風信はちょっと妬いてますのぼせてくたびれた慕情は、見る間に眠りについてしまった。俺はというと、反対にすっかり目が冴えてしまって仕方ない。慕情の頭を冷ましていた手巾を、もういいだろうと取り払う。月が明るいので、懐から書簡を取り出した。それをしばらく読み進め、慕情を眺めて、また書簡に目をやって、やっぱり慕情を見つめて。我ながら飽きないものだ。頃合いを見て衾をそろりとかけてやる。冷やし過ぎても風邪をひいてしまうだろうから。雲がかかったのか、あたりもほんのり暗くなった。書簡を閉じて、じゃあ俺も横になろうと思った時。
「……なんの用だ?」
『詫びと、ちょっとばかりの助言をと思ってね』
「一体なんの話だ」
思わずため息を吐くと、裴茗は軽やかに話し出した。
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