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    sugasugatamama

    成人済shipper

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    sugasugatamama

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    マンダロリアン二次創作。season3までのネタバレあります。
    ディン・ジャリン×ルーク・スカイウォーカー前提で、ルークとアーマラーがちょっとお喋りするお話。
    大切な仲間を守りたいアーマラーと迷えるジェダイのルークと、諦めが悪いディンさんと可愛いグーちゃんが登場します。
    アーマラーのキャラが最後まで良く分からん…難しい。

    街を歩く 緑の肌を持つ小さな子どもが鍛冶場へひょこりと顔を出した。彼はまるで自分の家のように広い作業場を歩き回った。その場には私しかおらず、彼も一人だった。どうして幼子がこんな場所に一人でいるのかと尋ねると、彼は一人ではないと首を横に振った。どう見ても一人にしか見えないのに、それがなんだか可愛らしくて、ついくすりと笑いを零すと、彼は物珍しそうに私をまじまじと見上げた。それもそのはずだろう。私は彼の前でも、誰の前でも笑わない。笑うのは苦手だし、冗談を理解するのはもっと苦手だ。でもそれが下手でも苦労したことは特になかった。
    「グローグー、あなたの親を探しましょう。きっと彼はあなたを探している」
     言うと彼は両手を差し出し、抱き上げる様に乞うた。今度は私が驚く番だった。子どもを抱いたことなど一度もない。私はマンダロリアンたちが彼らを育てる様子をただ見てきたが、私自身が子どもに触れたことは一度もなかった。戸惑っていると、グローグーはどうした、と言うように小首を傾げた。
    「……一人で歩けるでしょ。あなたの歩調に合わせるから、気にせず進みなさい」
     幼子はムッと唇を差し出し、思い通りに行かず不満そうだ。しかし言われた通り彼は歩き出した。小さな足を懸命に動かしながら前へ進む。マンダロア奪還の時、私は彼と共に時間を過ごすことがあったが、あの時はこんな我儘を聞かなかった。平穏な日々が彼を少し我儘な子どもに変えてしまったようだ。
     マンダロアを奪還して数か月経ったが、まだ都市のあちこちに戦いの爪痕が残っていた。それでも少しずつ都市が本来の様相を取り戻しつつある。手始めに鍛冶場、それから人々の生活エリア、徐々に病院や市庁舎や学校や図書館を建て直し、そして以前よりもより良い街に戻そう。荒廃した都市のありさまを目の前に、誰もが落ち込み途方に暮れていた時、新しい指導者であるボ=カターン・クライズはハッキリとマンダロアの復興を宣言し、マンダロリアンたちを鼓舞した。次こそ失敗はしない。そう固く誓った彼女の決意を我々も強固にし、支えたいと願った。
     鍛冶場の背の高い入り口を抜け、都市の中央道に出た。人々が休みなく働いている。彼らは私を見て作業の手を止め、心臓の上を叩くように、胸の前に腕を持ち上げた。私もそれに頷いて返す。グローグーはその様子を見て、手を振って返事をする。ヘルメットをしていない何人かのマンダロリアンがその愛らしい姿に歯を見せて笑った。
    「それにしてもディン・ジャリンはどこに?彼があなたを放っておくとは思えないから、きっとあなたが彼の元から逃げ出したんでしょうね。師匠の目を盗んでそんなことをするなんて、大した弟子だ」
     グローグーは何を思ったのか誇らしそうにふんと鼻を鳴らして私に振り返った。前を見ないと足を引っかける、と言うと案の定彼は転びかけた。
     不意に彼の体がふわりと浮いた。
     惑星の重力を無視して子どもの体が宙を舞い、ふわふわとその場に滞在したかと思うと、今度はゆっくりと引き寄せられる。子どもはまったく抵抗せず、それどころか引き寄せられることを楽しんできゃーきゃーと歓声を上げている。
    「グローグー、勝手にうろついちゃ駄目だろ」
     フード付きの黒いローブを着た男が彼を抱き寄せた。グローグーは男の腕の中に収まり、しかし浮遊が楽しかったのか、もう一回してくれと強請るように、喉の奥を鳴らしておねだりした。
    「駄目だよ。小さな君でも、生き物を浮かばせるのは本当に疲れるんだから」
     グローグーはぶーぶーと鼻を鳴らして抗議した。
    「ジェダイ」
     ふと男は私を見た。白い肌の若い男。青い瞳がサンダーリの街を囲むガラスドーム越しの日差しを通してキラキラ光る。彼は客人だ。ディン・ジャリンとその息子グローグーが連れてきた。新共和国に関りはあるが、政治には距離を置き、今はただジェダイとして新しい世代の育成の場を作るため尽力しているらしい。グローグーは彼にとって最初の生徒であり、最初の弟子候補だった。彼は結局マンダロアの道を選んだが、ジェダイの力は以前として子どもの中にある。それを鈍らせないためにも、定期的にこの男と会って訓練を受けているらしい。
    「こんにちは、アーマラー」
     彼は如才なく優雅に腰を曲げて会釈した。ジェダイの挨拶を見るのはどれほどぶりだろう。いや実際に礼を尽くされたことはない。ボ=カターンとは違い、私はジェダイたちとは一度も寄り添えたことはなかった。デス・ウォッチだった時は直接戦うこともあった。
    「その子は一人で鍛冶場までやって来た。あそこは絶えず火が灯っているから、子どもには危険な場所だ。目を離さないようにしてほしい」
    「わかった」ジェダイは幼子の顔を覗き込んだ。「そんなところで何をしていたんだ?」
     不意に子どもがジッとジェダイを見つめた。ジェダイも何かを感じて口を閉じ、幼子の目を見返した。ディン・ジャリン曰く、ジェダイはフォースを通しお互いの考えを伝えあうことが出来るらしい。
    「彼はあなたに会いたかったのだと言っている」
    「私に?」
    「私にも一族の紋章を授けてほしいと頼みたかったそうだ。クラン・マッドホーン?」
     グローグーは頷いて、自身の胸に触れ、それからジェダイの胸を指さした。確かに以前私は彼の為にベスカーの小さなアーマーを拵えた。
    「駄目だ、ディン・グローグー。彼はマンダロリアンではない。マンダロリアンではないものがベスカーの神聖なアーマーを着ることも、印を身に着けることも許されない」
     グローグーは悲しそうに耳をぱたりと垂らした。
    「いいんだよ、グローグー。私には必要ないし、マンダロリアンとジェダイは違う。お互いの文化を大切にしないと」
     ジェダイは困った顔を隠しもせず、私を見て平謝りした。
    「何故その子はあなたに印を授けたいと思ったのか」私は男に歩み寄り、子どもの顔を覗き込んだ。子どもは何か言っているが、私にはよく分からなかった。
     通訳を期待してジェダイを見たが、彼は少し戸惑ったように曖昧に微笑み「子どもの親切心だ」と誤魔化した。
     私には嘘を見抜く力がある。それにこのジェダイはあまり嘘が上手くないようだ。
     不意に興味が湧いてきて、私は彼に「一緒にディン・ジャリンを探そう」と提案した。きっと彼にそんな提案は不要だ。彼はディンの居場所を知っているだろう。でも彼は大人しく私の申し出を受けた。
     我々は再びサンダーリの街を歩いた。鍛冶場から議事堂までの道を進む。途中かつての偉大な指導者とされていたマンダロリアンたちの像があった。それらは倒れ、破壊され、無残な姿だった。その瓦礫を人々やドロイドが片付けている。
     グローグーが下ろしてくれと、ルークの腕の中でバタついた。彼は素直に子どもを下ろした。子どもは途端に駆け出し、あちこち興味深そうに覗き込んだり、触れたりしている。危険がないように私もジェダイも彼の後ろ姿をジッと見つめた。
    「ルーク・スカイウォーカー、あなたはマンダロリアンについてどれほど知っている?」
     彼はチラリと私に振りかえった。
    「かつて独立した巨大な惑星国家を築いていたこと。旧共和国時代末期には、レディ・ボ=カターンの姉サティーン・クライズ女公爵が指導者で、彼女の政権下で安定した治世が続いていた。しかし戦争と内乱と分裂で国が荒廃し、やがて帝国に飲み込まれてしまった。マンダロリアンたちはいくつもの分派に別れ、散り散りになり、結局星を出た者たちが生き残った」
    「それはホロネットのアーカイブでもわかることね」
    「……あなたやディンの宗派には厳粛な誓いがある」
    「説明して?」
    「誓いを立てた者は決してマスクを取らない。仲間を第一に考える。教義を守り続ける。戦士として生き、戦士として死ぬ」
    「ディンから講義を受けたようだ」私の隣でジェダイが緊張している。「マンダロアの教義を正確に知る者は少ない。あなたが言ったことは最低限の事ばかりだけど、もっとも重要なこともでもある」
     子どもは不意に何かを見つけて立ち止まった。塵の中を這う黒い虫。こんなにボロボロになっても、都市には様々な生き物がまだ生き残っている。
    「ディンは、同じ印を持つ一族以外に顔を晒してはいけない、とあなたに伝えた?」
    「……アーマラー、私は、」
    「彼の顔を見たかあなたの口から知りたい」
     ジェダイは少し逡巡していたが、結局頷いた。
    「それはギデオンの軽クルーザーで?」
    「……」
    「彼は素直に答えた。あなたもそうすべきでは?」
    「軽クルーザーで最初に彼の顔を見た。でもその後も彼の素顔を何度となく見た。ただし、彼が禊をした後は誓って見ていない」
     これは真実だろう。
     今回、ディン・ジャリンがこの男を連れて来る前に、彼は全てを私に伝えた。
     一人放浪していた時期、思いがけずジェダイと体の関係を結んだ。グローグーに会うことは叶わなかったが、彼の近況を聞くことをジェダイは許し、そして二人の距離は近付き、まるでそうなるのが当然というように求めあったのだとか。マンダロアの教義で性欲を満たすこと、誰かと関係を持つことは禁じられていないのだから、好きにすればいいと私が伝えると、ディン・ジャリンはジェダイのルーク・スカイウォーカーが彼の素顔を知っていることを告白した。ディン・ジャリンは真面目で実直な男だ。彼はルークの立場や彼の行動がマンダロリアンの掟に反しないのか確かめたがった。きっと黙っていれば私は彼らの関係を知ることはなかっただろう。でもディンはそう言う男だった。
    「かつてマンダロリアンとジェダイは敵対関係にあった。しかし何千年にも及ぶ歴史の中、常にそうだったわけではない。時には志を共にし、時には交わることもあった。ジェダイでありマンダロリアンであったター・ヴィズラがその最たるものだ。彼は二つの文化を結び付けようと、ダーク・セイバーを作ったのかもしれない。それがどういう経緯か、王位継承に欠かせない政治の道具に落ちぶれた」
     あの武器は強力だが、マンダロリアンのベスカーを破壊する恐れがある。ベスカーとセイバーを同時に使えば心強い武器になるが、相対すればお互いを傷付け合う兵器になる。マンダロリアンを傷付ける武器は必要ない。それが戦いの最中破壊されたと聞いた時は、人知れずホッとしたものだ。だが、ダーク・セイバーがなくなったからと言って、同じ威力を持つライト・セイバーがこの世から消えたわけではない。
    「私はあなたとディンがどんな関係を結ぼうと口を挟むつもりはない。あなたたちは成人した大人同士で、分別をわきまえたジェダイとマンダロリアンだ。最善の選択をすると期待している」
    「……」
    「しかし、彼を傷付け我々を巻き込み危険に晒すようならば、例えジェダイに対して無謀だとしても挑戦を申し込む」
    「それは私を殺すということ?」
    「そうだ、ジェダイ」
     彼は僅かに息を飲んだ。
    「ジェダイとマンダロリアン。二度と敵対しないよう強く願う」
     子どもが歩き出した。小さな足を懸命に動かして、凸凹とした道の間を通り抜けていく。私とジェダイも彼の後に続いた。
    「どちらにせよ、今の状況ではあなたとディン・ジャリンが添い遂げることはないだろう」
     私は足の前に転がる小石を蹴り退けて進んだ。グローグーは議事堂へ続く道を逸れ、民家のある方へ足を向けた。まだまだ瓦礫がそこかしこに道を塞いでいる。グローグーは飛び跳ねて岩の上に立ち、私達が付いてくるのを待って、またぴょんぴょんと跳ねた。
    「どうして?」
    「肉体的に結ばれても、ジェダイとマンダロリアンの進む道は決して交差しない。生き方が違い過ぎる。我々は同じ仲間でなければ印を受け取れないし、与えられない。あなたたちジェダイは特定のなにかに固執して愛着を持ってはならない。もともと交わうはずのない二つだ。どちらかが今いる道を捨てるしか一緒になる方法はない」
    「共に生きる道はないと?」
    「残念だが、若きジェダイ、その通りだ」
     私は彼を追い詰めるつもりはなかった。ただ真実を述べたまでだ。それに、一族に加わることが出来ずとも、交流したり、体の関係を持つことを否定することはない。好きに日々を過ごせばいい。ただ、ルーク・スカイウォーカーは〝我々の人〟ではないだけだ。
    「正直に言うと、あなたの存在を快く思っていないマンダロリアンたちもいる。我々は外部の干渉によって今まで悲惨な目にあってきた。この感情は理解してほしい」
    「私があなた達の脅威になると?」
    「あなたと言うか、あなたの背後にあるものを皆警戒している」
    「背後?」
    「ジェダイは政治から遠のいたというが、あなたはまだ新共和国と深く関係している。彼らが我々の独立を認めるかまだ分からない以上、あなたが何度もここに来るのは、不安を抱えているものの目には侵略的行為に写る。我々はもはやどの国の属国になるつもりもない。完全に独立し、共和国とは対等な立場として交渉の場に着くつもりだ」
    「私がいるとその信念が脅かされる?」
    「そう考える者もいる」
    「それはあなたなのでは?」
     私は彼に振り返った。ジェダイを怒らせるつもりはなかったが、どうやら彼は気分を害したようだ。
    「私はそうは思っていない。ディンがあなたを招き、指導者であるボ=カターンがそれを受け入れた。ならあなたは脅威ではない。それが分からないほど私は愚かではない。ただ物事は絶えず変化する。あなたがいつまでも政治に触れないという保証はどこにもない」
    「つまり、あなたが言いたいのは、もしかすると私がディンを何らかの形でマンダロリアンを辞めさせて、ジェダイに帰化させる可能性があるかもしれないということと、逆にディンのマンダロリアンとしての立場を利用してマンダロアの内政に口出しをするかもしれないという事ですか?」
     彼の発言を検討してから、その通りだと頷くと、青年は少しばかり動揺した眼で私を見上げた。
    「そんなことはあり得ない。そもそも、あのディンが、マンダロリアンであることを何よりも誇りにしている彼が、一時の感情に溺れて立場を棄てるなどあり得ない」
    「でもジェダイはマインドトリックが得意だと聞く。彼に暗示を掛けることは出来るのでは?」
    「大切な人にそんなことはしない」ルークは低く呻くように否定した。
    「……もしかして、ジェダイ、あなたは今私の発言によって傷付いている?」
     ジェダイは私をジッと見つめてから、フッと鼻を鳴らして笑った。
    「あなたはディンとよく似てますね。いや、彼があなたに似ているのかな。ディンはあなたをとても尊敬しているし、相談役として誰よりも頼りにしている」
    「我々は同じ教義を信奉するがあまり似ていない。私は彼ほど直情的ではない」
     ルークは目を伏せ「そうですね」と静かに頷いた。
     なぜディン・ジャリンがこの若いジェダイに心を奪われたのか私には分からない。この男は自分の感情を隠すところがある。ディンが強い戦士が好きなのは分かっていたが、でも感情に蓋をしてしまう人に惹かれるなど意外だった。隠し事は嫌いな男だと思っていた。
     暫く我々は無言で歩き続けた。子どもが飛び跳ねると、時々ジェダイは彼をフォースで浮遊させ、危険のない道に彼を導いた。それを見ていた他の子どもたちが羨ましそうにグローグーに近寄ってい来る。同じように浮かせてほしいと頼み、ジェダイは快くそれを受け入れ、子どもたちを遊ばせた。甲高い子どもの笑い声。多くが微笑まし気に、道を歩き浮かび飛び跳ねる子どもたちを眺めた。だが中にはそれを遠巻きに見ている者もいた。輪に入りたがる我が子を押しとどめ、ジェダイに近付けまいとする者たち。我らの少なくない数が、かつてマンダロア内戦や帝国時代の反乱でジェダイとクローン兵、反乱者たちがこの惑星を戦場に変えた様を見ていた。彼らは分離主義者や帝国を嫌うが、同時にジェダイたちにも懐疑的だ。戦争が人々の心に未だ消えぬ傷を作った。私はジェダイの斜め隣を歩き、周囲を観察し、彼らの顔を見て、道のりはまだ長いと思い知る。でも何も知らない子供たちは楽しそうで、今の朗らかな一時を守りたいと思った。
     通りを抜けると小さな広場に出た。同時にジェットパックが噴出する音が聞こえ、それが近付いてきて、グローグーたちの傍に一人のマンダロリアンが着地した。ディン・ジャリンは子どもを見るなり、駆け寄って抱き上げ「どこに行っていたんだ」と切羽詰まった声を上げた。子どもはケロリとして気にした様子もなく、楽しく一緒に遊んでくれた子どもたちに手を振っている。
    「アーマラーの鍛冶場にいたんだ。直ぐに見つけられた」
    「ルーク、なら連絡してくれたらよかっただろ。心配したんだ」
     ジェダイは肩を竦めた。私と話をしていたせいで通信機に触れる機会がなかったと言い訳もできたのに、彼は何も言わなかった。
     ふとディンは声を潜めて彼の耳元に何か囁いた。チラリと私を見ているところから察するに、おそらく何を話したか聞いたのだろう。だがジェダイは軽く頭を振るだけで、具体的に答えるつもりはないようだった。話せばいいのになぜ言わないのだろう。私が一歩歩み寄ると、ディン・ジャリンはすっと背筋を伸ばし私に会釈した。
    「我々はあなたを探していた。こうして見付けたから、私は自分の作業場に戻る」
    「アーマラー、ありがとう。とても助かりました」ルークは如才なく礼を述べ、またディンに振り返った。「私は今度はR2を探しに行くよ。彼も君のこと心配して探しに出てくれたんだよ、グローグー」
     ジェダイは子どもの顔を覗き込んだ。
    「今度はどこへ行くか私達に教えてから行動してくれ。いいね?」
     子どもはようやくバツが悪そうに俯いて、小さく頷いた。我儘な子どもも流石のジェダイ相手には強気に出れないようだ。
     ルークは先程と同じようにもう一度私に会釈すると、迷うことなくその場を後にした。きっとあのジェダイは自身のドロイドがどこにいるか分かっているのだろう。
    「彼と話をした?」ディンはルークの姿が通りの角を曲がるのを見届けてから、ようやく私に振り返った。
    「した」
    「あなたは彼に何と?」
    「あなたに言ったように、ジェダイとマンダロリアンの道は交わらないが、交際するぐらいなら掟に反することはないと伝えた」
    「……今は分からないがいつか解決策を見付ける。きっと道はある」
     ディンは自分に言い聞かすように小さく呟いた。彼らしい考えだ。この男は一度我々の一族を追放された後も決して諦めなかった。良くも悪くも彼はへこたれない。諦めが悪いのだ。
    「それで彼はどう返事を?」
    「それは直接彼に聞くといい。ただ私に言えることは、私はどうやら彼を傷付けたらしいということね」
    「なに?なぜ?」
    「ジェダイがその力でマンダロリアンを操ることは難しくないと言った」
     ディンは明かに困惑していた。どんな話の流れで私がそんなことを言ったのか、彼は知りたいようだった。
    「出来れば彼には優しく接してほしかった」
    「ディン・ジャリン。あなたは私に何を求めている?私はあなたの相談役で人々の鍛冶職人ではあるが、あなたの姉でも母親でもない」
    「……」
    「……でも、さっきの態度はあまり褒められたものではなかったかも」
     ディンがどこかホッとしたように胸を撫で下ろしている。彼の腕の中でグローグーも同じように安心したと微笑んだ。大人の話を理解しているのではなく、ただ父の感情に同調しているのだろう。彼らの態度を見ていると、ジェダイに対して厳しい姿勢を貫くことが難しくなる。
     自然と溜息が零れた。これは自分に対してだ。
    「今夜の晩餐会には私も出席する。そこで彼に失礼な態度を詫びよう」
     ヘルメット越しでもディン・ジャリンの表情がパッと変わったのが分かった。
     ディンのことは仲間に連れられてコンコーディアに着た頃から知っている。私もまだ若く未熟だったが、彼は今のグローグーのように幼かった。黒い巻き毛と茶色い瞳、小麦色の肌を持つ人間の少年。彼は家族と故郷を失い混乱していたが、その瞳には既に固い意志と闘志が宿っていた。その眼を今も覚えている。将来どうなるか分からないが、それでも時々彼の為に何かしてやりたいと思う。大切な仲間を前にすると、私も甘くなることがあるのだ。
    「ありがとう」
    「……これはあなたたちの為じゃない」
    「分かってる。それでも、ありがとう」
     正直に言ってルーク・スカイウォーカーを信用しているわけではない。彼に愛想を振りまいて気に入られたところで、問題が解決するとは思えない。でも、ディンが嬉しそうにしている。今はそれが重要だ。

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    sugasugatamama

    DONEマンダロリアンの二次創作
    30代ディン・ジャリン×20代ルーク・スカイウォーカー

    みすみさん(@mismi_0108)とのオフ会で出たお題(アソーカ+アルコール)のdinlukeです
    現代パロかつ、映画トレインスポッティングの一部パロディでもあります

    設定年齢口調は独自設定。ディンさんがルークに振り回されています
    同時にボソカbosokaとアニパドもいます!
    ※誤字脱字は見つけ次第直します
    ようこそ、我が家へ 同僚の友人のバンドがクラブでライブをするというからついてきたが、俺は今断らなかった自分を密かに恨んでいた。クラブはダウンタウンにある昔ながらのバーの地下にあり、若い客の熱気と騒音とアルコールや汗や煙草による悪臭に満ちていた。換気扇などもはや一つも機能していないのか、煙草の煙が薄暗い天井に溜まり、会場はステージを中心にフロア内をパタパタと照らす照明の光を受けて薄ぼんやりと白んでいる。人の多い場所は苦手だ。さらに言うと、騒がしいのも得意じゃない。しかし、せっかくの同僚のボ=カターンの誘いであるし、時には息抜きも必要だと思ってついてきた。家に帰れば現実が待っている。もちろん、その現実を大切に思っているが、床に散らかった子どものおもちゃや溜まりに溜まった洗濯物、埃をかぶった本やBDやDVD、賞味期限ぎりぎりの調味料や子どもが好きな甘いお菓子、アルファベット型のショートパスタでいっぱいの食品棚、割れないプラスチックの食器、そんなものを思うと時々無性に叫びだしたくなる。子どもを疎ましく思ったことは一度もない。あの子を愛している。でもかつて整理整頓された部屋で、読書や映画鑑賞にゆっくり時間を割いていた数年前を思うと、今の自分の身動きが取れない様子に息が詰まる。息子が学校の同級生宅にお泊り会で家を留守にすることになった時、小躍りしそうになるほど嬉しかった。久しぶりに取れた一人の時間を満喫するつもりだった。しかし、結局仕事が押して午後休は潰れ、いつもの通り定時を大幅に過ぎてやっと職場を後にできた。今さら家に帰って部屋を掃除したり、本を読んだりする時間はない。むしろ一食分の夕食を作るのが手間だった。そもそもあの子がいないんじゃ、中途半端な時間にいそいそと家に帰っても仕方がない。どこかで適当に食事を済ませようとかと頭を悩ませていると、同じように残業上がりのボが「まだいるなんて珍しい。いつもなら仕事が終わったら一目散に帰るのに」と話しかけてきた。彼女は俺の事情を知ると、今夜恋人とダウンタウンで外食してからライブに行くことになっている、せっかくだから一緒にどうだと誘ってきた。
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    sugasugatamama

    DONEマンダロリアン二次創作。season3までのネタバレあります。
    ディン・ジャリン×ルーク・スカイウォーカー前提で、ルークとアーマラーがちょっとお喋りするお話。
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    アーマラーのキャラが最後まで良く分からん…難しい。
    街を歩く 緑の肌を持つ小さな子どもが鍛冶場へひょこりと顔を出した。彼はまるで自分の家のように広い作業場を歩き回った。その場には私しかおらず、彼も一人だった。どうして幼子がこんな場所に一人でいるのかと尋ねると、彼は一人ではないと首を横に振った。どう見ても一人にしか見えないのに、それがなんだか可愛らしくて、ついくすりと笑いを零すと、彼は物珍しそうに私をまじまじと見上げた。それもそのはずだろう。私は彼の前でも、誰の前でも笑わない。笑うのは苦手だし、冗談を理解するのはもっと苦手だ。でもそれが下手でも苦労したことは特になかった。
    「グローグー、あなたの親を探しましょう。きっと彼はあなたを探している」
     言うと彼は両手を差し出し、抱き上げる様に乞うた。今度は私が驚く番だった。子どもを抱いたことなど一度もない。私はマンダロリアンたちが彼らを育てる様子をただ見てきたが、私自身が子どもに触れたことは一度もなかった。戸惑っていると、グローグーはどうした、と言うように小首を傾げた。
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