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    kk_69848

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    kk_69848

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    蔵種、腐
    いつも読んで頂いてありがとうございます。
    first kissシリーズ第3部(最終章)です。
    第3部は、全3話+エピローグという構成になっています(プロローグはないのにエピローグはある謎…)

    ※2〜3話は辛い内容です※
    ※1話は2〜3話の前振りとしてイチャイチャしてます※
    ※最後はハッピーエンドです※

    no title1(上)「よぉ修二。合コンしようや合コン」
     2限が終わって食堂へ向かう途中、悪友に声を掛けられた。こいつは高校の同級生。インカレやっとるからか、別の大学に進学したはずやのにしょっちゅう会う(この場合のインカレは、複数の大学にまたがるサークルの意)。
    「合コンなんて行かへんて。俺、彼氏おるし」
    「彼氏? 彼女やのうて?」
    「せやで。めっちゃイケメンの彼氏☆」
    「ほんまぁ? ほな写真見せてや」
    「ええで。これとかめっちゃイケメンやろ」
     俺はスマホで、最近撮った写真の中でも特に写りのいい写真を表示した。
    「うわっ、ごっついイケメンやん。俺こいつやったら抱けるわ」
    「やらへんて」
     写真のノスケは、見慣れた俺でも惚れ惚れしてまうぐらいの男前で──と同時に、俺の隣ではにかんどる姿はえらい可愛らしくて。こんな写真を見たら、誰だって胸がキュンとして惚れてまうかもしれへんな。まぁ誰にもやらへんし、ましてや抱かせる訳ないけど。俺かてまだ抱いたことあらへんのに。
    「ほな、その彼氏と別れたら合コン来てや」
    「別れへんて」
     悪友はそのまま近くにおった女の子をナンパし始めて、相変わらずのバイタリティのすごさに苦笑するしかなかった。

     春、選抜の大会も終わった翌週。いよいよ高校3年生になるノスケの高校と、舞子坂高校テニス部との練習試合が行われることになった。ノスケと付き合い始めて丸2年、ようやく念願叶ったわ。いつもノスケの部活をしとるとこ見に行きたいって言うても、恥ずかしいからって断られてばっかりやったけど。自分の母校の応援に行くんやったら、ノスケに止められる筋合いはないからな。
     俺ももう大学3回生になるから、今の高校生とはあんまり付き合いはないけど。母校の後輩らが頑張っとるのは嬉しいし、ええ刺激になるわ。
     そうして迎えた練習試合の日。俺は舞子坂ベンチからノスケに合図を送ったけども、ノスケは会釈を返してくるだけやった。なんや、つまらん奴め。まぁノスケの学校の奴らからしたら、俺とノスケはW杯で知り合うたただの先輩と後輩やから、そんなんが妥当な反応なんやろうけど。ノスケは今はまた部長をやっとって、部員達からは彼女も作らんとストイックにテニスをしとる部長、って思われとるらしい。彼女がおらんのはほんまやけど、禁欲的では全くないんやけどな。
     春休みやからか、舞子坂ベンチの方には他にもギャラリーが集まっとって。この春卒業した奴ら(つまり俺が高3の時の1年)やら、逆に俺の先輩もおって。懐かしい顔と一緒にやんややんやと観戦出来て、ほんまに楽しかったわ。

     練習試合の後。一旦俺達はそれぞれの高校の奴らとファミレスに行ってから、その後こっそり二人で喫茶店で落ち合った。まぁこういう隠れたお付き合いっちゅうのも、ロマンチックで悪くはない。
     俺が店員さんにコーヒーを頼むと、ファミレスで夕飯を食べてきたはずのノスケは、しっかりと1人前のサンドイッチを注文しとった。男子高校生の食欲、恐ろしいわ。
    「ほんでな。今日来てへんかった先輩らにも声掛けて、一緒に泊まりでテニスしに行こかって話になったんやって」
    「そんな話しとったん? ちゃんと試合見とった?」
    「見とったで、ノスケの活躍」
    「ほんまぁ? ……どこ泊まるん?」
    「軽井沢。先輩んちの別荘があるんやって」
    「軽井沢でテニス? シャレとるなぁ」
    「ええやろ」
    「ええなぁ」
    「ノスケも行く?」
    「え、行ってもええん? 俺、舞子坂ちゃうけど」
    「聞いてみるわ」
     スマホで先輩にメッセージを送ると、直ぐにOKとだけ返事が返ってきた。
    「ええって」
    「わ、ほんま? どないしよ、手土産とか何がええかな」
    「酒やな」
    「酒かぁ」
     俺はいくつかアドバイスをしたんやけど、さすがに未成年が酒持ってきたらあかんやろって話になって。俺が酒(とノスケ用ジュース)、ノスケがツマミを差し入れすることになった。
     それはええんやけど、やけにノスケの声が上擦ってはしゃいどるのが気に掛かる。男子高校生の欲求は、どうやら食欲だけでは収まらへんようで。俺は一つ釘を刺しておくことにした。
    「言うとくけど、別荘ってただの家やからな。みんなで雑魚寝とかやし、ホテルとはちゃうからヤれへんで」
    「そんなつもりちゃうて」
     ノスケは慌てて否定をすると、俺の方へ身を乗り出して、声を潜めて言うた。
    「せやから別荘に泊めてもろた次の日は、二人でホテルに泊まるとかはあかん? 親には、別荘に2泊させてもらうって言うとくから」
    「……悪いやっちゃな」
     清廉潔白、と周りからは言われとるらしい男からの、欲望丸出しの可愛いお誘い。それをばっさり断れる程、俺も落ち着いていられる年齢でもなかった。
     俺はスマホで軽井沢までのルートを検索すると、初めての外泊デートに相応しい場所を探した。
    「どこ泊まる? 観光したいとこある?」
    「長野やったら蕎麦食べたいなぁ」
     あかん、こいつ食欲と性欲しかない。
    「諏訪湖とかどうや? 遊覧船とかあるみたいやし」
    「船か……」
    「あかん?」
    「俺、船酔いするかも」
    「船酔い? 情けないやっちゃなー」
    「飛行機乗られへん奴に言われたないけど」
    「それとこれとは話がちゃうやん」
    「一緒やて」
     その後、あんまり話はまとまらんかったけど、宿だけは即行で決めて予約した。店を出てから、ほんまはキスしたかったけど止まらんくなると困るから、物陰でハグだけしてそれぞれ帰路についた。初めての外泊デート、これは気合い入れていかなあかんかも。俺はバイト先に頼んで、デートの翌日のシフトは遅い時間にしてもろた。
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