大学入学を機に、一人暮らしを始めた。
引っ越した際に挨拶をした隣人は自分と同じ一人暮らしで、その日以降「作りすぎたから」と頻繁におかずを持ってきてくれるようになった。
料理なんて自分のために作る気もなく、ましてや好きでもない。適当に腹に入ればいいと思っていた自分にはもったいなく感じたが、正直ありがたいものはありがたい。人より体格が大きい自分はいくらあっても足りないくらいなので、ありがたく頂戴していた。そんな日が続き、胃袋でも握られてしまったか、想いを寄せるのに時間はかからなかった。
「これ今月の食費です」
「えっ??」
封筒にバイト代でためた金額を入れ、食器を返すついでに無理やり押し付けた。
できたての卵焼きがまな板の上に乗っている。これから一口サイズに切られるのだろう。ホカホカと湯気がたっていた。
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