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    DAMEOTAKU__

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    本にしたくて書いてる最悪オメガバビッチングバドエンDエド

    「よく来たね」
     ドクターはいつも通り優しく、だからこそこれからの話の内容がより恐ろしいものに感じられた。きっとバース性になにか異常があったことは確かだ。だが本当に恐ろしいのは、真実の先にあるものは、もっとずたずたにエドの身を切り裂くものに違いなかった。エドはそれを感じ取っていたのだ。
     スツールに腰掛け、ドクターはゆっくりと話を進めていく。
    「血液検査で、君のバース値を調べさせてもらった。結論から言うと、君はオメガ性だ」
    「でも先生、ミドルスクールの時の検査では、」
    「ああ、記録を見た。十三歳の時の検査結果では君は確かにアルファ性だった。……目を疑ったよ。初めて聞く事例だ」
     そんなことありえるんですか、とエメラルダも詰め寄る。ドクターは、とりあえず説明を聞いてほしいと言った。
    「まず、君の不調の原因だが……私は最初に話を聞いたとき、君がオメガで、番を失った状態であると推測したんだ」
     それに関しては、エドには何のことだかさっぱりだ。番もいなければ、アルファとして診断され今まで生きてきたのだから、思い当たる節が一つもない。
    「君が教えてくれた症状、異臭症、頭痛、立ちくらみや目眩、肌荒れ……これらの症状は番を失ったオメガがパートナーとなっているアルファのフェロモンに長期間反応しなかったときの離脱症状なんだ。異臭症は、正確には嗅覚器の異常じゃなくて鋤鼻器の異常だ。鋤鼻器は、フェロモンをかぎ分ける感覚器のこと。これはオメガとアルファしか持たない」
    「だからベータはフェロモンに反応しない……ですよね」
    「ああ。君は、自分のフェロモンや他のアルファやオメガのフェロモンに反応していたんだ。大舞台でやたら体調を崩したのはそのためだろう。きっとアルファが大勢いたんだ。子供たちからも異臭がしないわけだ。まだバース性が発現していないからね」
     謎が一つ解けたのもつかの間、また新たな謎が襲ってくる。
    「でも先生、僕はオメガじゃない。番もいない」
    「そこなんだ。でも数値は君をオメガ性だと言った。きっと十三歳から現在までの間に何か変化があったんだ。バース性の検査を一生に二回する人なんて滅多にいないから、わからなかったんだ……」
     十三歳の時と今とで、変化しているものなんてほとんどだ。必死に記憶を辿るもエドには何も思い当たらない。
    「ホルモン療法の影響でバース値に変化が起こることはあるけど、性を変えるまでには到底至らないはずだ。何か思い出せないか? 大きな怪我や、病気をしたとか……」
    「ホルモン療法でバース値に変化が?私もピルを飲んでいるのだけど……」
    「オメガ特有のホルモンの話ですから、その点は大丈夫ですよ」
     ドクターとエメラルダの話に、エドは思わずといった形で口元を手にやり息を飲んだ。それはつまり「何かに気づいた」ときの動作であり、エドは自分が何かに気づいたことを態度で示してしまったことに気づいた。だがもう遅い。ドクターもエメラルダも、エドが何かに「気づいた」ことに気づいてしまった。
    「エド、心当たりが?」
    「……」
    「原因がわかれば治し方もわかるかもしれないのよ、話してエド」
    「…………」
     エドは半ば泣きそうになりながら、最適解を導き出そうと頭をひたすら回転させていた。優秀と言われたアルファの頭脳もこの状況では意味を成さない。話していいのか、死ぬまで抱えると決めたこれを。覆われた顔の下、ぽとりとある言葉がエドの制御下から離れていった。
    「薬の…………」
    「え?」
    「あの薬のせいだ…………」
    「それはどんな薬? エド君」
    「…………わからない…………」
    「わからないことないでしょう、エド」
     ドクターがエメラルダを落ち着かせる。最適解は見当たらない。
    「知らなかったんだ…………」
    「……どういうことだい? どういう効用の薬かわからず飲んでいたってことかい?」
    「知らなかった……そんなもの、飲んでたなんて……ただ、あの人が……あの人が、必要だって……いうから…………」
    「あの人? あの人って誰? ソイツがエドに薬を飲ませたのね?」
    「いえない……いえないんだ……ひみつにしろって、いわれたんだ……」
     様子がおかしいことに気づいたドクターは、エドの背中をあたたかな手でさすりながらゆっくりと語りかけた。
    「それは、話したくないことなのかい? だったら無理しなくていい。今日はもう終わろう」
    「…………先生、僕は…………飲んでいたんです。とある薬を……十三歳から……頻度は、最低月に一回。飲むときは、」
    「エド君」
    「あの人と、セックスするとき」
     言葉が手元を離れていく。自分の意識の下でコントロールしてきたもの、コントロールしてきたと思っていたものが、崩れていく。
    「あの人は、病気にならないためだって、言いました。僕はそれを信じました。僕が、悪かったんですか」
    「エド君、君は悪くない、悪くないよ」
     ぱたぱたと、ズボンやシャツの袖に向かって涙が降っていく。口呼吸で必死に酸素を吸いながら、エドはドクターの白衣を強く握りしめた。
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