紡ぐ軌跡よ永遠となれ ゆるい意識の波がゆっくりと引き起こされ、目が覚めた。
カーテンから漏れ出た光が心地よい朝を告げている。
一つ伸びをしてリビングへ向かうと、軽やかな鼻歌が聞こえてきた。
「おはよう、浮奇」
「ふーちゃん、おはよう」
「紅茶?」
「いや、コーヒーを頼む」
「ふふ、了解」
三年付き合った恋人、浮奇ヴィオレタと婚約をしたのが数週間前。
お互いの仕事の様子を見つつ、新居や入籍準備など自分たちのペースで進めている。
今日は浮奇の親族と初めて会う日だった。
浮奇は生まれてすぐに両親を事故で亡くし、遠い親戚に引き取られた。山と川に囲まれた小さな田舎で高校までを過ごしたが、集落としての同調、協調性を重んじる人間関係にうまく馴染めず、高校卒業と同時に都会へと一人赴いた。
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