、今は彼に会いたくて仕方がない。あーあ、昨日強情に断らず、素直に迎えに来てもらえばよかった。
     
     ちらちらと窓の外を見ていれば、地獄のような時間は終わりを告げた。駅の駐車場が近づいてきて、内心ほっとしてしまう。車はゆっくりと停車した。
    「送ってくれてありがとう」
     と、ドアを開けようとすれば、右腕を引き止めるように掴まれた。振り返れば、彼は顔を赤くしていかにも切なげに眉を下げている。恋愛ドラマならきっとクライマックスのシーンだろう、でも私にはもう、運命の人がいるから。
    「ね、降ろして」
     おねがい、と決まり文句を口に出せば、彼はその指輪のついた左手をほどいた。
    「……またな。返事待ってるから」
     にこやかに手を振る彼に素早く背を向ける。ごめんだけどもう二度と会うつもりはない。
     雨足が強くなっている。土砂降りという訳ではないが、しばらく続きそうな雨だ。折角の髪が乱れてしまうのは最悪だが、飲み会終わりにそんなことを気にしている暇はない。それに、彼を呼ぶ理由が出来て、好都合だ。
     私は開きっぱなしのトーク画面から迷わず通話開始のボタンを押す。3コールもしない間に、低い声が私の鼓膜を揺らした。
    「なんか用」
     チカくんの声に、張り詰めていた背中の力が抜けていくのが分かった。電話口から上着を着るような衣擦れの音が聞こえてくる。多分、私の言いたいことは伝わっている。罪悪感にさいなまれながらも、彼のその優しさが身に染みていった。じっとりとした周囲の湿度を感じさせない、乾燥した声が今は何よりも嬉しい。
    「あの~……迎えに、来てほしくて……」
    「……最初からそうしとけ、アホ」
     飛んでくる正論と暴言に心地よさを感じてしまうのは末期だろうか、そうです末期なんです。ぼうっとしている間に彼は準備を終えたようで、ドアを閉める音と共に大人しく待ってろ、と一方的に電話を切られた。どうやら私が待っている場所もお見通しなようだ。頭が上がらない。

     しばらくの間、終バスの過ぎたバス乗り場でベンチに座って見慣れた車を探す。車が近づくたびに、目を向けて、これじゃないと少し落ち込むことを繰り返した。チカくんに会うのが待ち遠しくてたまらない自分が本当に馬鹿らしくて、でもきっとそんな私でもチカくんは好きでいてくれるだろうな、みたいな。浮かれた思考に頭が支配されていく。世界で一番幸せな浮かれポンチ女は私です。
     
     長く感じる一瞬を待ち、見慣れた車が近づいてくる。節電で消された電灯の中でも、彼の車はすぐに分かった。立ち上がって申し訳程度に髪を整える。彼の車はちょうど私の目の前に滑らかに駐車した。運転席に座る彼と目が合っても何も言わないし、窓を開ける素振りもないけれど、ドアが開けやすい位置に停めるようなさりげないやさしさを感じて心が温まる。
     私はすぐにドアを開けて(鍵を開けてくれてるのも彼らしかった)、助手席に乗り込む。彼の方に感謝を述べる前に、容赦ないデコピンが額に飛んできた。
    「あだっ」
     そっぽを向いたまま、彼はアクセルをゆっくりと踏み込む。動き出した車の感覚に、慌ててシートベルトを締めた。「チカくん、迎えに来てくれてありがとう」と言えば「ん」と短く返される。その言い方に胸がきゅ、と疼いた。不器用で素っ気ないけど、なんだかんだ迎えに来てくれる。そういう所で私は単純だから、また胸を高鳴らせてしまう。
     ……ほんとうに、好き。さっき長かった信号待ちの時間ですらも、彼の横顔を見ていたら一瞬だ。さっきまでの色々が思い浮かんで、抑える間もなく口をついて出ていく。
    「ねー、さっき、告白されたよ」
    「はあ?」
     素っ頓狂、というにはローテンションだけれど、彼は理解できないと言った風に声を上げた。
    「ちゃんと断った」
    「当たり前だろ」
    「えへ、へへ」
    「ヘラヘラすんな」
     少し苛立ちの入った声にドキドキしてしまうのは内緒だ。ヤキモチ妬いてくれてるのかなとか、心配してるんだろうなって、愛されてる気分になれるから。
     車を走らせて数分、着いたのは私の家だった。何も言わずに自宅に返してくれる何気ない行動が心に好きを積み重ねていく。勿論彼が特別優しい人なのはわかっているけれど、世の中の男性陣は彼を手本にしたらもっと素敵になれるだろうなとぼんやり思った。
     
    「チカくん、今日一緒にいたい」
    「……分かった」
     
     彼が私を送り届けて帰るだけなのはさみしい。とかなんとか思いながら彼に甘えれば、チカくんは少し無言になった後、頷いて了承してくれる。お休みに呼び出しちゃったにも関わらず、本当に優しい。チカくんに何回好きって言っても足りないや。
     近くの駐車場に車を置いて、彼がドアを開いた。雨の中、ばさりと黒い傘が開く。私も降りようとドアに手をかけるが、それよりも先にするりと回り込んだチカくんがドアを開けた。問答無用で私の手に傘を握らせて、足元を気にしながら降ろしてくれるの、ちょっとだけ王子様みたいだって言ったらまたお花畑って言われるだろう。お花畑で何が悪いんだ、種を撒いて水をやって、咲かせているのはそっちの癖に。
     相合傘なんて甘いことはせず、先を歩く彼に合わせて着いていく。足元を見れば水溜まりを避け、水が跳ねないように歩いてくれているのが分かり、愛しさが募った。今すぐ抱きつきたい衝動に駆られるが、家に帰れば幾らでも抱きしめてくれるだろうから口を閉じて耐える。
     
    「おい、鍵」
     と、掌が目の前に差し出された。顔を上げれば見慣れた玄関の灯りが私とチカくんを照らす。2人でばさりと音を立てて傘を閉じ、彼に傘を預けて私は鞄からカードキーを取り出した。そのまま掌に手渡し、代わりに傘を受け取る。かわいいケースに入ったそのカードはチカくんには似合わなくて、思わずくすくすと笑えば、彼はじとりとこちらを睨みつけた。ごめんて。
     オートロックを解除して、ホールでエレベーターを待つ。光る数字がひとつずつ若くなって、2人きりの時間が近付いてくる。ポーン、と軽い音を鳴らして開いた箱に2人で収まってボタンを押した。話すことは特になくて、ただ無言の間が続く。それでも気まずい雰囲気は無い。あいつとは大違いだ。
     はやるように自室へ向かい、チカくんに鍵を開けてもらう。彼は私を先に入れると後ろ手に手早くドアの鍵を閉めた。暗い部屋に出迎えられながらお気に入りの靴を脱いだ。あ、少し泥がついちゃってる。明日洗わなきゃ。
     並ぶ靴を見ると少しむずむずした気持ちが込み上げてきた。私とチカくんの足の大きさ全然違うなぁって……こんなことできゅんきゅんしてるの、単純すぎる、でも好きだからしょうがないじゃん。
     チカくんはすぐに手を洗ってリビングの方へと向かう。パチ、と電気を付けて、水色のソファへと腰を下ろした。私もそれに続き、チカくんの隣に座る。
     肩に触れる温度が心地よくて、そのままもたれかかる。そうしたら特に拒否もせずに腕を回してくれるところが好きだ。私はその腕に一瞬だけ頬ずりして、隣に座る彼に抱きつく。
    「なに」
     低い声が穏やかに鼓膜を揺らして、大きな手が私の背中を撫でる。訝しむような口調をしていても撫でる手つきは本当にやわらかくて、その素直じゃないところにどうしようもなく愛しさが込み上げた。口角が上がった顔を見られないように、彼の胸に額を押し付ける。とくん、とくん、と生きている心臓の音がした。

    「チカくんしか好きじゃないよって言いたくて」
    「んだよ、急に」
    「ねー、好きだよ」
     顔を伏せたままそういえば、頬を包まれて上を向かされた。ざら、と皮膚と皮膚が擦れ合ってくすぐったい。思わず目を薄める。
    「……あほ面」
     海のような瞳が私を捉えて、彼は微笑んだ。
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