太陽が西へ沈んでいき空が橙色に染まる頃、カランと軽やかなベルが人の出入りを知らせ開けた店内の中央には、スポットライトを浴びたグランドピアノが存在を放っていた。週末にはそのピアノを使った小さなコンサートが開催されるこのレストランは、浮奇のお気に入りの店の一つ。
「ここ、最近できたばっかりなんだけど雰囲気がいいし料理もワインも美味しくてお気に入りなんだ」
そう言ってファルガーとディナーに来た浮奇は、いつもは見ない好みの顔したウエイトレスが料理やらアルコールやらを運んでくれ上機嫌だった。
店内にゆったり流れるピアノの旋律と共に小さく鼻歌を歌う浮奇を真っ直ぐ捉えることができないファルガーは内心チクチクとした感覚に襲われながらも表情には出さず食事を進めた。
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