むかえにきてよ(準島) 2009.12.29発行 別れてほしいの。
彼女がそう切りだしたのは、式を一か月後に控えた日曜日だった。
別れるのは構わなかった。だが、式までもう間がない。友人や両親へはともかく職場の上司へはどう伝えようかと思案していると、訊いてもいないのに彼女が理由を話しだしていた。長い言いわけの要点をいえば、以前付きあっていた彼と再会し、よりを戻したということらしい。
慎吾が悪いわけじゃないの、そう言ったことをつらつらと続けていたが、そんなことは重要ではない。結婚に乗り気だったのは彼女の方だし、式の一か月前にこんなことを言いだす無責任な人間に未練もなにもない。何を言っても復縁などないだろうし、たとえあってもごめんだった。
とりあえず今一番気になるのは招待した面々への連絡とフォローで、彼女の気持ちはどうでもよかった。たとえ何らかの非が自分にあろうと、慮る理由が見つからない。怒っていい場面だろうとも思うが、彼女に掛ける時間のすべてが無駄に思えて、感情を動かすのが億劫だった。
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