彼我彼岸 ●
「何やってるんだお前ッ!」
がつ、と火花が散るような衝撃。
なんとか倒れずに踏み留まったが、じんと痛む鼻から、歯とぶつかった唇から、血が、じわじわ、つぅっと、流れ始める。
そんな出血とは比にならないほど血だらけの死体が、少年十三の足元には転がっていた。喉を心臓をナイフで刺され裂かれ、見開かれた目が空を永遠に凝視している。
「……、」
滲む血をそのままに、十三は目の前の少年を上目に見上げた。歳上の、背が高い、このUGNチルドレンチームのリーダーだ。
「ッ……俺達の任務はあくまでも情報収集だったハズだ。交戦は避けるようにと」
『すみません』
スマホの読み上げ音声が無機質に響く。幼い見た目には不釣り合いな、デフォルトのままの成人男性声。
3011