熾火ギルドメイン山脈の麓、奥深い森の中にロン・ベルクとノヴァの住まう工房がひっそりと佇んでいる。
辺りは初夏の清々しい空気に満ち溢れ、朝もやの中、木々の隙間を縫って清らかな光が幾筋も降り注いでいる。
新しく増築した工房に、朝早くから鉈の音が響いている。ロンに教えを受けたノヴァが炭を切る練習をしているのだった。
ノヴァにはさすがに自分で炭を焼く技術は無かったので、ランカークスの村外れに住まう老人から炭を買い求めていた。松を材料とした黒炭を大量に買い付け、文字通り朝から晩まで炭を切って修行している。
師曰く、炭の大きさで炉の温度を調節するため、炭を的確な大きさで均等に切る技術は、まともな剣を打つ為にどうしても必要不可欠な技なのだという。
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