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    anst_0226

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    anst_0226

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    間違えて小道具のシャンパン(未成年が持つので本物なわけがない)飲んじゃった宙のお話です。
    書いちゃダメ期間なのに我慢できずに勢いで書いてます。




    ………………絶対シャンメリーです。

    #夏宙
    xiaZeus

    お酒の魔法「遅いなァ…」

    丸二日間に渡る新曲のMV撮影が終わり、荷物をまとめ終わった頃だった。
    センパイは少し書類があるからとそそくさと帰ってしまい、先に帰る準備を済ませたソラは、仲良くなったらしい撮影スタッフと話しに行ったきり姿が見えない。
    連絡を入れようにも、いつも通りスマホは自分が持っているので、一応置き手紙をして宙のリュックを肩にかけて楽屋を出ることにした。


    ____


    「お疲れ様でス。春川は居ますカ?」

    スタジオの重い扉を押して顔を覗かせる。
    まだ撤収中らしく、数人のスタッフが忙しそうにしていたので、夏目は声を張り上げた。

    「お疲れ様です!春川くん…居ないですよ〜」

    機材を抱えたままのスタッフが少し周りを見渡して答える。周りのスタッフも続いて奥の方を見て頷いた。
    どうしたものだろう、なんだか悪い予感がする。
    なんせ特に方向音痴ではないあの子が迷子になるとき……それは大抵、具合が悪くなった時だ。
    もしかするとどこかで倒れているかもしれない。

    「……失礼します、お疲れでしタ!」


    夏目は不安を覚えてスタジオを飛び出した。
    こういう勘は占わなくても当たってしまうから。





    ***





    「ソラ〜?どこに居るノ〜?」

    空いている楽屋を覗いてもトイレを覗いても、大道具部屋を覗いても返事がない。
    この暑さだ。流石に室内だと思っていたけれど、念のため外の休憩所まで探しに出たときだった。

    「ソラ〜?居ル〜?」

    「し、ししょ〜…」

    弱々しい小さな声に夏目の心臓が大きな音を立てる。
    駆け寄ってみれば、自販機の影に宙が蹲って俯いていた。

    「エッ、ソラ?!大丈夫?!」

    駆け寄って目を合わせた宙は、熱でも出てしまったのか首まで真っ赤で、いまいち焦点も合わない。先程まで元気に撮影していたのだ。自分が見ていないうちに何か見てしまったのだろうかと後悔の念が押し寄せる。

    「ソラ、変な色でも見ちゃったノ?それとも熱中症…」

    一緒にしゃがみ込んだ夏目に、くったりと身を寄せる宙の頭をよしよしと撫でてやりながら声をかける。

    「う〜…暑いけど…見たけろ……ちょっと、んん…違うな〜?変な色を見たのはあと、れす?」

    夏目の首元にすりすりと汗ばんだ頬を擦り寄せる宙の声は幾分か、というかすっかりご機嫌な声色で、おまけに少々呂律が怪しい。

    「………ソラ?ちょっとハーってしテ。」
    「はぁい?はぁ〜♪」

    呼気を確認するとやっぱりそうだ。
    薄らとだが宙からする筈の無いアルコールの香りがする。普通ならありえないし、宙が自ら酒を飲むとは思えないから、大方今日自分が持っていた小道具のシャンパンを間違えて口にしたのだろう。

    「ししょ〜?なんだか宙はハグがしたい気分れ……キスもしたいな〜?な〜?ししょ〜」

    これはスタジオのスタッフにも確認を入れ無くては。でも今はそれより、べったりと抱きついて来るこの愛しい子を可愛がってあげたい。
    連絡云々は後ですればいいだろう。

    「はいはイ、ぎゅ〜してあげるかラ、まずはお水も飲みなさイ」

    宙のリュックから水筒を取り出して手渡す。
    偉い偉いとご褒美のハグをして、鼻先に魔法のキスを落とす。外だからあんまり唇はお預けだったのだけれど、宙はそれが不満だったらしく物足りない唇をツンと尖らせる。

    「うぅ…口にして欲しいな〜……宙、もっとしたいれす!!ねぇねぇししょ〜…?」
    「あはハ、ソラは酔うトこうなるんだねェ」

    上目遣いでそんなこと言われてはボクだってつらい。笑って誤魔化しているけれど、正直なところ、ここが部屋じゃなかったら……という妄想に脳内を侵食され始めている。
    自分に言い聞かせるつもりで「ボクらはアイドルだから外でキスしちゃいけないんだヨ」と伝えるとソラはしょんぼりと肩を落とした。まろ眉がハの字になっていて、そんな顔すらもとっても可愛イ。

    「でもやっぱり嫌れす!ししょ〜とちゅーしないと宙は帰りま…せんっ」
    「うワッ!ちょっとソラ、いい子にしテ…?」
    「嫌ったら嫌れすっ!」

    ぎゅうっと抱きついてきたソラの体重にバランスを崩して尻餅を付いてしまったけど、それでもソラはひっついたままで、拗ねた小さな子供そのものだ。
    けれどワガママを言っている自覚はあるらしく、そのままじっと押し黙ってしまった。
    こうなるとソラはとっても頑固だ。
    ましてや酔っているのだから、下手なことを言って状況をややこしくしたくない。
    それにボクだってソラにお願いされると弱いのだ。

    「う〜ン……ソラの気持ちは分かったヨ。ボクも出来る事ならそうしたいと思ってル」

    だから、ソラがぱっと顔を上げた隙に視線を捕まえて、そのままとびきり甘い魔法をかける。


    「だからネ、"帰ったらキスもハグもその先だって、ボクの全てを何だってソラにあげる。約束だよ"」


    ソラの瞳の中で魔法がぱちぱち弾けて、肩口に頭が落ちてきた。
    どうやら呪文は成功したらしい。
    優しく跳ねる髪を撫でていると、むくりとまだ唇を尖らせたソラが起き上がった。

    「ししょ〜はずるいな〜?」
    「ソラの師匠だからネ。さ、とっとと帰ろうカ。沢山可愛がってあげないといけないからネ♪」

    二人分の荷物を持ってソラを立ち上がらせる。
    まだふらつきそうなのが心配で、肩を抱き寄せてやれば、途端にご機嫌な猫みたいに擦り寄ってくるのだから、ボクはなんだか少し騙された気分になった。
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