cyar'ika アソーカが久しぶりにルークのアカデミーを訪ねると、すでに数人のひとが出入りするようになり、施設もだいぶ出来上がっていた。
ルークはアソーカの来訪を大いに喜び、弟子たちを紹介し、一通り施設やその周辺を案内し、それからようやく腰を落ち着けて近況を報告し合った。ルークはアソーカから世の中の流行や社会の動きについて詳しく知りたがった。銀河中を旅して回っているアソーカはあらゆることに精通し、さまざまな文化や歴史についてもよく知っていた。
ルークの淹れた渋いお茶を啜り、穏やかな木漏れ日のさす木陰のベンチに腰掛け、のんびりと過ごす時間はあまりに穏やかで、二人は時間を忘れて話しあった。
しばらくして話題が途切れ途切れになった頃、ふとルークが思い立ったように尋ねた。
「君はマンダロリアンの文化に詳しいよね」ルークは確認するように聞いた。「“cyar'ika”ってどういう意味かわかるかい?」
アソーカは目を瞬かせた。
「……誰からその言葉を聞いた?」
「例のマンダロリアンから。彼、時々ここへ子どもを連れて来るんだ。グローグーはジェダイにはならないにしても、力の訓練が必要だからね」
「なるほど」
アソーカはニヤリと笑った。もしこの場にかつての師であったアナキンがいれば、悪戯好きな彼女のその微笑みに顔を引き攣らせていただろう。
「ちなみにどんな場面で彼はその言葉を使ったの?あなたたちは何をしてたの?」
「えっと」ルークは目を泳がせた。「僕らは二人でちょっと……体を動かしていたんだ。訓練みたいなものだよ」
「訓練ねえ」
「彼は熱中し過ぎて一瞬我を忘れて、僕に向かって“cyar'ika”って言ったんだ。でも次の瞬間には冷静になってひどく謝ってきた」ルークは声を潜めた。「この言葉はMando'aでいうところの“ダンク・ファリック”とか“バンサのクソ”みたいな意味なのかな」
アソーカはもう我慢できなかった。クスクス笑いながら「ああ可愛いわたしの甥っ子」と言ってルークの頬をキュッとつねった。
「なんなの?」ルークはアソーカの手を避けて顔を顰めた。
「その言葉は罵倒なんかと一緒にしちゃ駄目だよ、マスタールーク。すっごく綺麗な言葉なんだから」
「意味は?」
アソーカはルークに耳を貸すよう手招きした。
説明を聞いてルークは最初目を瞬かせたが、次第に恥ずかしそうに眉を寄せ、それから顔を伏せてしまった。
「あなたたち、凄く可愛いことになってるみたいだね」
手で顔を覆い唸っているルークを横目に、アソーカは少し苛めすぎたかと思っていたが、ルークが「こんなことで謝るなんて……臆病なマンダロリアンめ……」などとぶつぶつ文句を言うのを聞いて、アソーカはまた闊達に笑い声を上げた。