共感性嫉妬ようやくやってきた春。空気は暖かいし花も鮮やかに咲き始めた。
明智はその分子の一つ一つを刺し殺さん勢いで睨みつける。
革靴のつま先でアスファルトを蹴るようにして力強く踏み出すと、目的地も決まらないままにただひたすら歩いた。
大学の後にルブランの手伝いがあるというので、たまには迎えに行ってやるかと明智も大学が終わった後に四軒茶屋へと足を運んだ。
店のガラス扉からちらりと中を覗く。カウンターにいる蓮と、椅子に座ったどこぞの女子が楽しそうに笑っているのが見えた。
マスターはいないらしい。
その女子はテーブルに身を乗り出して蓮にあれこれと話しかけているようだ。うんうんと頷く蓮は口元に笑みを浮かべている程度。蓮は少し困ったように眉を下げているが、そんなこと気にしちゃいない。
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