にょたゆりみつたい 大寿は器量の良い女である。やろうと思えば大抵のことできてしまう彼女は、母なき後自らも子供でありながら柴家の家長としてきょうだい二人を育てる傍らで黒龍という大きな組織のトップとしても君臨した。家事は好きではないが嫌いでもなく、一通りこなすことはできる。けれど、三ツ谷に振舞うとなれば話は別だ。初デートで「気合いれて作っちゃった」といって差し出してきた弁当はなんだかキラキラとしていて、種類も量も多いがくどくなくペロリと平らげしまい、家を訪ねた際に土産に持たされたクッキーは甘いものがそれほど得意ではないにも関わらず食後の紅茶と共に消えた。そう、なんというか、料理がうまいのだ。それだけではない。掃除、洗濯、裁縫。家庭科で習うようなことは大抵器用にこなす。きっと大寿とは違って家事を好き好んでやっているのだろう。
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