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    たわの

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    リハビリ(イブ)フキss
    たまに心が弱ってしまうフキさんの独白。

    ##創作

    イブフキss 目の前をぽてぽてと歩くウパーの後ろ姿を眺めながら帰路を歩く。時々振り返ってこちらを確認しては鳴き声を上げるウパーに、心配かけてしまっているとは理解しつつも、どうにも元気な顔をしてあげられなかった。

     祖母が他界してから日々に忍び寄る寂しさは、仕事に熱中しポケモン達と触れ合う事で見ないようにてやり過ごしてきた。それがイブさんと出会ってそんな事をしなくても寂しさを感じる機会が減ったのは、とても幸福な事だ。
     だが、ふとした瞬間……例えばこんな雨が降り出しそうな天気の日なんかは、自分1人だけの空間に立ち込める静寂が酷く重苦しく感じて家に帰るのが億劫になる。そしてそんな時はどうにも、今までのやり方では寂しさをやり過ごせない事が多くある。
     普段はイブさんが滅多に家にいないことに不満を感じることも、寂しさを感じる事もない。彼は常に世界中を飛び回っているような人だが、定期的な連絡はかかさないし、家に帰って来た時は十分すぎるほど私に時間を割いてくれる。自分の不在時を心配して紹介してくれた賑やかな友人も、度々訪れては寂しさを吹き飛ばしてくれるから困ることも多くない。私が彼の生活に理解を示す様に、彼も私の心に寄り添ってくれるから、夫婦としては短い時間しか共有できなくとも円満な関係を築けていると思う。
     だから私は今の生活を納得しているし、気に入ってもいる。それでも、こういう瞬間は必ず訪れる。普段は自炊する事が多いが、何をしても寂しさを拭えない気持ちのまま家で1人で食事をしたくなくて、もう目の前まで見えた我が家を背にしようか悩む。ウパウパと玄関に着いてこちらを急かすウパーに、いったん手持ち達に食事をあげてからでも良いかと、「ちょっと待ってね」と声をかけながら習慣となったポストの中身を確認して、思わず笑顔が溢れた。

     表には笑顔で泥まみれになっている愛しい人と茶色いウパーの写真。裏には近況報告として今いる地方特有の生態を持つポケモンについて研究している旨とこちらを気遣う文句が丁寧に書かれ、その下に恐らく後から急いで書き足したのであろう、走り書きのもうすぐ帰るの文字。
     
     それだけで心に立ち込めていた寂しさを消し去ってしまうのだから、本当に敵わない。玄関先で動かない事を不思議に思ったのだろう、足元からウパ?と呼びかける声がする。
    「もうすぐ帰ってくるって」
    そう言ってウパーに向けた顔は、きっと本日1番の笑顔だったと思う。
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