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    melly96262246

    @melly96262246

    主にTwitterに載せていた小説を載せていきます。
    たまにitchyなものもこちらに格納する予定です。

    ※無断転載はおやめください

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    melly96262246

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    ラのモデルパロ🦊視点。
    📌も出る。

    ラのモデルパロ🦊視点 ミスタ・リアスという男は自分に自信がなかった。
    友達と呼べる相手はいなかったし、誕生日だって祝われた事なんか数えるほどだ。誰がこんな自分を好きになってくれるのか、と常々思っている。
    そんな彼がモデルになったのは偶然と幸運が重なったからで、そこそこ人気が出たのもたまたまだと信じていた。


    (うわ、地味……。なんであんな奴がここにいるワケ?)
    ミスタはオーディション会場の隅で一人のモデルを見ていた。白い肌に、黒い髪、あまり目立つ容姿ではないけれど、柔和な雰囲気と健康的なボディバランスがウリなのだろう。そんなモデル五万といるだろうに、ミスタはなんとなくそのモデルが気になって自然と目で追っていた。
    「こんにちは、ここいい?」
    そのモデルは、ミスタの視線に気が付いたのか、隣に椅子を持ってきてミスタの返事を聞かずに座った。
    あまりにもマイペースなその行動にミスタは面食らい、何も言えずにいた。
    「知り合い一人も居なくて居心地悪いんだよね。君も一人っぽいし、仲良くしてくれると嬉しいんだけどダメかな?」
    「……まあ、いいんじゃね?」
    オーディションなんて他者を蹴落とす為の場所だというのに、目の前でほけほけと気の抜けた笑みを浮かべる男は何を考えているのだろうか。
    仲良くしようだなんて、バカにしているとしか思えなかった。
    「僕はシュウって言うんだけど君は?」
    「ミスタ。ミスタ・リアス」
    「もしかして去年のヴィヴィアンのショーに出てなかった?」
    「え?」
    ミスタはシュウの言葉に驚いた。確かに出演はしていたけれど、特に目立った評価はされず服を着て歩くだけの面白みのない一人のモデルだったと自分でも思っていたのに、そんな自分を覚えている人間がいるなんて思いもしなかった。
    「柄シャツとデニムのワイドパンツ着てたの君だと思ったんだけど、違ってたかな」
    「いや、合ってる。それ、出てたよ」
    「やっぱり? あれすごく印象的でさ、服がシンプルだからミスタの歩き方がすごく映えててマネしたいなって思ったんだよね」
    「What!? 何言ってんの? 俺のウォーキングなんかクセ強すぎだし、マネなんてしても何にもなんねーじゃん」
    「そう? 僕はすごくいいと思うんだけどな」
    シュウは真剣な表情でそんなことを言うけれど、ミスタはそれを信じられず疑いの眼差しでそれを見ている。
    そうだ、いつだってミスタのウォーキングはクセが強く、ポップでカジュアルな服を作るブランドでしか受け入れられない。周りからは、そろそろ次のステップに進んでもいいんじゃないかと言われているけれど、こんな不出来な自分が次のステップにだなんて到底信じられない。
    一方的にシュウがミスタの好きなところを語っていたけれど、全てミスタの中を通り抜け残ることはなかった。
    「あ、あー、うん。アリガト」
    「あ、うん。ごめんね、僕ばっかり話しちゃって。そろそろ順番かな、準備しないと……」
    ミスタは困ったように愛想笑いをして礼を言った。言外にこの話はここで終わりだと示した。シュウは賢いらしくその意味をしっかりと汲み取り、話を切り上げてくれた。
    シュウはラフなジャージ姿にスニーカーという姿に着替えたのを見て、ミスタも準備をしなければと重い腰を上げた。このオーディションは、何度か参加したことのあるブランドでデザイナーとも懇意にしているから、ミスタは他のオーディションよりも随分と落ち着きをもって挑むことができる。
    「あ、僕とミスタは同じグループなんだ」
    「あー、そーね……」
    ホールに着くと見慣れたモデルが数人と、先ほど別れたはずのシュウが居た。笑顔で話しかけるシュウを適当に躱して、ミスタは自分の番を静かに待った。
    「次、ミスタ・リアス!」
    審査員に名前を呼ばれリノリウムの床に立つ。
    深呼吸を一つして真っすぐに前を見つめる。
    (ここはランウェイ……)
    沢山の観客と、華やかなランウェイをイメージして歩き出す。
    上半身は動きをつけて、下半身はなるべく安定させて。今のミスタにできる最大限のパフォーマンスを披露した。歩き終わったミスタを、瞳を輝かせたシュウがすごかったよ!という言葉でねぎらった。
    うん、とだけ返してミスタは自分の席に戻った。
    次々と顔見知りのモデルたちの名が呼ばれていき、ついにシュウの番が来た。
    どれ程の実力を持っているのだろうか。あくびを嚙み殺しながらミスタはホールの中央を見る。
    「音楽、お願いします」
    聞き飽きたBGMが流れ出した瞬間、空気が変わった。
    「は……?」
    味気ないリノリウムの床が煉瓦の石畳に、壁はヨーロッパの街並みに姿を変える。
    シュウの足が動く。雨上がりの石畳を軽快に歩いていく、上半身に動きを加え、安定した下半身の足さばきのなんて軽やかな事だろうか。
    ミスタはその姿に目を奪われ、呆然とそれを見ていた。
    自分のウォーキングに近いけれど、完全にシュウのものにしている。ホール全てを飲み込むほどの表現力。地味だと思っていた男はそこにはいない。
    そこにいるのは雨上がりのヨーロッパの街を歩く、うつくしいモデルの男だった。
    気が付けばミスタは涙を流していた。
    あんな素晴らしい実力を持ったモデルに、僅かでも影響を与えることができた事実に胸が震える。
    悔しいとか、自分の技術を奪われたなんて思いは一つも浮かばない。ただ、今までの自分のスタイルが認めらて嬉しいという思いしか浮かんでこなかった。
    きっとシュウがこのショーの要になるのだろうと理解する。それほどまでにミスタはシュウに心を奪われていた。


    「シュウ! お前、すごいよ!! 俺、感動した!!」
    オーディションが終わり、控室に戻ったミスタはシュウを捕まえそんなことを言った。
    「んへへ、ありがとう。ミスタのウォーキングを参考にしてみたんだけど、やっぱり本物には敵わないや。ミスタのウォーキングすごく良かったよ」
    「俺は、お前の話しをしてんだよ!」
    きらきらと瞳を輝かせ、トリはきっとシュウだと絶賛するミスタに呆気にとられたシュウは、少し恥ずかしそうに笑ってありがとうと返した。
    その場はそこで終わったけれど、後日送られてきたオーディションの合格通知と全ルックの詳細。
    モデルの一覧を見てミスタは、自身の予感が的中していたことを知る。
    ショーの中盤、陰鬱な雰囲気の前半から一気に華やかな空気に変わるその瞬間の衣装を
    着るのはシュウだった。
    ミスタは終盤の、トリの一つ前の色鮮やかな衣装を割り当てられていた。思っている以上にいい衣装を割り当てられたことに驚いて書類を取り落してしまったのは仕方がなかった。
    自分の中で自信が芽生えていくような気がして、ミスタは拾った書類を隅から隅まで読み込んで少しでもデザイナーの意図を汲み取り、それを表現できるようにと準備を始めた。
    それはミスタがモデルになってから初めて見せた努力の形だった。


     後から知ったことだったけれど、シュウはモデル界ではそこそこ知られた存在らしい。噂に疎いミスタが顔見知りの女性モデルから聞いた話だったけれど、あの天才と言われているヴォックスが目を掛け、彼の力でのし上ってきたのだという。
    しかし、シュウの実力を目の当たりにしたミスタはその噂がデタラメだということを知っている。
    一度でも彼のウォーキングを見た者は、きっとそんなことは言えないだろう。
    レッスン室で汗を拭いながらミスタはそんな事を考えていた。
    あれから普段はサボりがちだったウォーキングレッスンへ積極的に顔を出し、マネージャーのミカには悪いものでも食べたのかと心配された。
    「アンタ何か悪いものでも食べたの?」
    「ううん、ただ今のままじゃダメだって思っただけ」
    「ふ~ん、いいことじゃん」
    がんばれ、と黙って背中を押してくれるミカのやさしさが何よりもありがたかった。いい仲間に恵まれたと、初めてミスタは周りに感謝をして前を見て歩き始めた。


     シュウとのショーは好評で、モデル「闇ノシュウ」の名はたちまちに広がっていった。
    ミスタとてオーディションの時から考えれば、随分と成長していたけれどそれでもシュウには追い付けない事実を噛みしめていた。
    それでもミスタの心に曇りはない。純粋に憧れが勝る瞳で、デザイナーとランウェイを歩くシュウを見ていた。


     ファッションウィークが終わった後、ミスタは毎日ウォーキングレッスンと、表現力をあげるためのバレエレッスンに励み、帰宅してからはたくさんのショーの動画や映画を観て基礎と表現力を鍛え上げた。
    ミスタらしさを残して、磨かれた技術が確実にミスタの評判を上げ、ついに事務所から有名ブランドのオーディションを受けてみてはどうだろうかと声を掛けられた。
    それに二つ返事で頷き、オーディションに向けて調整を始めたのだ。
    万全の状態で挑んだオーディションで持てる力の全てを出し切ったミスタは事務所に届いた書類を見て悲鳴を上げた。
    「WTF!? ミカお願い! 今すぐ俺の顔殴って!!」
    「オッケー、顔はマズいからケツ蹴ってあげるわ」
    「OUCH!!」
    ミカの容赦のない蹴りを食らってミスタは、事務所の床に倒れ伏した。
    「いきなりマゾに目覚めてどうしたの?」
    「……ミカ、見て、見てよこれ」
    倒れたまま書類を手渡したミスタは力尽きたように動かなくなった。それを横目にミカは書類に目を通す。
    そこには合格の文字と、簡易的なタイムテーブルが書かれている。ミスタの出番は終盤。複数のモデルでグループを組んで歩くらしい。
    「へー、最終グループなんてすごいじゃん! あ、しかもあのヴォックス・アクマまでいる。ミスタ、すごい! すごいよほんと!」
    「…そこじゃない」
    「え?」
    蚊の鳴くようなミスタの声にミカは困惑するばかりだ。
    「よく見てよ!! 闇ノシュウと一緒のグループになってんじゃん!! どうしよう、俺ちゃんとできるかな……」
    がばりと上半身を起こして叫ぶミスタの表情は蒼白だった。
    以前同じショーに出て以来、ずっと目標にしてきたモデルと同じグループで歩ける嬉しさと、緊張で上手くできないかもしれないという不安がミスタの中でせめぎあっているようだ。
    「大丈夫よ、アンタすごくよくなったじゃん。ミスタならできるよ」
    「そう簡単に言うなよー……」
    その日ミスタは結局、情緒が不安定になりレッスンを休んで家に帰されることとなった。


     月日はあっという間に過ぎ、他のモデルたちとの顔合わせ(シュウとは結局上手く話せなかった)や、レッスンに明け暮れていると本番まで残り一週間となっていた。
    オーガンジーのフリルシャツは構造がシンプルな分、ミスタの得意なウォーキングが良く映えた。けれど、プレッシャーに押しつぶされそうなミスタはうまく眠れない日々を過ごしている。
    目の下は隈ができ、メンタルも不安定だったけれど、それでもこのショーにかける思いだけで何とか一日を過ごしていた。
    本番当日も眠れずに、酷いコンディションだったけれど控室で少しだけ寝かせてもらえたおかげで幾分か頭がすっきりしている。
    「準備お願いします」
    スタッフの合図で舞台袖へ移動する。
    きらきらと輝くステージへ進んでいく。ミスタの表現するのは「夕日」だ。一日の終わりを知らせる黄昏。
    昼の時間と夜を結ぶ夕焼けは、ミスタの瞳の色からインスパイアされたのだとデザイナーが語っていた。
    鮮やかなオレンジ色のフリルを揺らしながら、足元は力強く明日へ踏み出す一歩をイメージして広いランウェイを歩く。
    この一歩は憧れのモデルに少しでも近づいているのだろうか、一瞬不安がよぎるけれど、観客たちの表情を見てそんな不安は一瞬で消え去った。
    そこには自分に自信のない弱気なミスタ・リアスは居なかった。
    自信を持ち、自ら輝きを発するミスタは胸を張ってランウェイを歩き切ったのだった。
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