SA▽▽のギャグ話【お題】SA▽▽のギャグ
「あのね、A▽、『私と仕事、どっちが大事なのよ!!』」
「…………え?」
唐突に告げられた、まるでよくあるお昼のドラマのようなセリフがS▽から飛び出したことに驚き、手の中にあった書類をバサバサと床に撒き散らした。
「あのね、答えて。」
「え………」
急に答えてと言われても…と言おうとしたが、口を閉じた。
余計な事を言えばいうほど、彼は掘り返すようにあれやこれやと言ってくるだろう。
例えば、ここで仕事と言って床に散らばる書類たちを拾えば、たちまち口を聞いてくれなくなるだろうし、
ここで彼を選べば、今まで以上にこうしてこちらのギアステに来て、「かまって」としてくるだろう。
そうすれば、ただでさえ自らの兄が仕事をしない分溜まっている仕事も終わらず、地下鉄の平和は保たれない。
まさに、S▽は傾国の美女のように……
……これは、まぁ、言い過ぎか。
恋は盲目だとか言うが、僕はきちんと仕事とプライベートは分けられてるから。
たまにS▽がこうして二つの境界をあやふやにしてくるだけであって、
なんて思っていると、S▽は痺れを切らしたのか、 A▽の座っていた椅子をぐいっとこちらに傾けて上から覗き込んだ。
「あのね、じゃあ質問順番にしてあげる。ボクとG▽、どっち好き?」
「それは恋人の君の方が好きだよ。G▽くんはどちらかと言うと好きというより尊敬だね。」
まぁ、これは模範解答だろう。なんて心の中でつぶやいた。
「じゃあ、ボクとG▲」
「さっきと同じだよ。G▲さんもG▽くんも尊敬してる。」
誰を出されたって君をちゃんと選ぶに決まってるだろ、なんてたかを括っていた。
「じゃあ、ボクと A▲だっt「どっちか選ぶとか宗教上の理由で無理だからその質問には答えられないな」
「……は?」
急に訳のわからない事を言い始めた A▽に、キョトンとした反応をしてしまった。
「どっちかって言うんだったら、身体真っ二つになって死ぬ。」
「あのね、そうじゃなくて」
「どっちかを選ぶくらいなら、僕は自害ぐらいしてやる……」
ギリィ……と効果音がその辺に出そうなほど悩んでいるようだ。
このまましつこく聞くと本当にアイアントに真っ二つにしてもらいかねない。
「………じゃあ、いつもよりひょんなことで仕事が増えた日に、ボクがデートに誘t」
「質問、そのひょんは兄さん関係?」
「うん。むしろそれ以外キミが仕事増える事ないでしょ。」
「兄さん系ひょんなら、死ぬ気で仕事を終わらせて、キミの誘いにも乗るし、兄さん関係ない系ひょんなら、辞表叩きつけてでもキミの所に行くよ。」
例えというか、大袈裟なんだよなぁ……めんどくさ、なんて思い始めた。
というか、兄さん系ひょんって何。
「…………」
「………え、S▽、どうしたの?」
「………別に。」
急に黙ってチラッと違う方を見たS▽に気づいたが、なんでもなさそうだ。
「じゃあ、ボクとA▲に同時に何処か行こうって誘われたら?」
「3人で行けば良いんじゃないか?」
「あのね、どっちかだけ。」
「だから選べないって………」
「…………一個確認して良い?」
「うん。」
流石にS▽も気になってきたようだ。
「ボクと A▽は?」
「恋人同士。」
当たり前だというような顔。
「キミとA▲は?」
「双子の兄弟。」
またもや当たり前だという顔。
「で、ボクとA▲」
「だから選べないって」
そしてやっぱり当たり前だと。
「ちなみにボクの▲は?」
「え………?」
すると、S▽は悪そうな顔で言う。
「ボクと A▲は大事。でも、ボクの大事なS▽の事ほっといて、3人でどこかにいきたいって言うんだ。」
「あ………ち、違うよ、それは言葉のあやで」
しらー……とした顔で見つめてくるS▽の視線が痛い。
「もしかして、ボクの▲、嫌い?」
「そんなことはないよ!!だって」
「G▲とG▽のことはそんけーしてるんだっけ?でもボクの▲のこと、一言も言ってくれないよね?」
ジリジリとS▽が詰め寄ってくる。
その目は少し怒っているようにも見えるし、呆れているようにも見える。
思わず立ち上がって後退りをする。
「ボクの大事だと思ってる▲、どうでもいい?」
「違う!!」
「ボクの▲かわいそー。ボク悲しいなー」
シクシク、なんてわざとらしく言っているが、先ほどの目は真剣さがあって、 A▽は慌て始める。
「どうでも良いなんか思ってないから!!好きだから!!」
「えっ、」
「…………え?」
部屋の入り口を見ると、その扉の隙間から、S▲の顔が見えた。
「あ………」
「………あの、その………い、今まで通り、クダリの方で、お願いします。」
キィ…パタン。
コツコツコツコツコツ
ゆっくり扉が閉まり、足音がとてつもない速さで小さくなっていった。
「…………っ!違う!!誤解なんだ!!」
「あのね、ここ地下。」
「そうじゃなくて!!」
その時、 A▽の運の悪さが露呈した。
「おやおや、S▲様、しんそくでも使ったかのような速さでしたねぇ。」
扉の向こうから、今度は A▲が出てきたのだ。
「に、兄さん!?いつから!?」
「そうですねぇ……ひょん辺りですね。S▽様は気づいたようですが。」
A▲はS▽に微笑みかけるが、S▽はツーンと顔を背けた。
「ほら、S▽様が拗ねてますよ?恋人なんですから、慰めてあげませんと。」
「S▽くん、その、さっきのは違って」
「ところで、S▲様が好きってことは、私はどうなんですか?」
「……………え」
A▲はA▽に不意打ちをした。
「先程まで、私かS▽様かと言ってましたが…結局、本命はS▲様なのですか?」
この顔は、一番めんどくさい顔だと A▽は察した。
からかっている。
「だから一番は」
あっ………
「あのね、一番は?」
「誰なんですか?」
まんまとハメられた。
2人はとても悪い笑顔をしている。
「……今の、なしで…」
「やっぱりS▲様なんです?私という兄がおりながら!」
「あのね、顔が一緒なら見境ないの?ボクという恋人がいながら?」
恐らく、あの時、 A▲が覗いていることに気がついた時から企んでいたんだろう。
アイコンタクトで。
「「私(ボク)とS▲(様)、どっちが大事なの(なんですか)??」
本当に、めんどくさいことになった。
【終わり】