ハロプラssマスターが消えて1ヶ月程が経った。ある日、まるで最初から存在しなかったかのように、消えていた。もちろん、事故や事件なども疑ったが、何か連絡が来ることもなく、時間は過ぎていった。
ふと、窓に目がいった。マスターの植えた金盞花の芽は未だ出ていない。これに水をやることが彼の日課だった。今では代わりに自分が水やりをしているが、これをするたびに奴の声が聞こえるような錯覚を起こす。しかし、その錯覚でさえ楽しみにしている自分がいることにもはや苦笑いをするしかない。
この体はマスターにしか認識されず、他の誰かと話すこともできない。つまり、マスターがいなければ事実上自分は天涯孤独の身となる。今はまだどこかで生きているという、そよ風でも吹けば消えてしまう火のような希望に縋りつつ生きている。我ながら大天才の名にそぐわないような事をしているような気もするが。もちろん探しに行こうとした。しかし、この大天才と言えどもやはり現実と向き合うことに恐れを感じているようだった。今日こそは、と思いドアノブに手を掛けようとして引き戻すことを何度繰り返したことか。
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