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    しろ🐾

    @shiro222lux_noc

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    ベッター:https://privatter.net/u/shiro222lux_noc
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    🐑🔮「待て……!こ、ここで開けるのか?」「俺も🐑ちゃんのやつ食べたいんだけど!」

    ・お弁当を交換している二人の続き
    ・高校生パロ(日本の学校)
    ・バレンタインの話

    #PsyBorg

    明日は、水曜日(二月) コートを畳んでロッカーに入れていると、後ろから大きな声で名前を呼ばれた。
    「いた!ファルガー聞いてよ!浮奇マジでぶりっこなんだよ」
    「は?」
     振り向くと、アルバーンと浮奇が並んでいた。それも、肩が当たるくらいの距離で横並びに立っていて、随分と、近い。
     一年の頃からの友人と、二年からの友人が一緒に登校しているのをみると未だに不思議な気持ちになる。アルバーンを浮奇に紹介してすぐの頃は、お互いに探り合いながらそっと言葉を交わす感じだったのに、最近は俺よりも遠慮無く言葉を交わすようになっている気がする。……良い気分なのか、良くない気分なのかはよくわからない。
    「今そこで先輩に呼び止められたんだけどさ、すっごい綺麗な声の人で。チョコ渡してもいい?って」
     チョコ、という言葉にギクリと胃を掴まれたみたいになるが、顔には出さないようにする。
    「へぇ」
    「そしたら浮奇さぁ、この状態でぇ」
     この状態、とアルバーンは自分のロッカーを開けながら浮奇を指さす。
     寒がりの浮奇は紺のコートを着ていて、頭は半分くらい、二重に巻いた分厚いマフラーの中に埋もれている。
    「上目遣いとかしてさぁ」
     アルバーンの声を聞きながら、つい、そのまま浮奇のもこもことした姿を眺めてしまう。
     最近、こうして彼を見ていると湧き上がってくる気持ちの正体に気がつきはじめていて……少し困ってもいる。
     アルバーンを鬱陶しそうに横目で見ていた浮奇が、俺の目線に気付いて、さらに鼻先をマフラーに埋めた。……なんだその仕草。
    「おはよう浮奇」
    「おはよ、ふぅふぅちゃん」
     寒いからか、浮奇は鼻も頬も少し赤くなっている。あ、と俺がつけている赤色のマフラーに目がいくが、浮奇が何か言う前にアルバーンの声が割り込んできた。
    「ねぇ、聞いてる?」
    「……うっるさいなぁ。じゃあどうすれば良かったんだよ」
     浮奇は、一気に不機嫌そうな顔になって、割り込んできたアルバーンを睨み付ける。
    「ありがとうございます……って消え入りそうな声で手ぇ出しててさ」
    「ちょっと人目多いんで今はやめてもらえます?とか言えないでしょ、先輩に」
    「それにしたってさぁ」
    「うるさい黙れ」
     普段の柔らかな物言いと違った、低く鋭い言い方に笑いそうになりながらも、一応は仲裁にはいることにした。やっぱり、二人の仲が良いのは嬉しいのかもしれない。
    「あーほら、二人とも、教室行くぞ。浮奇?靴替えてないぞ」
    「あー……うん」
     鞄を持ったままじっと立っている浮奇を促すと、彼はゆっくりと自分のロッカーまでいって、しばらく扉を見つめていた。
    「……どうした?」
    「浮奇ー?ロッカー開かないの?」
    「いや……」
     俺とアルバーンが背後に来ると、浮奇はため息を吐いてから諦めたようにロッカーを開けた。
    「うわっ」
    「おぉ……」
     そこには、靴が押しつぶされそうなくらいの量の、カラフルな袋や箱が入っていた。
    「すっげぇー……マンガみたい」
    「すごいな……」
     俺たちの感嘆をよそに、浮奇はどうにか箱を避けて靴を取り出すと、そのうちのいくつかを鞄にいれてから、外靴を空いたスペースに突っ込んだ。
    「他のは教室に持っていかないの?」
    「今日、袋忘れた……あとで考える」
    「はぁー……すごいね、浮奇」
     モテるんだねぇ、とアルバーンは少し羨ましそうに言いながら歩き出す。
    「でも考えてみたら、王子様みたいな顔してるもんね」
     ちょっと前髪が長すぎるけど、とアルバーンが付け足すのを、浮奇が鼻で笑う。
    「そうだよ。崇めて称えてくれていいよ。視線も贈り物も、一年中受付中だよ」
    「あはは!本当に思ってる?」
     しばらくの間そんな話をしながら三人で固まって階段を上って、廊下を進む。
     ……そうか。こういうとき、浮奇は、モテるのか。去年は一緒のクラスではなかったし、知り合いでもなかったから、全く知らなかった。
    「……なに」
    「あ、いや」
     気がつくと、アルバーンと別れてからも、じっと浮奇の顔を見てしまっていて、怪訝な顔をされてしまった。
    「なんでもない」
    「……教室はいろ」
     週明け、二月十四日の教室は、心持ちいつもよりも騒がしい気がした。

     いや、実際騒がしい。休み時間の度に、人の出入りがいつもよりも忙しない。
     浮奇も何度か席で声をかけられていて、大小色とりどりのお菓子を手渡しされていた。そのうちの数人とは交換もしていて、やっぱり浮奇も作るか買うかして用意をしているのかと、それを眺めていた。
     結構な人数になってきたグループチャットでも、チョコを貰えただの、渡しただの、頻繁にメッセージが入ってくる。
    「……なんというか、」
     思うことがあるから、余計に気になるんだろうか。
    「今年はやけに目につくな」
    「チョコが?」
    「去年は違ったの?」
     テスト明けのような、浮き足だった空気に感化されて、いつものように本を読む気になれない。昼食を食べ終わっても、頬杖をついて周りを見ていると、話をしにきていたアルバーンとサニーが俺の呟きを拾う。
     浮奇は今はいつもの席に座って鞄の中を漁っている。朝の分から随分と増えているので、可愛いラッピングの袋や箱が鞄から溢れそうになっていて、物が探しにくそうだった。
     何を探しているんだろうか、と勝手な期待が沸いてくるのを、喉のあたりに力を入れて押さえ込む。
    「去年はもっと、こう……微笑ましいなぁって気持ちで遠くから見ていた感じがする」
    「上から目線じゃん」
    「実際、上だしな」
     ふとサニーが疑問を含んだ目でこっちを見てくるので「言ってなかったか?」と眉を上げてしまった。もう知っている人も結構いると思うが、わざわざ話題にあげるようなことでもないと思っていたから、彼には言う機会が無かったのかもしれない。
    「二年遅れて入ってきてるんだよ、俺」
     生身ではない、薄い鋼鉄で出来た手を持ち上げてグーパーと動かすと、サニーは納得したような顔をした。
    「それは……大変だったね」
     失った手脚を義肢にするのはそう珍しくないが、両手脚がそうなっている人はあまり見かけない。サニーはそれを思ってか、呟いたあとは黙ってしまった。
    「ずっと前のことだし。問題なく動くようになったから別に気にしてない。良い時代だよな」
    「時々年寄りっぽい言い方するよねぇ、ファルガーって」
     アルバーンがまた会話に参加するので、ありがたくそれに乗っかり、ふざけて返す。
    「敬ってくれてもいいんだぞ」
    「朝の浮奇と同じようなこといってんじゃん。何この二人」
     つついてくる上履きを軽く蹴り返す。浮奇は捜し物は諦めたのか、上の方にあった小さめの箱を一つ手に取ると、茶色い包装紙を剥がし始めた。サニーが身を乗り出して浮奇の鞄を覗き込む。
    「今年もすごい量だね、浮奇」
    「うん……もう教科書が入らない。どうやって持って帰ったらいいのかわかんないんだけど。去年はどうしたっけ」
    「貰った物は、何日かに分けて持って帰ってたんじゃなかった?……ねぇ、それって手作り?」
    「いや、市販のやつ。サニー、食べる?」
    「いるぅ」
    「あ、俺も!俺も欲しい頂戴!」
    「ふぅふぅちゃんは?」
     急に浮奇と目が合ってしまい、咄嗟に手のひらを見せてしまった。
    「いや……大丈夫」
    「そう?」
     差し出された平たいチョコレートが遠のいて、ぺりぺりと浮奇の手で包みが剥かれていく。
    「ファルガーは甘いもの食べないもんね」
    「そうなの?俺結構好きかも。これ美味しい」
    「サニーは何が好き?」
    「くれるの、アルバーン?」
    「えっ、欲しいの?俺から?」
     二人の会話をぼんやりと聞きながら、目線は浮奇の手元に留まっていた。露わになった四角いチョコレートは、色がそんなに濃くない。ミルクチョコなんだろう。包装を全部とって、指で角を摘まむと、浮奇は口許まで持ち上げて――口には入れずに、ちょっとだけ笑った。
    「ふぅふぅちゃん、見過ぎ」
    「ぇあ?」
     目線を少しあげると、眉を下げて困ったような顔で浮奇が笑っていた。
    「なに、やっぱり欲しいの?」
     剥き出しになったチョコレートを差し出されて、慌てて首を振る。
     いや、欲しいと言えば欲しい。けど、そうじゃない。

     外も内も、ざわざわとしたまま一日の授業が終わってしまった。すれ違う顔見知りと挨拶をしながら玄関ホールに向かう。お洒落な字体でロゴが入った箱や紙袋を持っている人が、どうしても目についてしまって、ロッカーにつく頃には目線がすっかり下がってしまった。
     バレンタイン・デー。
     この特別な日に、彼から貰えたりはしないだろうか、と思わないでもなかった。
     今日が水曜だったら、いつもの弁当と一緒に貰えていたんだろうか。浅ましい考えを抱えたまま足を進める。浅ましいとはわかっているのに、今の自分が落胆していることもわかっていた。
     いや、そもそも、貰えるかもしれない、という他人へ期待を勝手に抱いているのが間違っているのであって、
    「……あっ」
     そこまで考えてから、思い当たる。
     ロッカーの前で少しの間固まってしまってから、急いで靴を履き替えた。

    「嘘だろう……」
     思いついたはいいものの、動き出すのが遅すぎたらしい。
     いつものスーパーに駆け込んでみたものの、最初に寄ったコンビニと同じ結果で、思わず手に取った商品を持ったまま項垂れた。
     イベント当日の夕方になってしまったからか、どこに行ってもバレンタイン限定の商品は売り切れているか、値引きシールが貼られはじめていた。別の店に行けば、例えばショーウィンドーに綺麗に見えるように箱を開けて展示されているようなところなら、まだあるのかもしれないが、今から家に戻って自転車で駅に行くとなると、呼び出して渡しても平気な時間に帰ってこられるのかがわからない。
     そもそも、そんな売られ方をしている食べ物の相場の想像がつかない。
    「くっそ……」
     どうする。バーコードの上に値引きシールが貼られた箱を睨みながら必死で考えた。

     メッセージの返事が来てから、十分くらいで浮奇は公園まで来てくれた。
     来るだろうと思っていた方向から、似た背格好の人物が歩いてくる。まさに『誰そ彼は』だなと思いつつ、電灯の下で手をあげてみた。浮奇らしき人物がこっちに気付いて早足で近づいてくるのを数歩踏み出して迎える。
     浮奇は朝と同じような格好をしていたけれども、すっかりと日が暮れてしまったからか、朝よりも吐く息が白い気がする。
    「悪いな、呼び出して」
    「全然平気。どうしたの?」
    「う……」
     ここから本番だ。ここからが本番なのに、ここから先どうするか、何を言うかを全く考えていなくて、言葉に詰まる。
     こういうとき、普段大量にインプットしている筈のキャッチーな台詞や格好良いフレーズは、一体どこに行っているんだ?
    「ふぅふぅちゃん?」
     じっと浮奇が見上げてくる。急いできてくれたのか、よく見ると髪が少し乱れていて、マフラーは一度巻き付けただけになっている。
     手招きをすると、浮奇がもう一歩踏み出して近づいてきてくれるので、長く垂れているマフラーを持ち、バランスを整えてからいつものように二重にまき直してやる。
    「……」
     その間、浮奇はじっと、俺が話し始めるのを待っている。心なしか、心配そうな顔つきになってきて、いい加減なにか言わないと、何かあったのかと思われそうだった。
    「えっと……悪い、何かあったわけじゃなくて……改めて呼び出してまですることかって思われるかもしれないけど……っていうか、そもそも俺が動くのが遅かったからこんなことになってしまったというだけの話なんだが……あー、いや……」
    「ふぅふぅちゃん……?」
     いよいよ浮奇が眉をひそめるので、説明するのを諦めて、肩にかけていた鞄から、薄いピンクの箱を取り出した。
    「これを、浮奇に渡したくて」
     差し出した箱を見て、浮奇は目を丸くしている。
    「贈り物は、年中受付中なんだよな?」
    「……」
     何か反応が欲しくて、そうつけ加えるものの、まだ浮奇は動かない。
     余計なことを言ったか?やっぱり、一目で百円均一の箱だとバレるものなんだろうか。それとも、どうにか格好がつくようにと祈りながらくっつけた紫の花やリボンやらが余計だったか?逆にチープな見た目になっているのかもしれない。
     室内で見たときはまだマシだと思ったのに、外灯の下だとまた印象が違って、もうよくわからなくなってくる。
    「……悪い、あんまり綺麗にできてなくて。ちょっと諸事情でそのまま渡したくなくって……あ、中身は手作りじゃない。市販の物だから安心してくれ」
     ――いや、待てよ、そもそも俺から受け取りたくない可能性だってあるだろう。しまった、声のかけ方がちがったかもしれない、待て、冷静になれ。
     一旦退こうと、手をひっこめかけていると、浮奇が、くしゃりと顔を歪めて見上げてきた。
    「う……」
    「どうした!?」
    「うれしい……」
    「……は?」
    「こんなの……嬉しくて食べらんないよ……」
     そう続けた後、ぐすっ、と鼻を鳴らされて、膝から力が抜けそうだった。っていうか、抜けた。
    「わっ、ふぅふぅちゃん!?」
     地面を見ながら大きく息を吐き出して、ずっと浮奇の反応があるまで息を止めていたことに気がついた。

    「大丈夫?」
    「あぁ……」
     一旦落ち着こう、ベンチに座ろうと、どちらからともなく提案をし、薄暗い公園の中を少し歩いた。どの席も空いていたから、一番近いベンチに二人で並んで腰を下ろす。
     なんだか一気に疲れた。バレンタインって、こんなにも勇気がいるイベントなんだな。気軽に、欲しい、なんて思ってはいけないものだと痛感した。
    「お茶かなにか買ってこようか?」
    「いや、大丈夫だから……」
     とんでもなく格好悪く脱力している俺を気遣ったあと、浮奇は自分の鞄を膝に乗せる。姿勢を正していると、彼は鞄の中から何本もリボンを巻いたシルバーの缶を取り出した。からり、と乾いた音が聞こえる。細いリボンの端が、くるりと巻いていて、俺が作ったものよりもずっと格好良く見える。
    「俺も、ふぅふぅちゃんに作ってきてたんだけど」
     ちらりと遠慮がちな目がこっちを向いてからすぐに下に戻る。
    「前に、甘いものはあんまり好きじゃないって言ってたから……なんか、急に気になっちゃって……渡せなくなって、」
     一日持ち歩いちゃった、と浮奇の指が少しへしゃげたリボンを伸ばす。
    「……」
     浮奇の手の中のものから目が離せない。じわじわと、作ってくれていたこと、持ち歩いていたということが、頭の中に染みこんでくる。
     今日一日、友チョコと交換していたのはリボンやシールがついた透明な袋のものだったのに、俺のは缶に入れてくれたのか、ということも、思わずにはいられなかった。リボンの色も、
    「……赤と黒だ」
    「ふぅふぅちゃんの色でしょ?」
     同じ色の指で、リボンに触れると、浮奇が両手で缶を持ったまま、少しだけ俺の方に差し出した。
    「貰って良いのか?」
    「……受け取ってくれるなら」
    「じゃあ交換だな」
     浮奇のはもうさっき渡してしまったけど、と今はベンチに置かれている箱を指す。
     それで、ようやく浮奇が、いつものように眉を下げて笑った。
    「お弁当と同じだね」
    「俺たちらしくていいんじゃないか」
     答えてから、少しだけ後悔する。本当は、特別な意味を込めていると伝わるように渡さないといけないんじゃないのか?これだといつもの弁当交換の延長みたいだ。
    「へへ……嬉しいなぁ……写真撮ろうっと」
     ……まぁ、いいか。浮奇が嬉しそうにしているし。
     浮奇が自分の分を写真に収めている間に、手元の缶を少し傾ける。さっきの音からして、クッキーか何かが入っているんだろうか。
    「これ、開けていいか?」
    「どうぞ」
     紙のテープで留めてあったリボンを解いてから、蓋を開ける。そういえば、百円均一のラッピングコーナーにも、こういう缶が置いてあった気がする。
    「おー……すごいな、浮奇」
     中は、チョコレートだけじゃなくて、色んな形をしたクッキーと、絞り出した生クリームがそのまま固まったみたいな、白っぽいお菓子が入っていた。隙間を埋めるようにカラフルな金平糖が入っていて、それこそデパートのガラスケースに入って値札がついていてもおかしくない見た目だった。
    「これ、全部浮奇が作ったのか?」
    「金平糖以外は……あの、ごめん、本当にあんまり考えてなくて、俺が作れる物を作ったから全部甘くて、」
    「チョコレートもクッキーも甘いものなんだから、甘くていいんだ」
    「なにそれ」
     また浮奇が眉尻を下げて笑う。何か言いたそうにしていたけど、口を閉じてしまう。
    「どうした?」
    「えっと……クッキーは、色んな形があるから、楽しんで貰えると嬉しい」
     確かに、今見えているものだけでも、丸形、四角、星形と色々あった。
    「あぁ、ゆっくり味わうよ」
     一つ、星形のを手に取って持ち上げる。綺麗に型抜きがされていて、くっきりとした角が五つできている。これが手作りなのか。
    「本当に、すごいな……」
    「ありがとう」
     色と形に見惚れていると、「俺も開けようっと」と言う声が聞こえて我に返った。
    「待て……!」
     咄嗟に浮奇の腕を掴む。
    「こ……ここで開けるのか?」
    「俺もふぅふぅちゃんのやつ食べたいんだけど!」
    「い、一緒に食べなきゃだめか……」
     浮奇の腕を離さないでいると、今度は呆れた顔をされた。
    「お弁当のときと同じことしてるじゃん」
    「いや、だって……」
    「俺は俺、ふぅふぅちゃんはふぅふぅちゃんでしょ」
    「それはそうだけども」
     それにしたって、こんなすごいものを見せられたあとに、市販のトリュフとマカロンを並べただけのものを開けられるのは、やっぱりちょっといたたまれない。
    「これ、ほら、たくさんあるから今はこれを一緒に食べよう!な?」
     浮奇の腕を押さえたまま、まだ持っていたクッキーを自分の口に入れると、もう一つ丸いのを取り上げて、彼の口許に差し出す。
    「……」
    「……だめか?」
     浮奇はちょっと上目遣いに眉を寄せて、拗ねたような顔でこっちを睨んでいる。心なしか、口許に力が入っているからか頬が膨らんでるように見えてくる。
    「……ふぅふぅちゃん、ずるい」
     断れないじゃん、という声のあとで、クッキーをくわえに来た浮奇の唇が、指先に当たった。
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