『初めまして』「丹恒」
はあ、と熱い吐息を耳元に吹き付けながら、彼が俺の名を呼ぶ。
普段はゆったりと低く落ち着きのある声が、何時もより艶を含んでいる気がする。それを聞くと、ゾゾゾと背筋に怖気が走ると同時に、下腹部の奥深くに埋め込まれたそれがぐずぐずと熱を持ち始めたのを感じた。
ぎしり、と体重を乗せた寝具が軋む音を立てた。大人2人が寝ても十分に耐えられると宿の女将がにこやかに説明してくれたが、心なしかコイツはもう無理だと悲鳴を上げている気がする。
いや、無理だと思っているのはこの俺だ。
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羅浮の一件から幾ばくかの時が経過した。その間、俺達はナナシビトとして様々な星を巡り、様々な経験をした。
そんな時だ。
そこは亡き『繁殖のタイズルス』を祭る、迫害されし生命が潜む地だった。『不朽の龍』を感じ取ったそれは星神の血を求めているのか、俺に異常な執着を見せた。持明族は繁殖など行えないというのに、種を繁栄させるためにそれは俺の体に“種子”を植え付けた。
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