サラリーマン、家を買う(恋人の膝に)「この案件は俺に任せてください。必ず成功させてみせますから」
その言葉に会議室が小さくざわめいた。
数年来で準備を進めてきたデカいプロジェクト。まず最初に口説くべき相手先は気難しく口の悪い頭でっかち、なにより遠方で手間も暇もかかる案件だ。だけど成功すればそれは会社にとって大きなプラスとなるだろう。
...それが給料や出世に反映されるかは別として。
正直誰も引き受けたがらない仕事だったが、雨宮蓮は自ら手を挙げた。
そして、自信満々に冒頭の言葉を吐いたのだ。
鬼のような形相の部長には目もくれず、つらつらと今後の展望を語りだす蓮に、僕は心の中で拍手をしていた。
ーーー
「それじゃ、よろしく頼むよ」
「はい」
きれいなお辞儀をして、会議室を去っていく蓮の背中を、机上のパソコンをたたみながら目で追う。
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