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    HAL

    @1932_0404

    🌈字書き・俺レべ ・나혼렙・SoloLeveling(犬旬犬/진철진우진철/JinJin)推しは犬飼課長(우진철/Woo Jin cheol)

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    HAL

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    ラブレターの日
    葵ちゃん❤︎.*

     教室内で誰かが言っていた。
     ラブレターなんて、書いたことももらったこともない。
     現実ではSNSでのやり取りか、呼び出して……なんて話も聞く。
     そもそも、手紙を書いたことだってそんなにない。
     それも友達宛に授業中に回す他愛のないものをカウントすれば、だ。
     今は恋愛よりも何よりも勉強が先に立つ。
    叶えたい夢のためなら、苦ではないのだけれど……。
     お兄ちゃんだっていい歳なのに彼女がいた試しがないのでそういうものかと思っていた。
     彼女じゃなくて彼氏が出来たというのは想定外だったけど。
     だからといって、無闇に「誰かいい人いないのか」なんて聞いてくることもない。
     いないから聞かれても困るのが実情。
     と、まあ焦る、のとは違うけれど恋愛関係にも目を向ける余裕が出てきて気付いてしまった。
     出会いがない。
     これはいよいよ困ったぞ…。
     大学に行くのは医者になりたいからで、もちろん学業優先だ。
     それに今までの分もお母さんとの時間だって取りたい。
     出会いを求める時間も、隙間もない。
     お兄ちゃんはいったいどこであんな優良物件をひっかけてきたんだろう……と思ったけどハンター関係だなあれは。
     ハンター自体に忌避感はないにしたって、怪我をしたり、死んでしまったり、行方不明……とか。そっちの心配しかない。
     ふぅ、とため息を付いてから机の引き出しを開ける。
     ラブレターなんて、書いたことない。
     でも脳裏に浮かんだ人にならば、好意はある。
     多分、向こうも、それなりには。
     自分の知り合いじゃなくて、お兄ちゃん経由での知り合いというのが出会いのなさを物語っている。
     シンプルな便箋を引っ張り出してから、かわいさの欠片もないことに気付く。
     ラブレターではないけれど、この間一緒に遊びに行った時のお礼状だ。
     お礼状なら、このぐらいシンプルな方がいい。
     文面を考え考え、書き直すのも大変だし……と書き上げたらどっと疲れてしまった。
     SNSで伝えた方がずっと早い。
     一先ず休憩と思ってリビングに顔を出す。
     「お母さん、ちょっとコンビニ行ってくる」
     「あまり無駄遣いしないのよ」
     生返事をしてリビングを出た。
     アイス買いに行こっと。

    ***

     「母さん、葵は?」
     「コンビニですって」
     「切手でも買うつもりかな」
     「あら、どうして?」
     「いや、手紙が……俺の知り合いだし、これから会うから渡しておこうかと」
     「そうね、葵には連絡しておけばいいわ」

    ***

     コンビニでアイスを買って、行儀が悪いと思いつつかじりつく。
     ポケットに捩じ込んだスマホが震えて、お兄ちゃんから
     『切手は買わなくていい。諸菱くんには渡しておくから』
     そんなメッセージを何度も読み返して。
     「嘘でしょ」
     走り出しそうになって、手にしていたアイスが溶けて落ちたことに気付く。
     片手にはスマホ。
     もう片手には溶けたアイス。
     メッセージを送ることも出来なくて、人目を気にして早足になる。
     普段なら見られて困るものは部屋にないし、いない間にお兄ちゃんの部屋に入ることだってある。
     何か用があって覗いた先に知り合いの名前が書かれた封筒があれば、親切心から渡しておこうと……お兄ちゃんならやる!
     エレベーターが動いているのも今日は遅く感じる。
     やっと家に着いて、声をあげた。
     「お兄ちゃんは?!」
     「旬なら仕事だって出かけたわよ」
     遅かったか……いや、まだゲートに直で向かった可能性がある。
     洗面所で手を洗い、残りのアイスは冷凍庫に投げるように入れる。
     視界の端でお母さんが呆れた顔をしていたが荷物として放り出さないだけマシだと思って欲しい。
     慌ただしく部屋に戻って祈る気持ちでお兄ちゃんに電話する。
     出ないでくれたらゲートに直!
     出ないで……出ないで……と電話しているのに矛盾した願いは叶わなかった。
     『はい……』
     「お兄ちゃん手紙は?!」
     出た瞬間に叫んでしまった。
     少し間があってから、何でもなさそうな声が答える。
     『今、諸菱くんに渡した』
     これだから仕事の出来る男は行動が素早い。
     「終わった……」
     『なんだお前、大丈夫か?』
     大丈夫ではない。
     だけど経緯を本人が近くにいるであろうお兄ちゃんに話す気力もなくて通話を終えた。
     アイスも落として駄目にしたし、ふて寝を決め込むことにした。


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