1-Bがゲームでモブを徹底的に叩きのめすお話突然、寧々からのLINEが飛んできた。
寧々:司、今からゲーセンに行くんだけど付き合ってくれない?
司:別に構わんが、どうした?えむや類は?
寧々:アンタと行きたいのよ!!さっさと来なさいっ!!!
とまあ、そう言われれば行かないわけにもいかないので、大通りのゲーセンに行く。
たくさんのお客さんで賑わっている。そこにクレーンゲームをしている寧々を見つけて声をかける。随分とたくさんぬいぐるみが溢れていた。
冬弥もそういえばたくさんのぬいぐるみを取ってはオレや咲希にプレゼントしてくれたなあ…。
「寧々、待たせたな。にしても随分とたくさんのぬいぐるみを取ったなあ」
「それ、司にあげる」
「はあ!?」
こんもりと山になったぬいぐるみ、寧々は全部オレにあげると言った。なんで??
「な、なぜ?えむにあげればいいだろう?こういうの好きだしな」
「―――別に。私がただそうしたかっただけ。有難く受け取りなさいよっ!」
「わ、分かったから!!」
顔をまっかにする寧々に、オレは頷くしかなかった。
どうやって持って帰ればいいのだろうか、と悩むと、袋を渡してくれた。
天馬さんと分けていいから、と言ってくれたので、咲希と分けることにした。
さて何処に飾ろうか…。
「オレの家には冬弥がくれたぬいぐるみで溢れているからなあ…」
「それよ」
「…うん?」
「青柳くんが羨ましかったわけじゃないからね!!わたしだってこれぐらい出来るし!!だから!欲しい物があったら青柳くんじゃなくてわたしに」
「そうか、草薙は俺と同じくぬいぐるみを司先輩にあげたかったんだな」
寧々がそう叫ぶのと同時に、声がした。
振り返るときょとんとした顔の冬弥がいた。まさか冬弥に聞かれるとは思わなかった寧々は思わずオレの後ろに隠れてしまった。
「おお!冬弥!いつからいたのだ?」
「ついさっきです。クレーンゲームをやりに来たら大量にぬいぐるみを取っている草薙と、司先輩を見かけたので」
ということは全部聞かれていた、と。
戸惑う寧々と対照的に冬弥はにっこりと嬉しそうに微笑んで
「司先輩、欲しい物はありますか?何でも取ってみせますよ」
対抗意識を持っているのか、冬弥は不敵な笑みを見せて、オレに言った。
こんな表情を見る冬弥は初めてだ…!なんだか楽しそうだな。
それを聞いた寧々はハッと目を見開き、冬弥の前に出た。
「司の欲しいものはわたしが取る。」
「負けないからな、草薙」
「こっちこそ…っ!!」
何やら二人は燃えていた。あの人見知りの寧々と、人付き合いを制限されていた冬弥がこうしてライバルとして燃えてるのを見ると嬉しくなるが、二人は一体何の勝負をしているのか分からんが。
クレーンゲームを見渡し、ふと目についた。
あれは、咲希が好きなポリポリチップスが入ったお菓子のバケツだ。おそらくバケツの中に小袋でたくさん入っているのだろう。
そういえば最近お小遣いの使い過ぎで、お菓子が買えてないとぼやいていたなあ。
と、思っていた時、オレの視線に気が付いた冬弥と寧々はすぐさまそのクレーンゲームにお金を入れて動き出した。
スピードが速くないか二人とも!?
流石にぬいぐるみとは違い、重さも段違いだ。1回は様子見、2回目でガゴンと入れていく冬弥は流石としか言いようがない。
寧々も1回、2回目でコツを掴み、3回目で見事入れて見せた。
おおーー!!と見ていた観客からも声が上がる。
「司先輩!」「司!」
「あ、ありがとう二人とも…咲希と一緒に食べるからな!」
お金も払うと言ったのに頑なに拒否をした二人。
さすがに申し訳なかったので、せめてと、二人を何とか説得させて、1袋ずつ持って帰らせた。
オレが欲しいといえば取っていくであろうから、もう大丈夫だと言って、折角なので3人で遊ぼう!と言った。
「あ、ダンスゲームがあるな!これやらないか?」
「いいけど、わたしと青柳くんはハンデ付けた方がいいんじゃない?」
「なんだとお!?寧々も冬弥も本気でかかってこーいっ!!」
「ふふっ、では、俺も頑張りますね」
ダンスゲームでは寧々に軍配が上がった。以前優勝したゲーム大会以来、寧々はえむとゲーセンへ行くことが多くなり、ダンスゲームを悉く制覇していくえむに付いて行ったら自然と自分も腕が上がったらしい。ショーの練習とかで体力も上がってきているので、難なくプレイ出来ている。
冬弥は寧々の動きを見ながら冷静に分析をし、何処にどうやって、何を来るとか、パターンを読んでいた。冬弥の理解力の速さに寧々もゲーム魂に火が付いたようだ。
オレは自分でプレイをするというよりも二人の白熱したプレイが見たいので、3回目ぐらいで終わり、あとは後ろで二人のプレイを見ていた。
――のが、行けなかったらしい。
「ねえねえ、君。1人?ならオレらと一緒に遊ばない?」
「オレ、男なんだが??」
ニヤニヤとした目つきで見てくる二人の男。身長は170㎝以上あるし、服装も男性ものだ。だから何故と疑問に思うのだが
「知ってる知ってる。女だと後々面倒くせぇからさ、男の方がいいんだって。な?」
「言ってることがさっぱり分からんのだが。それにツレがいるからお断りだ」
「ツレぇ?ひょっとしてダンスゲームしてる男女2人??もしかしてカレカノの間に挟まってる可哀想ってやつ??」
「それなら好都合じゃん!!二人の邪魔したら悪いって!!」
「そうそう!!邪魔になるからむしろいない方がい」
オレの話も聞かず、腕を引っ張ってくる男たち。話が全然通じないと悟り、力づくで…と思ったときだった。
「わたしの司に何してるわけ??」
「俺の司先輩に何してるんですか??」
怒りモードの寧々と冬弥がこっちにやって来た。
無言でずんずんオレに向かって行って、ぐいっと引っ張って、冬弥の腕の中へと収まった。寧々はしっかりとオレの腕を抱きしめているし、冬弥は後ろからオレに抱き着いている。
「冬弥!寧々!」
「話を聞いてみればわたしと青柳くんが恋仲だって?冗談じゃない!!
わたしは!司の!彼氏なんだけど!?!?」
「はい…?」
「心外だな。草薙はゲーム仲間。司先輩は俺の恋人ですが!!!」
「はい…?」
オレはいつから寧々の彼女に?冬弥の恋人になった??
というか寧々は逆では――いやいや、違うだろう!?とつっこみたいが何処から突っ込んだらいいのか分からんっ!!!
ぽかーんとしてるオレにナンパ2人組もぽかーんとしていたが、すぐに上から目線で。
「な、何言ってんの??そもそも男がカノジョって頭おかしいんじゃないの??」
「そうだって!!そもそも男女の仲に入り込んだこいつが邪魔だったんだろ??なら俺たちで引き取るって話だって!!なっ!!」
はあ!?とますます鋭い目つきで相手を威嚇する冬弥と寧々。
オレを抱きしめている腕は決して離さない。
「こんな時ネネロボがいてくれたらビームとパンチで一発なのに」
「いくら何でも物騒だからやめような、寧々」
「………」
「冬弥も物騒な考えはやめような」
なるべく優しく語り掛ける。
まあオレとてあいつらより、冬弥と寧々の傍にいた方が安心するので。
ここまで来たら諦めるのか――と思いきや、
「まあまあ、100歩譲ってお前たちが恋仲ではないことは理解した。ならさ、ここはゲーセンじゃん。こいつを賭けて勝負と行こうかあ?」
人の話を最後まで聞けと言いたい。
何故オレが賭け対象にならなければならんのだと目が点になる。
寧々も冬弥も「ああん??」とガンつけていた。
いつもの寧々と冬弥は何処へと言わんばかりにキレていた。
「なんでそんなのやらないといけないわけ。司を賭けて?バカなの?」
「では俺たちはこれで」
寧々が睨み、冬弥はオレを連れて、この場から去ろうとする。
しかし、もう片方の、空いていた腕をがっちりと掴まれた。
そのまま引っ張られたが、冬弥が後ろから抱きしめていたのが幸いしたのかでオレは男たちに連れ去られることはなかったがその腕は掴まれたままだ。
「まあ、待てよ。賭け物があったら盛り上がるじゃんww勝ち負けで何もないゲーム何てつまんねぇしさ」
「オレらに負けるのが怖いからだろ??この辺じゃ有名なゲーマーだからな俺たちは」
「そうそうww楽勝でオレらの物だし~~??」
じゅるりと舌なめずりをしてオレを上から下まで舐めるようにしてみる男に思わず寒気がした。ゾクリと恐怖を感じたオレの震えに気づいた冬弥と寧々は
『大丈夫です、先輩。必ず俺たちが守りますから』
『司、安心して。あんたは必ず私たちで守ってみせる』
小声でそう言われて、安心する。
よかった、いつもの寧々と冬弥だ。
「そこまで言われたら腹が立ってきた。やるよ、青柳くん」
「ああ、もちろんだ。完膚なきまでに」
「私たちに挑んだこと、後悔させてあげる」
不敵な笑みを浮かばせ、冬弥と寧々が笑う。
―――ということで、なぜかオレを賭けたゲームが始まった。
「勝負はこれだ!!」
そう言って男が指さしたのは、シューティングゲームだった。
いつの間にかギャラリーがいたようで、がやがやとオレたちの周りを囲んだ。
寧々と冬弥は目を見開く。男たちはふんぞり返って
「驚いたか!!オレたちはこのゲームでチームランキング上位!!何と難易度EXPERTで、5位なんだぜ!!」
「ま、勝つためには手段を選ばないっていうか~~!勝負する前から目に見えてるけど、まあ、仕方ねぇし??まっててね~~~つかさくんww」
いつの間にか名前で呼ばれて吐気がした。
う、何か飲み物が欲しいなと思いながらも、ギャラリーに囲まれて、なおかつ逃げられないように手を拘束されては何もできない。
ギャラリーたちが「え!?うそでしょ!?チーム戦の5位ってあいつらなの!?」「絶対勝ち目ねぇじゃん!!!」と騒いでいた。
あいつらは最初から自分たちの得意なゲームを指名して、不利に陥れようとした。
寧々と冬弥は…大丈夫だろうか…。
寧々はあまりにも恐怖で冬弥の後ろに隠れているし…冬弥も寧々を庇うようにしている。いくら二人がゲームが得意とはいえ…。
「…草薙、大丈夫か?」
「―――うん、大丈夫。やるよ」
「ああ」
決意を固めた寧々が冬弥に頷く。
今回はチームを組んでスコアを競うシンプルな方法だ。
いつの間にかレフェリーをやる人が現れて(多分ここのスタッフさんだろう)その人が「では金髪君を賭けて、レディーゴー!!」と叫んだ。
オオオオオオオッッ!!!!!と観客が盛り上がる。
オレもこれさえなければ一緒に盛り上がったものの…っ!!!
勝敗はーーー。
単刀直入にいうと、圧勝だった。
寧々と、冬弥が。
「く、こんなはずじゃなかった…!!」
「なんなんだよあの二人っ!!!オイ誰だよ!!ゲーム素人とか言ったのはっ!!」
悔しそうにしゃがむ男2人。
自分たちの得意なゲームで有利にさせようとしたところ、甘く見ていた寧々と冬弥に負けまくっていたのである。
ゲーム開始早々、寧々はいきなり早撃ちをし、雑魚を瞬殺。空からの敵を冬弥が正確に次々と打ち倒す。
ボス戦に至っては、スピード重視の武器を使っている寧々が周りの敵を引き受け、攻撃力が高い武器を持っている冬弥が敵を瞬殺。寧々は雑魚を倒しながら冬弥のサポートに回り、冬弥はボスに集中できるというわけだ。
な、なんというコンビネーションの高さ…凄すぎるううう…!!!
ギャラリーも全員ぽかーんとしており、レフェリーのスタッフさんも唖然としていた。
次から次へとスコアを塗り替える二人。
「―――ちっ、今回は届かなかったか」
「そうだな。残念だ」
何をだよっ!!!!!
スコアを塗り替えているのに、残念そうな寧々と冬弥に、その場にいた全員は思わずツッコんだ――。
「それで?まだやるの?」
「諦めたらどうなんだ」
得意げに笑う寧々と、頷く冬弥。
完全に舐めていた二人に、男たちは悔しそうである。
スコア画面のチームランキングがずらりと並ぶ。
それを見たレフェリー…店員さんが「も、もしかして貴方方…!」と震えた。
「まさか、貴方たち、難易度EXPERTの、チームランキング1位の『pomelo&ATVBS』ですか…!?」
「「―――はあ!?」」
な、なんだって…!?!?寧々と冬弥が…!?
ざわざわとギャラリーが騒ぎ出す。
「あの早撃ち何処かで見たことあった気がしたけど!!」「うそでしょ!?まさか伝説の…!!」「というかあの子たち、前に別のゲーセンでやってたゲーム大会の優勝者と準優勝者じゃね!?」「勝負を挑む相手を間違えてんじゃん」
寧々と冬弥は伝説になっているのか!?
確かに目の前でみたプレイさばきは目を奪われる。
まるで最高のショーのように!
「ななななな…なんで言わねぇんだよ!!」
「いう必要ないじゃん」
「ああ、そうだな」
振るえる男たち。寧々と冬弥はしれっと答えた。
寧々と冬弥、めちゃくちゃかっこよくないか???
決め顔でこちらを向く二人がかっこよすぎた。
「司は返してもらうからね」
「勝負あったな」
勝負はこれで決着がついた。
男2人は自分が負けたのが悔しすぎたのか、何回も偶然だの、卑怯な手を使ってるだの、まぐれだのと再戦を懇願してきた。
ハンデありでやっても、圧倒的な実力の寧々と冬弥。
最初こそ、ギャラリーは盛り上がっていたが、男たちが負けるたびに再戦を懇願しているので次第に呆れてものが言えなくなる。
それでもこれだけのギャラリーが集まっているのは、寧々と冬弥のプレイを見たいがためだろう。
寧々と冬弥がこちらへ向かう。
これで終わりだな、と、思いきや―――!
「こうなりゃ、力づくだろっ!!」
「はあああああ!?!?」
ギャラリーを掻き分け、男たちがオレの元へ走っていく。
オレは慌てて逃げるも両手を縛られている状態で上手く走れない。
客もたくさんいる中でバランスを崩す。
ギャラリーたちも卑怯だ!!とブーイングしているが、男たちはお構いなしだ。
「はあ!?何それ!?」
「卑怯にもほどがある!!」
「寧々ーーー!!とーやーーー!!」
2人の元へ行こうにも、男たちが怒りの形相で来るので戻るに戻れない。
寧々と冬弥が捕まえようとするもギャラリーに阻まれどうすることもできない。
たくさんのギャラリーたちもどうすればいいのかと思うばかりだ。
すでに怒りは寧々と冬弥に向いていた。こんな大勢がいる場所で、コテンパンに負けたのだ。プライドも傷けられたとかで、もはや怒りに身を任せていた。
じゃまだ!!どけぇっ!!と観客にも乱暴にしていたため、流石に店員も警察を呼び、店長も出てくる。
「いい加減にしないか!!君たちは負けたんだろう!?」
一部始終を見ていたであろう店長さんが叫ぶも、ギロリと男たちは睨み返し
「うるせぇ!!!お前らに負けた腹いせをこいつで晴らし、うわあっ!!!」
「なんだ!?ぎゃあああっ!!!」
あともう少し――での所で、男たちはネットに捕らわれていた。
脱出しようにもネットは頑丈かつ粘着性があるらしくなかなか抜け出せない。
デジャブを感じるのは気のせいか。こんなことできるやつは1人しか…!
そしてパラリと手の拘束が解けていき、とん、と、背後から抱きしめられた。
その正体は。
「大丈夫ですか、センパイ」
「―――彰人!?」
心配しそうにこちらを見る彰人である。
そこに、コントローラーを持った人もこっちへ向かってくる。
「司くんを狙う不届き者は捕らえたから安心してね」
「やはり類だったか…。お前たち、どうしてここに」
類もオレに何もないことを知るとホッと一安心した。
オレは近くのソファへと座らされて、自動販売機で彰人がお茶を買ってくれた。お金を、と取り出そうとしても「それぐらい良いですよ、奢ります」と言われてはな、と。
今度お礼をすると言って、お茶を有難く受け取った。
オレを間に挟み、彰人と類が左右に座った。
「実はね、青柳くんから、いいや、正確には青柳くんの端末で寧々が連絡をしてくれてね。司くんを守ってほしいって」
「まさかこんなにギャラリーが集まってるなんて思わなかったんで、アンタを探すのに苦労はしましたけどね。」
「な、なるほど…!?―――ハッ!!」
そういえば、冬弥の後ろに寧々が隠れていた。てっきり怯えていたものかと思ったが…!もしかして――。
「彰人!神代先輩!!」
「よかった、間に合った…!」
寧々と冬弥がこちらをみて安心する。
男たちがネットの中でふるふる震えていた。そして何かを思い出したかのように呟く。
「―――この女、もしかして――!!」
「まさか、あの背中に隠れていたのは…!!」
「わたしがアンタたちごときに怯えるわけないでしょ。
実際には青柳くんの背中に隠れたわたしが、青柳くんの端末で類と東雲くんに連絡してたの。いざとなったらアンタたちに手を出される前に司を保護して欲しいって」
「俺の携帯なら彰人も神代先輩の連絡先も知っているからな」
寧々は逆上してオレを力づくで狙うことを読んでいた。冬弥もその読みをしていたようだったが、目の前でスマホを弄ると、相手側に何か感づかれるのかもしれない。
だからこそ、小柄な寧々が怯えるふりをして冬弥の後ろへ隠れ、彰人と類の連絡先が入っている冬弥の端末で連絡をしていたわけだ。
「…草薙、(彰人と神代先輩の連絡)大丈夫か?」
「―――うん、(二人とも返事が来た。すぐ来るよ)大丈夫。やるよ」
「ああ」
という感じだったらしい。
役者である寧々だからこそ、怯える演技はお手の物だし、小柄な女性が怯えて相手に隠れるというのは不自然なことじゃない。それを利用したのだ。
オレですら寧々の演技を見抜けなかったとは…!演技力に磨きがかかり、流石はオレたちの歌姫であるっ!!
「びっくりしたのはこっちだけどな。冬弥からメッセが来たと思ったら、草薙からだったなんてな。冬弥は"司"って呼び捨てで呼ばねぇし、となると冬弥と繋がりが合ってそうやってセンパイを呼ぶ人物だと草薙しかいねぇし」
「僕も驚いたけど、司くんに何かあったってことぐらいは分かったから、いやあ、色々持ってきてよかったよ」
「なんかもう、用意が万全すぎて逆に怖ぇなあの人」
「あはは…まあ、な…」
「センパイ、腕の方はだいじょうぶっすか?」
「む?ああ、なんてことはないぞ?少し腕は凝ったが大したことはない」
そっか、と微笑む彰人。
警察の人が到着し、なんやかんやと事情聴取を受けて、やっと落ち着いた。
寧々と冬弥が戻って来た。
「にしても、今日、ネネロボ持ってきてないことにすごく後悔したんだけど。
あんなやつら、ネネロボで一撃だったのに」
「流石にゲーセンにネネロボを連れてくるんじゃない…」
「それならチビネネロボでも作ろうか。ビームやパンチの威力は倍増して」
「お願いね類」
「即答するんじゃない寧々!!」
「俺も思わず手が出そうになった。先輩をナンパしただけでも許せないのにいつの間にか手を縛り上げていたなんて…!!」
「「は?」」
「お前たち、めがこわいぞ…」
「一発ぶん殴っておけばよかった」
「ネットしか持ってこなかったのが悔やまれるよ…それなら」
「彰人、目がマジだぞ?類も物騒なことはやめろ?な?」
「思い出したら腹が経ってきた。わたしの天使、司に手を出すなんて」
「司先輩に手を出した不届き者を生かしてはおけません」
だーもう!!落ち着いてくれお前たちーーーー!!!
そのことがえむにもバレたらしく(寧々と類が話した)えむは、オレを守る包囲網を張るとか言ってきたので丁重にお断りをしたのである。
「にしても、どんな勝負だったんだよ」
「前に草薙とチームを組んでやったシューティングゲームだ。相手が自ら選んでくれて助かった」
「ということは相手側は何も知らずに勝負を挑み、コテンパンにされたのかい」
「チームランキング5位ってドヤ顔してきたとき、笑いを答えるのが大変だったんだからね」
「俺も思わず首を傾げそうになった」
「え、じゃあ、あの時、舌打ちをして悔しそうにしていたのは…」
「スコア更新できなくて残念だったなって」
「もう少し続けばスコアを更新しそうだったな」
「な、なるほどな…」