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    yuakanegumo

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    恋人ヴィク勇❄⛸
    あたり前の日常過ぎて、公衆の面前で「あーん」をしてしまうヴィク勇のお話😊
    いつもの平和なバカップル💜💙

    #ヴィク勇
    vicCourage
    #SS

    「いつも通り過ぎたので」 チムピオーンの午後は、いつも平和だ。けれど、ヴィクトル・ニキフォロフの教え子として勝生勇利が同じリンクを使用するようになってから、その平穏はわずかながら乱される瞬間があった。
    「あいつら、いつもくっついてるよな……」
    「もう見慣れたわ」
    練習合間の休憩中――スケートリンクの壁面に背を預けたユーリとミラは、とある光景を同時に見つめながら苦笑いを浮かべた。その視線の先に見えるものは――ヴィクトルと勇利、二人の姿であった。 
    「ヴィクトル、今のとこ、どうだった?」
    「悪くはないと思うけど、ちょっとしっくりこないんだよね」
    今期プログラムの全体構成を考えているようで、一曲流して滑った勇利が、エッジカバーをつけながらリンクサイドのコーチのところへやってくる。
     氷の上を降りた教え子をベンチへと促したヴィクトルは、自身はその隣に座りながら、ごく当たり前のように青年の肩を抱き寄せた。小さなクリップボードを不必要に近づいて覗き込む二人。
    「……ここの構成、入れ替えてみたらどう?」
    「あっ、いいかも! そっちで滑ってみたい!」
    コーチの提案にきらきらと輝くアーモンド色の瞳を至近距離で見つめながら、ヴィクトルは深く頷く。
    「よし。じゃ、もう一回やってみようか」
    「はい!」
    「あっ、ちょっと待って。ユウリ」
    「――ん、」
    リンクへと飛び出しかけた勇利の背中に、ヴィクトルは笑顔で声をかけた。嬉しそうに振り向いた青年は、何を指示されるよりも先に、ごく当たり前のようにその桃色の唇を開いたのだ。そして、
    「あっ、」
    ユーリとミラは、ほぼ同時に驚きの声を上げた――勇利の口内に流し込まれたのは、水分補給のためのボトル水だった。スポーツ用の容器で、たしかに飲み口が細くできてはいるが、勿論その仕様は誰かに飲ませてもらうためのものではない。
     いわゆる、恋人間の「あーん」を公衆の面前でやってのけたヴィクトルと勇利を目の当たりにしたユーリは、青筋を立てながら低い声で言った。
    「お前ら……いちゃつくなら、家でやれよ」
    その怒りの感情が、自分たちへと向けられていることを察した二人が、きつく拳を握るロシアンヤンキーへと視線を向ける。まるで何事も起きていないかのように、笑顔で首を傾けるヴィクトル。
    「え? 何が?」
    「『なにが?』じゃねえよ! ジジイは、なに人前でカツ丼の世話焼いてんだ!カツ丼お前も! 当たり前のように口開くんじゃねえ!」
    ユリオに指摘されてようやく――勇利は、自分がやらかしたことの重大さに気付いたようであった。青年の頬が一気に赤く染まる。 
     ヴィクトルと違って羞恥心の強い勇利が、恋人のとの触れ合いを拒まなかったのは、男の仕草があまりにも「いつも通り」過ぎたからであろう。
    「えっ? あっ、こっ、これは、」
    ふっと唇の端で笑うミラ。
    「……そのカツキのリアクション、ガチね」
    「……ジジイ、カツ丼が来てから、だいぶ浮かれやがるな」
    「ま、辛気くさいよりいいんじゃない?」
    自らボトルの水を飲み干し、力なく肩を竦める年下二人を見下ろしながら、声を出して明るく笑うヴィクトル。
    「ごめんね、ユリオ。これでも抑えてるんだけどなあ――じゃ、行こっか、ユウリ」
    そう言って青年の肩を抱き寄せたリビングレジェンドは、愛おしくて仕方ないであろう恋人を、氷の上へと攫っていってしまった。

    「うう……見られた」
    ちらりと背後を見やれば、苦笑いをするユーリとミラの姿が見える。アイスリンクを滑りながらも、熱くなった顔を両手で押さえる勇利。恥ずかしい。あまりにも恥ずかしい。羞恥心に悶える勇利を不思議そうにヴィクトルが見つめた。
    「『いつも通り』だから、いいんじゃない? おれにだけ無防備なユウリ、おれは可愛くて好きだなあ」
    「『いつも通り』だから嫌なんだよ! びくとるのばかっ!」
    ――オープンすぎるコーチ兼恋人の発言は、青年の気持ちをなだめるどころか、荒ぶらせるばかりだった。その後は、惚気のような暴言のような勇利の叫び声がチムピオーンのリンクに響いたという。
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