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    Mitsuko__mochi

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    POIPOI 56

    Mitsuko__mochi

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    キスの日、ちょっと続いた
    キャラ崩壊がひどいです。

    風信はちょっと妬いてますのぼせてくたびれた慕情は、見る間に眠りについてしまった。俺はというと、反対にすっかり目が冴えてしまって仕方ない。慕情の頭を冷ましていた手巾を、もういいだろうと取り払う。月が明るいので、懐から書簡を取り出した。それをしばらく読み進め、慕情を眺めて、また書簡に目をやって、やっぱり慕情を見つめて。我ながら飽きないものだ。頃合いを見て衾をそろりとかけてやる。冷やし過ぎても風邪をひいてしまうだろうから。雲がかかったのか、あたりもほんのり暗くなった。書簡を閉じて、じゃあ俺も横になろうと思った時。
    「……なんの用だ?」
    『詫びと、ちょっとばかりの助言をと思ってね』
    「一体なんの話だ」
     思わずため息を吐くと、裴茗は軽やかに話し出した。
    『まずは君の恋人に、うっかり酒を飲ませ過ぎたことを詫びさせてくれ』
     そういうことか、酔っていたのかと内心合点がいった。その反省の色も感じられない口調に苛立ちはするが、慕情とて自分の酒量くらい分かっているだろうに。
    『で、だが――南陽将軍、人にはそれぞれ得手不得手があるだろう。こと閨においては相手に合わせるのが務めというもの。特に君の恋人は、まったく初心で奥手で、可愛いくらい右も左も分かっていないと――』
    「ま、待て裴茗、誰があいつのことをそんな風に」
    『泥酔した君が言っていた』
     嫌な汗が背中を伝っていく。察したのか裴茗は、聞いていたのは私と傑卿くらいなものだ安心したまえと笑う。
    『まあ、要するにだ。多少の慣れが出てきたとしても、まだゆっくりじっくり味わうべき段階ということだ。彼は強がる性質だと言っていたのも君だが、ならば余計に優しくしてあげないと。実際、彼は君についていけてないようだ』
    「はぁ? ついていけないってそんな訳――」
     思わず声を荒げそうになるが、ここでまさか俺たちは清い関係だなんて、言えるだろうか。言ったら言ったで、今以上に面白がられること請け合いである。はあとかううんとか、適当な相槌しか出てこない。暫く能弁を垂れて満足したのか、裴茗は「健闘を祈る」と締めくくって神識を消した。祈られたところで、健闘する場は未だ設けられていないというのに。
     ぽつんと静寂が訪れると、ふつふつと苛立ちが湧いてくる。一体、どんな会話があって妙な誤解を生んでいるのだろうか。慕情の嫌がることなんて、していないのに。
     叩き起こして問い詰めたい衝動に駆られたが、この無防備な寝顔に何か言えるはずもなかった。握り拳が熱くなるばかり。
     振り切るようにごろんと横になって、一秒。今度は何かとまた体を起こした。
    「殿下、あなたまでどうしたんです」
    『……おや、ご機嫌斜めかい』
     いえ、まあ、と曖昧に返すが、殿下は殿下で機嫌がいいようだった。
    『遅くに悪いね、君たちがいつ頃休暇を取るつもりか、聞いておこうと思って』
    「……休暇? 何の話だかさっぱり――」
    『ええ?』
     おかしいなあ、と不思議そうにしているがこちらも不思議だ。どこから休暇の話など降って沸くのか。もしやと慕情に視線をやれば、丁度うっすら目を開けていた。けだるげに目元を手で拭いながら、むくりと起き上がる。
    「まだ寝ないのか」
    「ああ、今殿下から通霊が」
     おや慕情は寝ていたのかと、通霊の向こうで殿下がくすりと笑っていた。肩を抱き寄せるとされるがまま、頭を預けられる。
    『てっきり湖畔の宿でゆっくりしに行くものだと思っていたんだけど……余計なことを言ったかもしれない。すまないね』
    「いや、なんでそんな話に」
    『慕情に、泳ぎのコツを聞かれて、公務じゃないというものだから。まあ、うん、君たちが不在の時は私を頼ってくれればいいから。それが言いたかっただけなんだ』
     じゃあまた、邪魔したねと殿下はそそくさと神識を消した。泳ぎのコツだと? 沼の中でもバサバサ敵を斬りつけるし、なんなら躊躇なく川に飛び込むところだって見たことがある。一体どういうことなのか。湖畔の宿でゆっくりというのは、まあ悪くないとは思うが。
    「なあ、殿下に休暇がどうこう、聞かれたが」
    「――え」
     はっと慕情が顔を上げた。何やら目が覚めるような話題だったらしい。
    「妙な水鬼とか、何か変なことに巻き込まれてないな?」
    「ああ、ない。そうじゃ、ない」
     ごろりと、今度は慕情を腕に捕まえたまま寝そべった。此奴の考えていることなんて、やっぱり今も昔も分からない。まあ、それは仕方がないが。
    「俺ら二人が二、三日いなくとも問題ない」
    「まあ、それは、平気で二人共謹慎させるくらいだからな」
    「ぷ、ははは……違いない。決まりだな」
    「え、あ――んん」
     どこか浮き足立つ気持ちで、口づけをする。ゆっくりと舌先でその隙間をなぞり、優しくと言われたことを思い出してもう一度。まったく融通のきかないものだなぁと、下唇を丁寧に吸った。しばらくして唇を離し、熱っぽく息をするのを待ってまた塞ぐ。苦しそうに歪んだ顔に心がざわついて、もっと追い詰めたい。泳ぎがどうのこうのと謝憐が言っていたが、それより接吻の練習をすべきではないだろうか。いや、今のままでいてくれても構わないのだけれど、もっと優しくと言われても困ってしまうのだし。
     すべすべとした頬を撫でると、びっくりしたみたいに肩を震わせる。可笑しくて可笑しくて、音を立てて何度も頬に口づけた。抵抗するみたいに、ぐいっと胸元を押されてしまう。
    「ばか、この、恥ずかしげもなく……」
    「これくらいで、何が恥ずかしいって?」
     押し切って鼻先と額にも口づけをすれば、慕情は堪えられないとでも言いたげに顔を覆った。
    「お前まさか、酔ってるのか? 人をややこみたいに――」
    「酔ってたのはお前だろ。裴茗に余計なことを言ったな?」
     一言咎めようと手の甲をつつけば、気まずそうに目を見せる。
    「何か言われたのか」
    「もちろん。まるで俺が身勝手にお前を虐めているみたいな言われようだった」
     不満があるなら俺に直接言ってくれと耳を食みながら囁く。すると小さく首を振る慕情に「じゃあ誤解されるようなことは言うな」と頭を撫でた。そしてしつこいと怒られそうな口づけをまた。
    微かな唇の隙間で、いやじゃないかと聞いてみる。いやじゃないと、微かにだがはっきり、そう聞こえた。柔らかく舌をねじ込んで、俺はほくそ笑む。あの男が慕情の何を知っているというのだろう。優しくするばかりでは、仕方ないのだ。恋愛の神なんて、そうだいんちきに違いない。
     
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