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    伊那弥彪

    ラクガキと二次創作文物置。支部にアップしたりする。

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    伊那弥彪

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    支部に投稿したうぎゅ、ご都合主義、何でも許せる方向け

    遠い昔の記憶目の前の男は笑いながら俺に告げる。

    「もし俺が鬼になったら、お前が頸斬ってくれよなぁぁ」

    うねり毛の黒髪を風に靡かせ、空色の美しい瞳の目を細めながら告げられた言葉に、俺は「冗談言うなよ」と笑いながら返事をした。

    愛していた。この男を。
    何度も何度も唇を重ねて。
    何度も何度も身体を重ねて。

    生まれ変わってもまた共に歩もう。

    俺は、お前を愛し続ける。何があっても。

    そう微笑みを浮かべながら告げた誓いに、愛しい男は眉を八の字にしながらも、嬉しそうに笑ってくれた。

    それは遠い記憶…

    どれ程遠いか分からない…ただ言えるのは、今世の記憶ではない。

    同じ時代、同じ境遇で、俺は再び生を受けた…。

    そしてその遠い記憶が蘇った今…

    炎上する吉原の街で、俺は

    愛しい男と瓜二つの"鬼"の頸に、刃を向けていた…。


    「妓夫…た…ろ……」

    記憶の中の愛しい男の名を口にする。それは、目の前の鬼が名乗った名と同じ名。
    俺が名を呼んでも、目の前の鬼は何も反応を返さない。ただじっと、俺の様子を窺っている。
    頸に当てている刃が震える。
    少しでも力を加えれば直ぐにでも刃はその頸を斬り落とすだろう。
    だが、できない…
    先程まで斬り落としたかったこの頸を、俺は今、斬り落とせない。いや、斬り落としたくない。
    冷たい汗が背中を伝う。それは受けた毒からの汗じゃない。

    俺の、弱さの汗だ……


    「どうしたぁぁ?俺の頸を斬らねぇのかぁぁ?音柱さんよぉぉ」

    今までただじっと俺の様子を窺っていた鬼が不敵に笑いながら俺を挑発しだす。

    やめろ。その声で…その喋り方で…俺に話し掛けるな…。

    愛しいその声で、愛しいその喋り方で、俺の心を掻き乱すな。

    「まさかとは思うがなぁぁ…」

    ニタリと不気味に笑いながら、その鬼は己の頸に当てられた俺の刀の峰をグッと握り締め、俺に告げてきた…

    「お前以外に俺の頸を斬らせるつもりじゃねぇよなぁぁ?」

    そう告げてきた瞳は、俺の知る空色の瞳ではなかった。本来なら白い筈の眼球は黄色く染まり、薄緑色の瞳には、それぞれ「上弦」「陸」の文字が浮かんでいる。
    そう。違う瞳なんだ。
    違う瞳な筈なのに…
    微かな哀しみを帯びたその瞳は、間違いなく俺が愛した男の瞳だった。

    笑い飛ばした言葉を思い出す。

    『もし俺が鬼になったら、お前が頸を斬ってくれよなぁぁ』

    冗談で終わらせたかった。絶対に有り得ない事なのだと。
    愛したお前が鬼になるなんて…決して無い事だと思っていた…。
    なのに、どうして……


    「なぁぁ、頼む天元……お前の手で終わらせてくれ」


    こんなにも叶えたくない愛した男からの願いが今まであっただろうか。
    斬りたくない…殺したくない……
    だが俺は柱だ。鬼殺隊の柱だ。
    その使命は果たさなきゃいけない。
    そして目の前にいるのは"鬼"。上弦の陸。
    今まで多くの命を食らってきた許せない存在…。

    前世と今世の俺が葛藤する…

    俺が今生きてるいるのはどちらか…

    何を大事にしなきゃいけないのか……

    ……そんな事、最初から決まっていた。

    俺は

    覚悟を決めた……


    「妓夫太郎…」


    その名を呼ぶと目の前の鬼は寂しそうにそれでもどこか嬉しそうに笑った……

    その笑顔が俺の覚悟を更に固める。

    俺は腕に力を込めた。

    そして……


    妓夫太郎を思いっきり 抱 き 締 め た 


    「……は?」

    「無理に決まってんだろうがァァァァッ!!俺がお前を斬るとかァァァァッ!!!」

    「いやお前!ちょっ…!!」

    俺に抱き締められた時は気の抜けた声を上げた妓夫太郎だが、今はメチャクチャ慌てふためいて俺から離れようとしている。だが離すつもりねぇからな!!

    「俺がどれだけお前にベタ惚れか知ってんだろがッ!!」

    「いやそれは前世の話だろうがぁぁあッ!!今は鬼と鬼殺隊だぞぉぉぉッ!?」

    「それでもお前はお前だろうが!!鬼になったお前でも全然好きだわ!!つかぶっちゃけ今のお前色っぽ過ぎんだよ!!何で乳首丸出しなんだよ!俺以外に見せんな!!」

    「いや空気読めよアホがぁぁぁあッ!!!」

    空気?知らん!!俺は俺らしくド派手にいくわ!!

    「周り見ろよぉぉぉッ!俺の妹と鬼殺隊のヒヨッコ共とお前の女房も目が点になってこっち見てんぞぉぉぉぉぉッ!!」

    お前の妹は間違いなくお前の取り乱し様に狼狽えてっけどな。雛鶴は……うん。後でちゃんと説明する。コイツを4人目の嫁にするってな!

    「つかそんな暴れんな!そんなに俺の抱擁が嫌なのか!?」

    「嫌とかそういう問題じゃねぇんだよなぁぁぁッ!俺は今鬼なんだぞぉぉぉ!?しかも上弦の陸!!そんな俺を柱のお前が抱き締めて良いわけねぇだろうがぁぁぁぁッ!!」

    「んなもん俺が決めるわ!!」

    「他の柱にぶん殴られてこいやぁぁぁぁッ!!!不死川あたりになぁぁぁぁッ!!」

    そういや他の柱も前世と同じだったな。他の奴らも記憶戻ってねぇかな……。

    「俺はもう何十人も人食ってんだぞ!?そんな俺を柱のお前が許しちゃダメだろうがぁぁぁッ!!」

    「どうせまた周りが禄でもねぇ大人ばっかの幼少期だったんだろうが!んで、助けてくれたのが鬼しかいなかったってところだろ!!選択の余地無しみてぇな!!」

    「まぁその通りだなぁぁぁぁッ!!」

    「俺がお前らを助けたかった!!!」

    「百何年も前だから無理だなぁぁぁぁッ!!」

    「神と仏をド派手に呪ってやる!!」

    「俺も呪ってやりてぇわッ!!」

    百年以上も俺とコイツの生を狂わせやがって!まぁ、こうして再会した分は差し引いてやるがな!

    「つかお前さっきからやけに俺を突き放しってっけど、まさか俺の事嫌いに…」

    「いや好きだわ!嫌いだったら抱き締められた瞬間に円斬旋回飛び血鎌食らわせてるわ!!」

    即答かよ。恥ずかしげもなくサラッと言いやがって…俺の嫁(確定)可愛すぎんだろ。

    「んじゃ相思相愛で問題何も無ぇじゃねぇかッ」

    「問題有りまくりだなぁぁぁッ!?」

    「何が問題なんだよッ」

    「だぁぁかぁぁらぁぁぁッ!!柱と鬼ってのが大問題だろうがぁぁぁぁぁッ!!!」

    「んじゃ柱辞めるわ」

    「辞めんなぁぁぁぁぁッ!!もうちっと責任持てやぁぁぁぁぁッ!!!」

    「責任なら持ってるぞ」

    「だったら簡単に辞めるとか言うなよなぁぁぁぁッ!」

    必死に俺を説得し続ける妓夫太郎。
    前世が俺と同じ柱だった分、その重要性を理解して俺の事を思って忠告してくれてんのがスゲー伝わってくる。
    分かってんだよ。柱として、鬼殺隊の要として、鬼と、しかも上弦と恋仲なんざなっちゃいけねぇ事くらい。責任だって十分理解してんだ。でもな。俺にとって柱としての責任よりも…

    「お前との誓いを守る責任の方が、俺にとっちゃ大事なんだよ」


    『生まれ変わってもまた共に歩もう』

    『俺は、お前を愛し続ける。何があっても』

    そう誓ったんだ。前世だろうが、柱と鬼だろうが関係無い。俺は、その誓いを必ず守る。

    「おま…まさか、その誓いって……」

    妓夫太郎も俺の誓いを思い出したようで、「ぁ、ぇっと、だなぁぁ…」と言葉を詰まらせながら、困惑しているような恥ずかしいような表情を浮かべる。その視線はどこを向いていいのか分からず、泳がせまくってまるで迷子状態だ。

    「おい。俺をちゃんと見ろ」

    俺の言葉に一瞬ビクッと肩を震わせた妓夫太郎は、眉を八の字にしてそろりと俺へ視線を向けた。

    「俺は何があってもお前を愛し続ける。これからもずっとだ」

    妓夫太郎の瞳を熱い視線で見つめながら告げた2度目の誓いの言葉。
    俺の言葉を受けて、妓夫太郎は「ぃや、えっと…」と困惑しながら頬を紅潮させていく。

    「お前の答え、聞かせてくれよ」

    「な?」と遠い昔笑い合いながら共に過ごした時のように、愛しい者へ向ける笑みを浮かべ俺は妓夫太郎へ語りかける。

    「ぉ、ぉれの答えはだなぁぁ…」

    「お前の答えは?」

    「ぃや、その……ッとりあえず、その顔をそれ以上近づけんなぁッ」

    「話逸らすなよ」

    「いや口づけする距離だろこれ!」

    「してやろうか?」

    「するなぁぁぁッ!!つか、他の奴らメッチャ近くに来てんだぞ!!!」

    遠くの屋根上で戦闘していた竈門、嘴平、いつの間にか起きてた我妻、そしてコイツの妹と雛鶴が俺達二人のすぐ側までやって来てた。まぁぶっちゃけ…

    「知ってた」

    「知ってて俺をまだ抱き締めてんのかこのアホぉぉぉぉぉッ!!」

    「いや離したらお前すぐ逃げそうだし」

    「そうだなぁぁぁッ!今日はもう逃げてぇ気分だなぁぁぁッ!」

    「んじゃ離さねぇ」

    再び暴れだした妓夫太郎の体をさっきよりもガッチリと抱き締めてやる。絶対ぇ逃さねぇからな!!

    「なぁ…オッサン、蟷螂に何やってんだ……」

    「いや俺が聞きたいんだけど…」

    「何だか、二人からすっごく暖かくて幸せな匂いがする…」

    「て、天元様……?」

    「ねぇお兄ちゃん!さっきからアタシ変なんだけど!何かお兄ちゃんが鬼狩りしててそんなお兄ちゃんの帰りをアタシが待ってるっていうのがチラチラ浮かんでくるんだけど!!ねぇ!!アタシおかしくなっちゃったのぉぉッ!?」

    どうやら妓夫太郎の記憶が蘇ったせいで妹の方も徐々に記憶が戻ってきてるみてぇだな。よし!

    「お前ら!!コイツ等兄妹連れて帰るぞ!!」

    「「「は?」」」

    「アホかぁぁぁぁぁぁッ!!!オイ!ヒヨッコ共!!今日のところは見逃してやるからこの馬鹿連れて帰れぇぇぇぇぇッ!!!」

    「柱命令だ!!早くしろ!!!」

    「んな事で柱命令使うなよなぁぁぁぁあッ!!!」

    暴れる妓夫太郎は俺が抱き上げ、混乱してる妹は3人に任せて何とか俺の屋敷まで連れ帰る事に成功した。

    「お前本っっ当に他の柱全員からぶん殴られてこいやぁぁぁぁ!!!」

    「いやまぁぶっちゃけ柱から降ろされるのは覚悟してるわ」

    「最悪切腹だぞアホ!!」

    「そん時はお前ら連れて逃げるッ」

    「ドヤるなよなぁぁぁあッ!!」

    「お兄ちゃん!アタシ全部思い出したよ!!アタシの本当の名前「梅」だわ!!後そこの男がお兄ちゃんを「嫁にくれ」って言ってきたのも思い出した!!」

    「そっかぁぁぁッちゃんと思い出して偉いなぁぁお前はぁぁあッ」

    まぁ、これから何とかなるだろ。
    何か知らんが、コイツ等の眼の「上弦」「陸」の文字も消えてるし。
    前世の記憶を取り戻して満面の笑顔の妹の頭を撫でる妓夫太郎を、俺は後ろから抱き締めて、

    「幸せにしてやるからな、妓夫太郎」

    そう耳元で囁いた。
    俺は大声を上げられるかと思っていたが、意外にも「…アホか」と呆れたような口調の小声で返事をされた。まぁ耳がメチャクチャ赤くなってるんだけどな。可愛い奴。
    とりあえず…コイツ等の服をどうにかするか。半裸はダメだうん。






    終わらせていただきます…


    【補足】前世の記憶をハッキリと思い出した瞬間に無惨の呪いから解放されたというご都合設定です。
    梅は前世の記憶のみ思い出し、今世の人間時代の記憶は戻ってません。

    勢いだけで書いてしまい申し訳ないです_(._.)_
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