熱病 空調の切れた教室は、オレンジ色の西日を受けて、上った気温と湿度が気怠い放課後特有の空間と成っていた。
窓際に立つ、黒髪の人物が振り向いて、俺に。
◇
「距離が近い!!!」
学校帰りのなじみの喫茶店で、ミスタが爆発した。
制服姿の青少年には少々大人びた、飴色の革張りの椅子がかたたん。 と音を立てる。
ここは彼らの隠れ家だ。
看板の白いペンキは剥げかけており、 雨よけのキャノピーと外壁は蔦に覆われて、一見すると経営していると思えない。 ノッカーの付いた樫の扉を潜ると、月日と共にアンティークとなった内装が出迎えてくれる。 教師も巡回に来ない場所だ。
確かヴォックスが見つけて、居心地の良さに誰かしらいつも入り浸っているのだ。
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