たまには雨も
「ナナミン、起きて」
「ん…」
揺さぶられる振動で目を開くと、そこにはしょんぼりした恋人の顔があった。
「どうしました?」
「雨降ってる! 今日出かけらんねーじゃん」
「ああ…」
確かに外から激しく窓を叩く音がしている。この音からするとかなりの豪雨なのだろう。朝だと言うのに部屋は薄暗く、七海はその暗さに眠気が覚めずにうとうとしていた。
「別に、急ぎの買い物じゃありませんし」
「でも俺はナナミンとデートしたかったの!」
年下の恋人は可愛い事を言ってくれる。七海は愛しさに、ベッドに横になったまま手を伸ばして、膨れた彼の頬を撫でた。
「今日は一日部屋でデートしませんか?」
「…部屋デートって、どーすんの?」
興味をもってくれた悠仁にくすりと笑い、七海は自分の横をぽんぽんと手で叩いた。
「虎杖君、ここに来て」
その言葉にすぐさま悠仁はベッドに横になった。七海は彼の頭を胸に抱きしめる。
「せっかくなので二度寝しませんか?」
「ええー俺眠くない…」
「じゃあ、私の身体で遊びますか?」
「え、それってどういう…」
彼の腕を掴み、七海は自分の尻に触れるようにその手を後ろにもっていった。
「好きにしてくれて構いませんよ。どうですか?」
「します、部屋デート」
即答した彼が可笑しくて小さく笑うと、彼の唇に、ちゅ、と音を立ててキスをする。悠仁の左手は七海の尻を揉み始め、右手は目の前の胸に伸び、部屋着用のシャツの上からゆっくりと揉まれた。
「ん…虎杖君は、雨の日は嫌いですか?」
「あんま好きじゃねーな。だって今日みたいにデート台無しになるし」
「君は確かに太陽の下がとてもよく似合う」
そっと頬を撫でると、悠仁は少しだけ口元を緩めて笑ってくれた。
「ナナミンは、雨嫌いじゃねーの?」
「確かに外出時の雨はクソですが、こうして部屋でまったりしている時の雨は好きですよ」
「ふーん、そっか」
悠仁はそう言って、ぽすんと七海の胸に顔を埋めた。そしてしばらくそうやって静かにしている。尻は揉まれ続けているが。
「うん。なんか、雨の音聞きながらナナミンの心臓の音聞いてたら、すげー落ち着くかも」
彼はそう言ってにへ、と笑う。ひどく愛しさが増して、その頭を優しく胸に抱きしめて撫でた。
「たくさん甘えていいですよ。私は君の恋人ですから」
「…うん。ナナミンありがと」
「よしよし」
優しく頭を撫で、頭頂部にキスをする。まるで小さな子どもを相手にしているように思えて胸がきゅんとした。大変な運命を背負ってしまった彼を、今だけでも甘やかしてやりたい。
「んっ」
突然服の中に手が入ってきたかと思うと、生の尻をぎゅっと揉まれて思わず鼻にかかった声が漏れた。
「ちょ、虎杖君」
「ねえねえナナミン。どこまでナナミンの身体で遊んでいーの」
自分を見上げる悠仁は目をキラキラと輝かせていた。玩具を与えられた小さな子どものように純粋に、だがその瞳の奥にある雄のギラついた輝きはしっかりと七海に届いた。
「君の好きなだけ、いいですよ」
「やった!」
こうなれば全力で彼を甘やかしてあげよう。七海はシャツの裾を上に引き上げ、ぺろんと自分の胸を露わにした。
「どうぞお好きに、悠仁君」
「ナナミン大好き!」
嬉しそうに胸に顔を埋めた彼の頭を、七海は優しく撫でた。
けれど、その手は彼の頭を抱き寄せるようになり、甘ったるい声が窓を叩く激しい雨の音に混ざり始めたのはすぐだった。
2021/06/05