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    kuzupi00

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    (再掲)

    遊郭パロディばじふゆ②

    ※史実の遊郭とは異なる設定や言い回しがあります。※原作の設定は全く考慮しておりません。完全にフィクションとしてお読みいただけるかたのみ、閲覧をお願いします。
    ※場地(26)×千冬(14) 年齢操作しています。

    #ばじふゆ
    bajifuyu

    小さな猫と、大きな愛を携えて。「場地ぃ。どこで油売ってたんだよ。遅ぇよ。」
    「悪ぃ。…なぁ、ここの裏の店ってなんなん?」
    「え。お前、女に興味ないってまさかそっちだから?」
    「は?そっちってなんだよ。」

    一虎と場地のやり取りに、その隣に居た女がにこりと笑みを浮かべ口を出す。

    「あれは陰間が居ります座敷でございます。…興味がおありなら店主を呼びましょう。」

    女は側に控えていた禿へ言付けるが、場地の相手をしていた女は面白くなさそうな顔をして禿が出ていく様子を眺めていた。
    一虎に先程のやり取りの答えを求め顔を向けると呆れたような声で応える。

    「さすがにわかんだろ。」
    「ここは女を扱う店だろ。なんで男だよ。」
    「場地はほんとわかってねぇな。昔から遊びの嗜みがある人間は女も男も上手に楽しむもんなんだよ。まぁ、俺は女が良いけどね。」

    そう言って女に酌を求めた。
    程なくしてやって来た店主は、また先程の愛想のいい笑みで場地に語りかける。

    「旦那さま、宜しければあちらで一番人気の者をこちらにお呼びしましょう。気に入れば、あちらの方でごゆるりとお寛ぎいただくこともできますよ。」
    「あのさ、なんか髪が黄色くて目が青いのが居るだろ。それ、呼べねぇの。」
    「ああ…あれはまだ仕込みの途中でして。大人しくしているよう言い付けておりましたが…外に出ておりましたかね。いやしかし、お目が高い。お気に召されたようでしたら、是非。」
    「仕込み…?」
    「あれは水揚げもまだの新入りでございます。こちらにあれは上げられませんが、あちらの店に部屋を用意しましょう。」

    店主はこちらへと部屋を出るよう促した。一虎に視線を向ければ行ってらっしゃいと手を振られる。
    廊下に出てからも、聞いてもないのに店主はぺらぺらと喋りつづけた。

    「近頃は遊郭も何かと厳しくなりまして。昔のようにやれ初会だ裏返しだとやっていては客も寄り付かない。私共も日々、あれやこれやと手を打たねばなりません。」

    店主は笑って続ける。

    「陰間茶屋は普通、芝居小屋のある辺りにありますでしょう。この遊郭の中でも男を扱う茶屋などうちが初めてでございますが、こんなところで座敷に女も男も呼べるとなると珍しい。これがなかなかに喜ばれまして。」

    確かに、今や夜鷹なんかも増え、昔のようにわざわざ遊郭で大金を払ってまで女遊びをするような人間も減ってきた。物珍しい商売をするこの店主は大層なやり手なのだろう。
    こじんまりとした入り口から裏の店に入る。
    ひんやりとした空気はこの街のなかでも異質な空間のように思えたが、それがまたいけないことをしているようで高揚感を高めるのかもしれない。

    「あれはまだ礼儀作法もきちんと出来ておりませんから、あちらの座敷に上げることが出来ず、ご足労願って申し訳ない。」

    座敷に上げる前から気に入れば、また指名やらなんやらふっかけられるかもしれない、といった商魂の逞しさだけは感じ取れる。
    店主の後を追って部屋に入れば、先程の子どもと同じ年頃のように見える着飾った少年が酒を持ってくる。

    「暫しお待ちください。すぐに支度をさせますので、それまでどれか別の者を呼びましょう。」

    「いや、いい。」

    静かに進められた酌を断って、暗に一人にしてくれと促すと、やり手の店主は少年を促し、すいと下がった。
    行灯の明かりだけの部屋はさっきの女たちが居た部屋と違い、いかにも目的はひとつだと言わんばかりの雰囲気だ。
    落ち着かない場地は、手酌のぬるい酒を煽った。

    「…失礼いたします。」

    先程、庭先で聞いたか細い声が再び聞こえ、そっと襖が開かれる。
    隙間から忍び込むように現れた少年は、襦袢の上から華やかな着物を羽織り、しかし髪は結い上げもせず、どこかちぐはぐな装いで、居心地悪そうにその場に膝を付いた。
    三つ指を揃え、深々と頭を下げ、ぎこちなく呟く。

    「千冬と、申します…。」
    「千冬…。」

    場地は確かめるようにその名を口のなかで転がす。不思議と舌に馴染む、心地好い響きだった。

    「千冬、こっち。そんな端っこじゃ寒ぃだろ。」

    火鉢を引き寄せ千冬を呼ぶと、遠慮がちににじり寄ってくる。茶屋の女のように強引に隣に座り込む事もないその仕草が、懐かない猫のようでふと頬が弛む。
    伸ばしかけなのか、長く下がった前髪は目元を隠し、その下で何も言葉を発しない千冬は緊張している様が伝わってきて可哀想だ。

    「…さっきの猫はどうした?」
    「あ…たぶん、座敷の前に、居ると思います…。」
    「連れてきて。」
    「え、座敷に…上げて良いんですか…?」

    場地が頷けば千冬はその途端、嬉しそうに襖に向かい、猫を抱き抱える。
    忠犬のように座敷の前に猫が居たことにも驚いたが、斜め後方から垣間見える、はにかんだ千冬の小さな唇の可愛らしさにも驚いた。

    「猫の名前は?」
    「チィ…。ご飯をあげてもちっとも大きくならないチビ助だから、チィ。」

    そう言う千冬もやせっぽちのチビ助であるので、どちらも ちぃ だなと場地は思った。
    自分にも触らせて欲しいと言えば、そっとチィを膝に乗せてくれる。
    先程と同様に、チィは逃げずに場地の膝で丸くなり、その滑らかな背中を撫でさせた。

    「すごい…。チィは俺と、チィをくれた姐さんにしか撫でさせてくれないのに…。」
    「姐さん?」
    「…ここで俺に良くしてくれた女の人です。大好きな人から貰った猫だけど、違う人の妾になるからチィは連れていけないと…身請けされてここを出て行きました。」

    寂しそうに伏せた睫毛が影を作る。

    「それじゃ、俺がチィの新しい友達だな!」

    わざとらしく明るく言えば、伏せた睫毛を瞬きこちらを向いた。初めて千冬の意思で視線を合わせてくれた瞳は、やはり猫のように大きく愛らしく、青水晶のように煌めいていた。

    「猫が、お好きですか?」
    「猫も好きだし、動物なら何でも好きだナ。」

    様々な動物の描かれた本の話をしてやれば、興味深そうに聞き入ってくれるので、次に来る時に持ってきてやると約束をした。
    千冬は嬉しそうに頷く。その丸く柔らかそうな頬に触れてみたいと思った矢先、襖の向こうから店主の声が響く。

    「旦那さま、失礼を致します。羽宮さまがそろそろお帰りになる、と。」

    ずいぶん長い時間、千冬と話していたようだ。
    あまりに早い時間の流れに、夢を見ていたような気持ちになる。千冬はあからさまに寂しそうな顔を見せ、場地は後ろ髪引かれる思いで座敷を後にした。

    一虎の居る座敷に戻れば、またニヤニヤと笑みを浮かべ、お楽しみのところ野暮で悪ぃなと冷やかされる。お楽しみも何も、千冬は水揚げもまだの子どもだ。触れることさえ叶わなかった右手を袖に隠し、早く帰り支度をしろと急かしてやった。



    その晩からの場地は、まるで別人になったかのように頭のなかをひとつの事に縛られ悩まされるようになった。
    寝ても覚めても千冬が気になる。
    もっと千冬と話したかった。もっと笑った顔が見たかった。あの丸い頬の曲線を、指でなぞってみたかった。
    陰間など自分とは縁の無い世界だと思っていたのに。

    次の休日の晩、約束をしたからと自分にしか効果の無い言い訳をぶら下げて、またも店を訪れた場地に、店主は相変わらずの愛想の良い笑みを惜しみ無く披露して、場地を裏の店の座敷に通し、千冬を呼んだ。

    「場地さま、ようこそ、おいで、くださいました。」

    畳に膝をつき三つ指を揃え、千冬はまだぎこちない、けれどしっかりとした挨拶をする。
    六日ぶりに見る千冬は、前と同じように襦袢に華やかな着物を羽織っていたが、今日は前髪を結い上げて、場地が気に入った瞳をよく見せてくれている。
    質素な簪で纏められた前髪の横から垂らされた、まだ短い後れ毛の隙間に手を差し入れ、今度は躊躇わず丸い頬をそっと撫でた。
    驚いたように場地の手を見る千冬も、また可愛らしい。
    チィも座敷に呼んで、千冬は場地が持参した本を嬉しそうに眺め、前よりもっと笑顔を見せた。

    場地はその笑顔がたまらなく好きで、六日置きに通いつめた。
    そのたび千冬はだんだんとそつなく挨拶が出来るようになっていく。
    初めて会った頃のような初々しさはそのままに、けれどどこか艶かしい色気を纏うようになっていた。
    千冬はどんな理由でこの遊郭に来たのだろう。訪ねる機会は沢山あるのに、結局のところ、場地は何も聞けなかった。
    千冬が自分から話さないのであれば無理に聞き出すような残酷なこともしたくない、自分といる時は笑って欲しいし辛くなるような時間を作りたくない、そういったいくつかの理由を並べ、結局は自分の仕事柄、後ろめたさが生み出す臆病風かも知れなかった。

    遊郭に向かう道中、通り掛かった小間物屋で千冬の眼によく似た石の付いた簪が目に止まったことがある。あの質素な簪よりもっと、あの目映い金糸のような髪に映える青色の石が細工に使われている。
    千冬に贈ろうか、と思って手を伸ばし、それから手に取る前に思い止まる。
    この簪で着飾る千冬はさぞ可愛かろう。しかし場地は千冬が綺麗になって男を誘う様を見たいわけではない。
    じっと見つめて溜め息をつき、自分は何がしたくて千冬の元に通うのだろうかと考えた。

    千冬のもとへ通った数が片手の指で足りなくなった頃、場地はふと店主の言葉を思い出す。

    「…場地さま?どうかなさいましたか?」
    「いや、ちょっと考え事してただけ。悪ぃ。」

    今日はチィに小さな鞠を買ってやり、土産と言って持参した。千冬はチィと鞠遊びに夢中になっていて、その無邪気な笑顔を眺め、場地は物思いに耽っていた。
    あのとき言っていた仕込みとは、客を取るための身体の準備のことを指しているのであろう。
    仕込むことと言えばそれなりの言葉遣いと行儀以外は、それしか無い。
    それであれば、教育を担う誰かが千冬の身体を暴いたのか。
    水揚げも、遊郭の通例であれば最初の相手は手練れた者が請け負うものであると聞いたことがある。これもまた知らぬ誰かに良いようにされてしまうのか。その先には、幾人もの男が千冬を抱く夜があるのだ。千冬は誰のものでもない。この場所で千冬自身を売るのだから、当然だった。
    その場地が知り得ぬ相手に対して、嫉妬と嫌悪を感じる。黙り込んでいる場地に向かって、それまでチィと遊んでいた千冬が、急にくちを開いた。

    「…俺には帰る故郷も、待つ家族もありません。場地さまがこうやって会いに来てくださる事だけが救いです。」
    「親に売られた訳じゃねぇのか。」
    「親が借金を残して死にました。そのカタに売られた先のお屋敷で、旦那さまに、その、乱暴されそうになって…奥さまが怒ってしまって…」
    「勝手な奴らだな。」
    「男の妾などとんでもないと、淫乱は陰間が似合うと…言っていました…。」

    どんどん声が小さくなる。初めて身の上の話を溢した千冬は、愛情に飢えた眼をしている。
    場地はその孤独な飢えを満たしてやりたいと思った。

    千冬の元へ通った数が両手の指で足りなくなったその日、いつもより一層、愛想の良い店主が場地を裏へ案内しながら嬉しそうに告げる。

    「お陰さまで先日、千冬の水揚げが無事に済みまして。もし場地さまが宜しければ、ではございますが、座敷にご用意をしております。」

    暗に床入りを仄めかされて、場地は言葉を返せなかった。
    千冬は水揚げのことなど何も言っていなかったのに、いつ、誰が。
    考えても仕方の無いことが頭を巡る。
    しかし、千冬の元に通ううちに、頬だけでなくその肌にもっと触れてみたいと思う気持ちは誤魔化しようの無い程には膨らんでいたのも、紛れもない事実だった。
    頼む、と場地が小さく告げ座敷に上がれば、店主は深い笑みを浮かべながら頷き、座敷の襖をそっと閉めた。



    いつもであれば、場地が座敷に入ってから千冬が遠慮がちに襖を開けて座敷に上がるのだが、今日は目の前の寝床の脇に、膝をつき三つ指を揃えた千冬が居た。
    その光景はいつもの千冬の姿なのにまるで別人のようで、ここがどんな場所で千冬が何者なのか、きちんと理解していた筈なのに、いまは理解できない。
    目の前の小さな可愛らしい千冬は、こんなにも焦がれているのに、場地のものではないのだ。
    その事実を突き付けられる。

    「場地さま、ようこそおいでくださいました。」

    そつなく挨拶をする千冬は、幼い顔に妖艶な艶を乗せている。それはいつもは無い唇の紅であったり、引けばすぐにほどけてしまいそうな帯であったりそういったもののせいかもしれない。

    「なぁ。千冬は俺に抱かれてぇの?」
    「…場地さまが望んでくださるなら、それが俺の望みです。」

    千冬がそう答えるのは当然の事だと解っている。場地は千冬を金で買う、千冬は買われる、そういう関係なのだから。
    けれど、その関係を場地は望んではいない。
    胸にちくりと針が刺さったような痛みを感じた。
    瞼を伏せ、顔に影を作る千冬の表情を見詰めながら膝を付いた場地がにじり寄れば、千冬は場地を見上げて、ぎこちなく笑みを浮かべる。
    その大きな瞳には、緊張と不安が揺れていた。

    「場地さま、じゃなくて圭介って呼んで。じゃなきゃ抱かねぇ。」
    「圭介…さま。」
    「そーじゃねぇ。」
    「…圭介、さん。」
    「んー。まあ、合格。」

    胸の痛みを隠し場地が八重歯を見せて笑顔を作ると、やっと安心したように千冬もいつもの笑顔を見せてくれた。

    千冬の綺麗な曲線を描く額に口付ける。簪をするりと抜き取り、柔らかく落ちる金糸の髪にも唇を寄せ、そのまま瞼にも、鼻先にも、頬にも、一つずつ口付けると千冬はくすぐったそうに肩を竦める。柔らかな唇を親指でなぞって、ゆるりと重ね合わせた。
    千冬の腰に場地が手を回すと、ぴくりと身体が強張る。

    「千冬、怖い?」
    「いいえ…。」

    襦袢の裾から指を滑り込ませ触れた千冬の太腿は、頬と同じく柔らかでしっとりと掌に馴染む。
    啄むような口付けを繰り返し、隙間から舌を絡め取り、表面を擦り合わせる。
    逃げる千冬の舌を追って、くちの端から唾液が溢れるのも構わず深く合わせた。
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