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    sugasugatamama

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    sugasugatamama

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    マンダロリアンの二次創作
    30代ディン・ジャリン×20代ルーク・スカイウォーカー

    みすみさん(@mismi_0108)とのオフ会で出たお題(アソーカ+アルコール)のdinlukeです
    現代パロかつ、映画トレインスポッティングの一部パロディでもあります

    設定年齢口調は独自設定。ディンさんがルークに振り回されています
    同時にボソカbosokaとアニパドもいます!
    ※誤字脱字は見つけ次第直します

    ようこそ、我が家へ 同僚の友人のバンドがクラブでライブをするというからついてきたが、俺は今断らなかった自分を密かに恨んでいた。クラブはダウンタウンにある昔ながらのバーの地下にあり、若い客の熱気と騒音とアルコールや汗や煙草による悪臭に満ちていた。換気扇などもはや一つも機能していないのか、煙草の煙が薄暗い天井に溜まり、会場はステージを中心にフロア内をパタパタと照らす照明の光を受けて薄ぼんやりと白んでいる。人の多い場所は苦手だ。さらに言うと、騒がしいのも得意じゃない。しかし、せっかくの同僚のボ=カターンの誘いであるし、時には息抜きも必要だと思ってついてきた。家に帰れば現実が待っている。もちろん、その現実を大切に思っているが、床に散らかった子どものおもちゃや溜まりに溜まった洗濯物、埃をかぶった本やBDやDVD、賞味期限ぎりぎりの調味料や子どもが好きな甘いお菓子、アルファベット型のショートパスタでいっぱいの食品棚、割れないプラスチックの食器、そんなものを思うと時々無性に叫びだしたくなる。子どもを疎ましく思ったことは一度もない。あの子を愛している。でもかつて整理整頓された部屋で、読書や映画鑑賞にゆっくり時間を割いていた数年前を思うと、今の自分の身動きが取れない様子に息が詰まる。息子が学校の同級生宅にお泊り会で家を留守にすることになった時、小躍りしそうになるほど嬉しかった。久しぶりに取れた一人の時間を満喫するつもりだった。しかし、結局仕事が押して午後休は潰れ、いつもの通り定時を大幅に過ぎてやっと職場を後にできた。今さら家に帰って部屋を掃除したり、本を読んだりする時間はない。むしろ一食分の夕食を作るのが手間だった。そもそもあの子がいないんじゃ、中途半端な時間にいそいそと家に帰っても仕方がない。どこかで適当に食事を済ませようとかと頭を悩ませていると、同じように残業上がりのボが「まだいるなんて珍しい。いつもなら仕事が終わったら一目散に帰るのに」と話しかけてきた。彼女は俺の事情を知ると、今夜恋人とダウンタウンで外食してからライブに行くことになっている、せっかくだから一緒にどうだと誘ってきた。
    「デートの邪魔じゃないか?」
    「そうだけど」ボ=カターンは否定しなかった。彼女は無駄な遠慮はしない人だ。「客がいなかったらライブは盛り上がらないから、最低でも一人は知り合いを連れてくるように友人たちから頼まれている。アソーカもきっと友だちを誘ってるはずよ」
    「つまり俺はさくらか?」
    「そうともいう」ボ=カターンはニヤリと笑った。
     まあ断る理由もないし、今夜は適当なファストフード店で食事を済ませようかと考えていたので、特に考えずに頷いた。
     ボの恋人のアソーカとは、以前職場の親睦会で会ったことがあったから、特段構える必要はなかった。歳も近いし、彼女は話し上手で聞き上手だ。俺は自分からコミュニケーションを取るタイプではないので大抵初対面の相手の前では口を開かないし、時には不機嫌そうに見えるといって場の空気を悪くしてしまうこともあるのだが、アソーカとはそんなことは一切なかった。彼女は俺がボ=カターンとどこか似ているから一緒にいると落ち着くと言っていた。「勘違いされやすいところとかそっくり」というのが彼女の評価だが、俺もボ=カターンも(ボは特に)お互いが似ているという事を認めてはいない。
     ともあれ、俺たちは三人で簡単に食事を済ませ、三人揃ってクラブへ来た。
     それが間違いだった。
     二人とも俺とは歳も近いし、アソーカはクラシック音楽やジャズを好みそうな穏やかな佇まいなのだが(実際に彼女は大学で社会学を専攻する常勤講師だ)、彼女たちの友人たちはパンク音楽を主に演奏するバンドで活動していた。
     さくらなんて全く必要ないじゃないか。彼女たちの友人たちは相当人気があるのか、それともパンクロックのライブはこれが普通なのか、俺がいなくても十分に会場は盛り上がっていた。騒がしい上に熱気もすごくて、俺は早々にライブハウスの壁際に退散した。アソーカは意外にこの手の音楽が好きなのか、リズムにあわせて首を振り飛び跳ねてはしゃぎ、ボ=カターンはそんなアソーカを楽しそうに見つめ、彼女が大声で何か言うたびに耳を寄せて笑っている。あんな同僚は初めて見た。仕事中の彼女はいつも張り詰めていて、眉間に皺をよせ、腕を組み、しかつめらしくしているのに。
     パタパタと色とりどりのライトが客たちを照らし、皆が皆、思い思いに楽しんでいる。でも俺は壁から離れてボ=カターンとアソーカたちのように踊ったり飛び跳ねたりは出来なかった。昔からこういう空間は苦手だった。どう振舞っていいかわからない。楽しそうにしている彼女たちを見るのは好きだが、そろそろここを出た方がいいだろう。
     すっかり温くなったビール瓶を振る。中身はあと半分。腕時計を確認しながら、瓶をあおり、一口飲み込んだ。
    「ねえ、ライター持ってる?」
     ふと隣に立っていた青年が話しかけてきた。煙草を指に挟み、人好きしそうな様子で微笑んでいる。基本的に仏頂面の俺とは正反対だ。持ち前の雰囲気のせいか、子供連れでない限り、俺はなかなか見ず知らずの人間に話しかけられにくい。珍しいと思いはしたが、俺のように壁に張り付いている連中は他にもいるものの、たいていが友人や仲間内で何かしらの話題で盛り上がっているか、恋人同士なら興奮にかまけてイチャついているかだから、一人ぼんやりフロアを眺めている俺に話しかけようと思ったのも仕方がない。消去法というやつだ。
    「煙草は吸わない」
    「そうなの?意外だ」
    「やめたんだ」
     へえ凄い、なんて言いながらも彼はキョロキョロと周りを見渡した。どうしても吸いたいのだろう。今でこそ吸わないが、昔取った杵柄だ、その気持ちは分かる。
    「ちょっと待ってろ」
     俺は青年を残し、どうにか人混みを掻き分けてバーカウンターに辿り着くと、忙しなく動き回るバーテンダーを捕まえてライターを借りた。彼女は使いかけの安物だから返さなくていいと言い残し、直ぐに仕事に戻った。
     来た時と同じように、人の波を越えて、どうにか元の壁際まで戻った。青年はまだそこにいた。
     煙草をくわえたままの彼の口元にライターの火を灯す。彼は小さな火を守るように両手を俺の手に翳した。ジリジリと先端が燃えて、独特のツンとした臭いが立ち昇る。懐かしさに一瞬だけ喉が鳴った。
    「ありがとう」青年は美味しそうに煙を吸い込み、俺に吹きかけないよう、首を九〇度横に向けて吐き出してから、朗らかな笑顔を向けた。
     ライトに照らされ、毒々しいまでの煙たい空間で、でも不思議と彼は涼やかだった。
    「……今時紙の煙草なんて珍しいな」
     周囲の若者たちは電子タバコやベイプペンでふかしているというのに、この青年は紙の、しかも巻き煙草を吸っている。
    「量が調整できるし、この方が格好がつくから」
    「確かに様になってる」
     青年は咥えた煙草をすっと吸った。先が赤く光り、そして灰がパラパラと落ちる。彼が俺を見ている。クラブのライトのせいで彼の眼の色は分からないが、きっと綺麗な色に違いない。そう思った。
    「そろそろ出ようかな」彼は近くのテーブルの上にあった、ゴミだらけの灰皿に煙草の灰を落とした。「君はどうする?」
     一瞬なにを言われているか分からなかったが、彼が自身のスマートフォンで時間を確認したのを見て、やっと事態が飲み込めた。
    「俺は……友人と来てる」
    「そう。僕はここで友人と会う約束だったんだけど、彼女いま恋人とイチャついて忙しいみたいだ」彼はフロアをざっと眺めた。が鳴る様なギターの音。ヴォーカルの叫び声、騒がしいドラムと腹に響くベース、そして人々が飛び跳ねるたびに地面が揺れる。「──どうする?」
     彼はもう一度同じことを尋ねた。

     タクシーで彼の家に向かう間、俺たちはずっとキスをしていた。運転手が時々ミラー越しに俺たちを見ては、少しばかり呆れた顔をしていたが、俺はもうすっかり彼に夢中だった。そもそもこの手のことは本当に久しぶりだ。会ったばかりの相手と意気投合し、勢いに任せて求め合うなんて、十代の頃にもあまり経験したことがない。アルコールが入っているせいもあって、キスはビールとジントニックの味がした。それから彼の吸った煙草の苦味。苦いはずのキスなのに、やわやわと唇を噛み、吸い付いて、口内を愛撫すると、俺の痺れた舌はどこかで甘みを感じ取っていた。彼のことがもっと知りたくて、あまりにもこれが気持ち良くて、まるで鳥が啄むようにキスを繰り返すと、彼は鼻にかかった声でくすくす笑った。これは良くない。癖になりそうだ。

     立派な庭のある家の前に着くと、彼は俺の手を引いて、門をくぐり玄関ドアを開けた。家の中は真っ暗だが、足元に小さな照明が灯っていた。扉から入ってすぐの壁に自転車が置いてあって、それに蹴躓きそうになったし、そのまま真っすぐに行こうとして、彼に「そっちは食堂」と言って止められたり、あまりスマートに物事を進めれなかったが、それでも彼の部屋に着くころには俺も段取りと言うものを思い出していた。
     殺風景な部屋だ。白い壁にシンプルなカーテン、サイドテーブルの上に白いソケットの付いた間接照明、クイーンサイズのベッド。彼の寝室と言うよりもゲストルームみたいだ。部屋の隅に幾つか段ボール箱が置かれている。
    「越してきたばかりか?」おそらく学生だろう。もしくは院生。「……成人してるよな?」
    「もちろん。IDを提示しようか?お巡りさん」
     ニヤリと笑いながら、青年はコートのポケットからコンドームを取り出し、ベッドの上に投げた。そして靴とコートを脱いで、適当に床に落とした。つい息子に対する習慣で、それを拾おうと屈みかけた俺のジャケットの襟を、彼が掴んで引き寄せた。
    「そんなのいいから、君も脱いでよ」
     彼の顔が至近距離にある。ライプの光が彼の顔の側面を照らしているが、やはり目の色はハッキリとわからない。ただ凪いだ水面の様な瞳に吸い寄せられるように、俺は体を倒した。

     目を覚ますとすっかり朝だった。
     薄くカーテンが開いた窓から光が漏れ入り、俺の顔を照らしている。冷たいシーツの上に手を滑らせ、溜息ともうめきともつかない声を漏らしながら、ぼんやりと額に手を添えた。ふと手首が見えて、腕時計が視界に入った。すでに七時を回っている。
    「やばいっ」慌てて体を起こしてから、見知らぬ部屋の風景に気付いて小首を傾げた。
     思い出すまでにほんの数秒かかった。俺は昨日家に戻らなかったんだ。ボ=カターンとアソーカに誘われてクラブに行った後、そこで知り合った青年の家で一晩過ごしたのだ。そして今日の出勤は九時からだが、息子は友だち宅で泊まりそのままの足で学校に行くことになっている。だから慌てて起きて、子どもの登校の支度に追われることはない。
     一人ホッと息を吐いてから、もう一度部屋を見渡して、例の青年の姿がないことに気付いた。彼はもう既に出て行ったのかもしれない。部屋の外で人が動く気配がする。ここは一軒家のように見えたが、あの青年の持ち家というには立派だ。もしかすると彼は仲間と一緒にルームシェアでもしていて、今彼の友人たちが起き出しているのかもしれない。だとすればいつまでも裸のままベッドでゴロゴロしているわけにはいかない。
     服を着て、一応ベッドメイキングもして、一通り部屋を片付けてから、そっと廊下に出た。清々しい朝の風に乗って、芳ばしいパンやスクランブルエッグの匂いが漂ってくる。途端に腹が減ってくる。さっさとあの青年に挨拶をして、どこかのダイナーで朝食でもとろう。
     こっちだろうか、などと辺りをつけて、昨夜間違えて進みそうになった食堂までの廊下を辿る。扉のない入り口をくぐると、朝食の美味しそうな匂いがぐっと濃くなった。
    「あら、おはよう」
     キッチンの奥にある大きな窓の傍に食卓があった。そこに座る、黒髪の女性が新聞から顔を上げて俺に微笑んだ。大きな黒縁眼鏡、ゆったりとしたタートルネックセーターと黒のワイドなパンツ、長い髪を頭の後ろでシニヨンヘアにしているお洒落な女性だ。年齢は俺とそう変わらなさそうに見えるが、実際には分からない。
    「朝食が出来てる。食べるでしょ?」
     彼女の目の前に座った背の高い男性が、彼女の視線を追って俺に振り返り、訝し気に顔を顰めた。
    「コーヒー?ジュース?それともミルクにする?」
     女性はニコニコ微笑みながら尋ねた。
    「いや、俺は直ぐに行かないと。お気遣いありがとう」俺は出来るだけ丁寧に彼女の好意に答えた。「ところで彼は?」
    「彼?」
     しまった。そう言えば、一晩ベッドを共にした相手の名前をまだ知らない。彼も俺の名前を聞かなかった。色々と久しぶり過ぎて、あまりに不慣れになっている。自分の不甲斐なさが嫌になる。
    「もしかして、あの子のこと?」
    「あの子?」
    「ルークなら二階の寝室よ。直ぐ降りてくる」いいからご飯食べて行きなさい、なんて朗らかに微笑む女性は、どこかあの青年に似ていた。
     男性の方は相変わらず黙り込んでいる。彼はカップを傾けて、静かにコーヒーを飲んでいるが、その視線はずっと俺を追っている。彼女もそうだがこの彼も随分ハンサムだ。年齢が良く分からない上に、二人ともどことなく垢抜けていてお洒落だった。学生っぽくは見えないから、二人とも社会人だろう。女性の方はどこか学者風にも見えた。
     俺は仕方なく彼女の勧めるまま、開いていた椅子に座った。自分でポットからコーヒーを注ぐ。嗅ぎなれた香りに少しほっとした。
    「この家は随分広いんだな。何人でルームシェアしてるんだ」
    「ルームシェア?」
    「君らはルークの同居人だろ?それか、もしかして大家?」
     女性は目の前の男性に目配せし、くすくす笑いながら「まあ、ルームメイトより大家っていうのが近いかもね」と言った。
    「おはよう」
     ふと入り口から例の青年、ルークの声がした。振り返る。彼は昨日よりラフなオーバーサイズのセーターと黒のスラックス姿でそこに立っていた。しかも腕には雑種の小型犬を抱いている。
    「母さん、父さん」
     彼は犬をエサ皿の傍で下ろすと、俺の向かいに移動し、すとんと椅子に腰を落とした。
    「ルーク、昨夜はアソーカに何も言わずにクラブを出たんだって?」ずっと黙り込んでいた男性がぼそぼそとルークに話しかけた。
    「彼女忙しそうだったし、邪魔しちゃ悪いと思って。でもメッセージは入れといたよ」
    「アニー、この子ももう大人なんだから、行動を逐一監視しちゃ駄目。久しぶりの帰郷なんだからゆっくりさせてあげて」
    「けどパドメ、」
    「あなたが子ども想いなのは分かる。でも不安になった時どうしたらいいか、セラピーでなんて言われた?」
    「……いったん深呼吸」アニーと呼ばれた父親は、しかし、納得が言っていないようだった。「とはいえこの状況はおかしくないか」
    「おかしくない。僕がクラブで酔っ払っちゃったから、彼は見兼ねて家まで送ってくれた。真夜中でもうすっかり遅かったから、お返しに彼をゲストルームに泊めてあげた。ただそれだけだ。ねえ、君……」言ってからルークは探るように俺をジッと見つめた。
    「ディン……」
    「ディン、そう、ディンはいい人なんだ」
     さあ、パンを食べて、なんて言いながら、ルークはバケットから俺の皿に遠慮なくパンを移した。俺は混乱していた。アソーカのことを知っている?彼は、もしかして、アソーカがあのクラブで落ち合うはずだった友人なのか?でもそれにしては彼は、若い。
    「実家……」
    「ああ」ルークはニコリと微笑んだ。それからテーブル越しに腕を伸ばし、手を差し出した。「僕はルーク・スカイウォーカー。ようこそ、我が家へ、ディン……」
    「ディン・ジャリン」勢いに押されて握手を返してしまった。
    「そう、ディン・ジャリン」
     名前もろくに知らなかったくせに、彼は澄んだ青い目を楽しそうに細めた。

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    30代ディン・ジャリン×20代ルーク・スカイウォーカー

    みすみさん(@mismi_0108)とのオフ会で出たお題(アソーカ+アルコール)のdinlukeです
    現代パロかつ、映画トレインスポッティングの一部パロディでもあります

    設定年齢口調は独自設定。ディンさんがルークに振り回されています
    同時にボソカbosokaとアニパドもいます!
    ※誤字脱字は見つけ次第直します
    ようこそ、我が家へ 同僚の友人のバンドがクラブでライブをするというからついてきたが、俺は今断らなかった自分を密かに恨んでいた。クラブはダウンタウンにある昔ながらのバーの地下にあり、若い客の熱気と騒音とアルコールや汗や煙草による悪臭に満ちていた。換気扇などもはや一つも機能していないのか、煙草の煙が薄暗い天井に溜まり、会場はステージを中心にフロア内をパタパタと照らす照明の光を受けて薄ぼんやりと白んでいる。人の多い場所は苦手だ。さらに言うと、騒がしいのも得意じゃない。しかし、せっかくの同僚のボ=カターンの誘いであるし、時には息抜きも必要だと思ってついてきた。家に帰れば現実が待っている。もちろん、その現実を大切に思っているが、床に散らかった子どものおもちゃや溜まりに溜まった洗濯物、埃をかぶった本やBDやDVD、賞味期限ぎりぎりの調味料や子どもが好きな甘いお菓子、アルファベット型のショートパスタでいっぱいの食品棚、割れないプラスチックの食器、そんなものを思うと時々無性に叫びだしたくなる。子どもを疎ましく思ったことは一度もない。あの子を愛している。でもかつて整理整頓された部屋で、読書や映画鑑賞にゆっくり時間を割いていた数年前を思うと、今の自分の身動きが取れない様子に息が詰まる。息子が学校の同級生宅にお泊り会で家を留守にすることになった時、小躍りしそうになるほど嬉しかった。久しぶりに取れた一人の時間を満喫するつもりだった。しかし、結局仕事が押して午後休は潰れ、いつもの通り定時を大幅に過ぎてやっと職場を後にできた。今さら家に帰って部屋を掃除したり、本を読んだりする時間はない。むしろ一食分の夕食を作るのが手間だった。そもそもあの子がいないんじゃ、中途半端な時間にいそいそと家に帰っても仕方がない。どこかで適当に食事を済ませようとかと頭を悩ませていると、同じように残業上がりのボが「まだいるなんて珍しい。いつもなら仕事が終わったら一目散に帰るのに」と話しかけてきた。彼女は俺の事情を知ると、今夜恋人とダウンタウンで外食してからライブに行くことになっている、せっかくだから一緒にどうだと誘ってきた。
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    sugasugatamama

    DONEマンダロリアン二次創作。season3までのネタバレあります。
    ディン・ジャリン×ルーク・スカイウォーカー前提で、ルークとアーマラーがちょっとお喋りするお話。
    大切な仲間を守りたいアーマラーと迷えるジェダイのルークと、諦めが悪いディンさんと可愛いグーちゃんが登場します。
    アーマラーのキャラが最後まで良く分からん…難しい。
    街を歩く 緑の肌を持つ小さな子どもが鍛冶場へひょこりと顔を出した。彼はまるで自分の家のように広い作業場を歩き回った。その場には私しかおらず、彼も一人だった。どうして幼子がこんな場所に一人でいるのかと尋ねると、彼は一人ではないと首を横に振った。どう見ても一人にしか見えないのに、それがなんだか可愛らしくて、ついくすりと笑いを零すと、彼は物珍しそうに私をまじまじと見上げた。それもそのはずだろう。私は彼の前でも、誰の前でも笑わない。笑うのは苦手だし、冗談を理解するのはもっと苦手だ。でもそれが下手でも苦労したことは特になかった。
    「グローグー、あなたの親を探しましょう。きっと彼はあなたを探している」
     言うと彼は両手を差し出し、抱き上げる様に乞うた。今度は私が驚く番だった。子どもを抱いたことなど一度もない。私はマンダロリアンたちが彼らを育てる様子をただ見てきたが、私自身が子どもに触れたことは一度もなかった。戸惑っていると、グローグーはどうした、と言うように小首を傾げた。
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