鬼の子と人間の子のその後ハルトの右肩には大きな噛む痕が残っている。
白い皮膚にくっきりしたくぼみは醜くて痛々しいが、それを消すつもりは毛頭ない。
その傷跡は、大事な友が唯一ハルトに残してくれたものだから。
大学生になったハルトは、幼い時に暮らしていた村に戻った。
数年前、この閉鎖的な古い村は過疎化や高齢化によって廃村になった。
この村にまつわる鬼の伝説が真実だと知る人も、もういない。
——ハルト以外は。
スグリと別れをしたあの日から、一日もスグリを忘れたことはない。
この広い世界でなんの手かがりや繋がりもなく、誰かを見つけ出すのは難しい。
それでも、ハルトは諦めず、スグリを探し続ける。
長く続いた登り道を越えて、ようやくスグリの暮らしていた所に辿り着いた。
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