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    晩(Bankon.)

    アブない絵置き場。
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    晩(Bankon.)

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    まおきしフルシン

    いきなり始まっていきなり終わる。
    なんでも許せる人向け。

    この世界には人間界と魔界がある。
    人間界では文字通り人間たちが暮らしていて、魔界は魔物が蔓延る世界だ。
    人間たちは異形の生物である魔物を恐れて決して魔界に足を踏み入れることはない。
    また、魔物たちも人間界に足を踏み入れると結界により魔力を失う可能性があるため近づかなかった。
    だがしかし、近年魔物がなんらかの手段を使って人間界に出入りして悪さを働いているとの報告が多数あったため、命知らずの魔物たちを魔界に還すために僕は結界付近の点検と偵察をしていた。
    「魔王様、こちらです」
    僕の配下に案内をしてもらうと結界が綻びがあったのか隙間ができている。
    この綻びを直すのも僕の仕事だ。
    だが、なぜこんな仕事をしなければならないのか。
    魔王として生まれてからずっとこの有様だ。
    魔物たちの管理や魔界の管理、魔界と人間界の秩序の保持、結界の管理など。
    魔王という立場ではあるから仕方がないと言えば仕方ながないが同じことを繰り返していると飽きてくる。
    そして今回も魔物たちの強制送還と人間界を牛耳る人間たちと謁見するのだ。
    「人間界にいる大老たちにも挨拶して帰るから少し遅くなる。」
    「かしこまりました。」
    「行ってくる」
    「お気をつけて」
    僕が結界に近づくと魔界と人間界の扉が現れた。
    ため息をつきながら魔王のみに許された結界の扉をくぐって人間界に入った。


    結界の外である人間界に入ると身体が重くなった。
    どうやらここは城下町はずれの森の中らしい。
    転移魔法がうまくいかなかったらしい。
    仕方がないことだ。
    なぜなら人間界には魔力がない。
    魔力がないと魔界のものは生命を維持することが難しいため、魔力の消費を抑えるために翼もツノも消えて人型になる。
    つまり必然的に人間と同じ身体になるのだ。
    こればかりは仕方のないことだが人間と同じ姿になるというのはあまり良い気持ちはしない。
    さっさと用事を済ませて魔界に帰ろう。
    ため息をついていると近くて人間の気配がした。
    結界の近くに人間がいるなんてこと滅多にないのに。
    城下町方面の木々に隠れていてこちらの様子を伺っているようだ。
    「そこにいるんだろう。出ておいで。」
    声をかけると草を踏み締める音とともに青年が出てきた。
    黒い髪で肌が白く、碧眼をもった人間。
    「あんた、人間じゃないだろ。」
    震えた手で剣を握る彼は僕を睨みつける。
    ふっと僕が笑って手を青年の方に差し出すと青年は剣を構える。
    魔力がない世界といえど、魔王である僕は体内の魔力を使って人間の記憶を操作して消すこともできる。
    すでにその魔術は発動しているけれど、どうやらこの青年にはそれが効かないらしい。
    僕は両手を頭の上にあげた。
    「降参。君と戦う意思はない。」
    「…は?」
    青年は驚いた顔をしていた。
    魔物から降参するなど人間からしたら理解のできないことなのだろう。
    「あんた、魔界から来たってことは…」
    「そう。君の言うとおり人間じゃない。」
    「じゃあなんで降参したんだよ。魔物だったら人間のことオモチャみたいに扱うくせに。」
    どうやら報告は正しかったらしい。
    全く。嫌になる。
    「はぁ…やはりそうなのか。とりあえずその剣はおろしてくれないかな。僕は君に危害を加えない魔物だから。」
    「そんなの信用できるわけねぇだろ。」
    「じゃあどうしたら信じてくれる?」
    「信じるも何も…」
    所詮は人間だ。
    魔物とは敵対関係であって友好関係にはなれない。
    対話を諦めようとした時、青年が「あっ!」と思いついたような声をあげた。
    「あんたの弱点教えて」
    「僕の弱点?」
    「そう、あんたら魔物にとっては人間なんて一捻りだろうけど俺たち人間はそうじゃないからさ。まあ、あんたが俺のことを信用できるならの話だけど」
    人間に弱点を教えるなんて魔物にとっては屈辱的なことだ。
    そんなこと並大抵の魔物にはできないだろう。
    でも、僕は魔王だ。
    最上位の魔物であり、魔界を統べるもの。
    一つの弱点を知られたからと言って人間に負けるような魔物ではない。
    「いいよ。教えてあげるよ。」
    「…い、いいのかよ。俺みたいな人間に教えて」
    「いいも何も君にしか教えないし、教えたところで僕が君にやられるとは思えないし。」
    「じゃあ教えてもらっても意味ねぇじゃん」
    キッと睨みつけてくる。
    その通りではあるけれど、僕の弱点なんて下級の魔物でさえ知らないことなんだけどね。
    「そんなことはないさ。いつか君がその弱点を突いてくる日が来るかもしれないし。」
    ふっと微笑むと青年はため息をついた後に剣を収めた。
    「なら、交渉成立だな。教えろよ、あんたの弱点。」
    「教えるのは構わないけどもう少し近くに寄ってくれないかな。弱点を教えるにしても他の誰かに聞かれてたら困るし。」
    青年はむっとした顔をした後に「わかった」と返事をした。
    恐る恐る近づいてきた青年の細腰を抱き寄せると予想していなかったのか青年は身体がびくりと震わせた。
    「はっ!?ちょ、なにっ」
    「僕の弱点、知りたいんだろう?」
    耳元で囁くとぴくりと肩を震わせて瞼を瞑っていた。
    そうか、この子は耳が弱いんだな。
    弱点を教えようと近づいたけど僕の方が彼の弱点を知ってしまうなんて。
    とても運が良い。
    「僕の弱点はね、快楽そのものだよ。」
    「っ、は…?快楽…?」
    「そう、僕は快楽に弱いんだ。サキュバスなどの淫魔が作る淫紋やフェロモン、人間界では催淫剤や媚薬が該当するのかな。あの手のものを摂取したら力が出なくなる。」
    ニコッと作り笑顔をして、身体を離す。
    「弱点を知ったのだから僕は君の信用に足る男になったってことでいいんだよね?」
    「…っ、ああ。そう、言ったからな」
    「信用してもらえてよかったよ。ということは、見逃してくれるっとことでいいかな?」
    「いや、見逃すことはできない。あんたが他の人間に手を出さない保証はないし。」
    「信用ないなぁ。」
    「俺に攻撃しないってことだけしかあんたのこと信用してないから。」
    気を許したかと思ったんだけど、この青年は他の人間よりも信念が強いらしい。
    「じゃあ、僕の用事についてきてよ。」
    「は!?なんで…」
    「ついてくれば僕が人間に害を加えないか見張れるし、君はいつでも僕の弱点を狙えるわけだし。」
    それに、僕は彼のことを気に入ってしまったから。
    魔王である僕にこんなにも強気な態度をとってきた人間は生まれて初めてだった。
    「わかった。えっと…あんたのこと、なんで呼べばいい?魔物魔物って人前じゃ呼べねぇし。」
    「そうだな。人間界では安室透という名前を使っているんだ。この名前だったら好きに呼んでくれていいよ。」
    「…じゃあ、安室さんで」
    「ふふ、こうやって人間に呼ばれるのは初めてだよ。僕は君のことなんて呼べばいい?」
    彼も偽名を使うのだろう。
    そう思っていた。
    「…新一。工藤新一。好きに呼んでいいから」
    おそらくこれは偽名ではない。
    魔界でいうところの真名。
    魔物に真名を明かす人間なんて初めてだ。
    「へぇ…じゃあ…新一くん、でどうかな?」
    「い、いいと思う。ってか、なんて呼ばれても仲良くする気はねぇから」
    「残念。ま、いいけど。じゃあいこっか。」
    僕が歩き出すと新一くんが後ろからついてくる。
    近くには寄らず、一定の距離を保ちながらついてくる彼に微笑みながら城下町の方に向かって僕たちは歩いて行った。

    続かない。
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