『なんだその頭は!』
『気持ち悪い……』
『えっそれで地毛?』
『う、ウチでカット……かい?』
『あのお客さん担当するのはちょっと……』
『なにあの髪……』
『ははっ!オレが美容師の代わりにその髪切り落としてやろうかぁ?』
――うるせぇうるせぇうるせぇ!そんなに触りたくねぇならテメェで切ってやる!
桜は大して切れ味が良いわけでもないただの鋏を手に、自分の髪を乱雑に掴んでぐっと力を込めた。
白い髪がはらはら散るのを虚しい気持ちで眺めたあの日から数ヶ月。桜は美容院にも床屋にも行かず、あの時の鋏のまま自身で髪を切り続けた。誰も自分を見やしない。見たところで髪や目の色に口元を引き攣らせるだけ。それならば素人の自分でどう切ろうと周りの目は変わらないだろう。
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