『君の世界』最終話 オルステッドの視界が真っ白になり、ふわふわと身体が浮かんでいく。水の中から浮上するように、ゆっくりと、身体が上昇する。
鎧を着けているから水に浮かぶのはまずあり得ない。だからとても不思議な気分だった。
段々視界が明るくなってくる。鳥の囀りが聞こえる、風が鳴く声が聞こえる。オルステッドは誰に言われなくとも理解していた。もうすぐ自分は現実世界に帰るのだと。
世界のどこかにある、深い深い森の中。
青みを帯びた黒髪を腰まで伸ばし、青いローブに赤いマント、そして片手に杖を持った男が一人、歩いていた。
表情は虚ろで、どこに焦点を当てているのか分からない。そしてかつては美しかったであろうローブやマントもボロボロになり、顔は土気色に染まっていた。
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