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    Mitsuko__mochi

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    Mitsuko__mochi

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    風情韻事2のペーパーの続きです
    慕情が猫化してますので注意

    むーにゃんとふぉんしん(ペーパーの続き) 私室にたどり着いて手を緩めれば、すかさず飛び降りていく。そして向かう先を見て、慌ててその小さい背中を捕まえた。
    「寝台を毛だらけにしたら、後でお前が嫌なんじゃないのか?」
     抱え上げて、開けた箪笥の中に座らせたらどこか不服そうである。いや、慕情が不服そうなのなんて、いつものことだが。
     ちょっと待ってろと頭を撫でて、外套を脱ぎ捨てていく。外から帰ったままで寛ごうとすれば、怒るのは慕情なのだ。 お前がいない間もきちんと言いつけを守っていたのだ。これみよがしに脱いだ服の皴をつうっと伸ばした。それをじいっと見つめて、何を考えているのかは分からないが大人しい。何枚か衣が重なった下の方から、着古した柔らかい布地のものを一枚引き抜いた。それを慕情と一緒に抱き上げる。ちょんとした手が、掴まるみたいに腕を押さえた。
    「まだ、戻らないのか? 戻れないのか?」
     尋ねるが、慕情は「にゃ」と短く答えるだけで、さっぱり分からなかった。



    「毛並みが滑らかなのは、肌と同じなんだな」
     あぐらの真ん中に鎮座した慕情は、大人しく撫でられている。奇妙なくらい大人しく。何か企んでるんじゃなかろうかと疑ってしまう。だけどもこのぽかぽか温かくて柔らかい背中の誘惑というのは堪らない。むしろ、撫でなければ失礼にあたるのではないかと思える心地よさだった。
     ぼうっと無心に慕情を撫でていると、うつらうつらと瞼が降りそうになる。せっかく戻ってきてくれたのに、顔も見れないままかとは思うが、まあいい。ごろんと横になって目を閉じようとした。
    「――ん、ふは、こら慕情」
     よじよじと小さな手足が腹の上を歩いて、それだけでも擽ったい。そう、腹の上にでも落ち着くのかと思ったのだが、眼前まで慕情は迫ってきた。寝かせるものかと言わんばかりに頬がむにむにと踏みつけられる。終いにはちろちろと舐めだして、擽ったい。元に戻る気もないくせに、一体何がしたいんだ。
     仕方なしとまた体を起こせば、慕情はすとんと俺の服の隙間に落ち着く。そのちょこんとした様は、普段とはかけ離れた愛らしさ。中身は慕情だとしても、この見た目では仕方ない。かわいいものはかわいい。
     思えば、動物に懐かれたことなんてこの長い人生で数えるほどだった。いまいち扱いは分からないが、もうちょっとなんというか、顔を埋めてみてもいいのだろうか。
     背中を上から下に撫でおろし、ふわふわ揺れるしっぽに構う。さっきすれ違いざまに小神官の言っていた「引っ張っちゃだめですよ!」を思い出して、そうっとさわさわ撫でてみる。すると、もっとしてと言わんばかりに擦り寄って、甘えてくるのだ。これ、ちゃんと中身は慕情なのだろうか。元に戻ったら記憶はあるのだろうか。
    「かわいいな、慕情」
    「……にゃ」
     べたりと甘えていた小さな体がピクっと跳ねた。じっとこちらを見上げてくるので、指先で頭の先をちょんちょんと撫でる。これまた小さな手が胸元をぺたぺたと触り始めて、ああこれは照れ隠しかとほくそ笑む。だって、当の慕情は殴りつけているつもりだろうから。
    「慕情」
     やんちゃな手も封じ込めるみたいに、がばり。もふっとした柔らかな感触が鼻先を擽って温かい。にゃあにゃあ、と抗議されるも知ったことじゃない。こんなかわいいことになっているお前が悪い。
     ぎゅうぎゅうすりすりと存分に頬ずりをして、こちょこちょと擽っていると、慕情はやがて声もあげなくなった。あれっと思うより早く、顎下にくらわされたのは頭突きである。そう、頭突き。
     目を開けば、そこには見慣れた、でもご無沙汰していた真っ白い素肌があった。
    「……戻った、のか?」
     しかし、おかしなものがひとつ、ふたつ。ゆらゆら、慕情の背後ではあるはずないものが未だ揺れ、頭の上には明らかに髪飾りではないものが。
    「ええと、これは?」
     つん、とその耳をつつくと慕情は黙ってすっかり俯いた。圧し掛かられたままで、俺は身動きが取れない。質問を変えよう。
    「なあ、服はどうしたんだ?」
    「謝憐のところに、忘れてきて……」
    「持ってきてくれるまで、待つつもりだったのか?」
    「そうだ。でも、お前に段々腹が立ってきて――」
    「戻り損ねたって?」
     ぐ、と言葉を詰まらせながら慕情は頷いた。「みっともないって笑えばいい」と消え入るような声で続ける。
    「……お前はまったく煽り上手だな。ひと月お預けをくらわして、こんな格好で現れるなんて」
     しっとりと熱い息を吐き出し、その尻尾も前もぴんと上を向いている。こちらを恨めしそうに睨む目だって、今にも蕩けてしまいそうなのだ。
     待ち構えている尻尾を撫でると、ぴくぴくと随分反応がいい。もっと撫でて、触ってと言わんばかり。ならば忘れてきたという服なんて置いておいて、ひと月ぶりの根競べといこう。
    「よし、お前がちゃんと起きていられるように――うん、まあ、善処するから」


    ……このあとめちゃくちゃ寸止めせっすすした。
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