久しぶりに、父が眠る霊園に行こうと思った。思い出す機会が段々と減っていることに気づいたからだ。ひと気のある場所へ行くのはまだ良くないとドクターは言っていたが、霊園の場所はここと同じような郊外にあったので許可が出た。念のため首元が隠れる上着とキャップを被り、晴れた日にエドは父の墓へと向かった。道中で供えるための花を買う。明るい気持ちにならざるをえないような、ぱきっとしたオレンジの花だった。父の好きな花はわからずじまいで終わったので、毎回その時いちばん目についた花を選ぶようにしている。花束を握りしめて、乗客もまばらな霊園行きのバスへ乗り込んだ。雲も少なく快晴の日だった。
エドは、バスの窓に映り込む自分がまた首元をいじっていることに気づいて、動きを止めた。癖に気づいてからは意識してやめようとは思ったものの、新たに体の一部になったこの金属の塊をまだ異物としてしか見ることができないでいたのだ。鍵穴を引っ掻くと、冷たいでこぼこが感覚として伝わる。開ける鍵はここにはない。
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