義体の少女と瓦礫の竜今から少し先の未来……
日々目まぐるしく進歩する医療やロボット工学により、人類は義体による延命が可能となりました。
しかしその反面人口の増加や義体換装者による犯罪が増えていき…
政府はとうとう義体による延命を禁止としてしまったのです……。
そんな中ある一人の少女が死の淵から義体換装による延命を遂げました。彼女の両親はたとえそれが違法な事だとしても彼女に生きていてほしかったのです……。
ですがその事を知った義体換装取締り捜査官達は彼女を捕らえようとします…。
彼女の両親はなんとか我が子を守る為にと捜査官達の行く手を阻みます。
「逃げて!生き延びて!」
その両親の声を聞いた少女は必死に走りました…。
走って走って辿り着いた先は__
廃墟がひしめく今は寂れた無人の街でした。
そんな無人の街に辿り着いた少女は大きな瓦礫の塊を見つけます。
そっと近づくとそれは___
瓦礫でできた大きな竜でした。
『義体の少女と瓦礫の竜』
竜が少女の方へ向くとのそりのそりと少女へ近寄ってきます。
少女がその竜の恐ろしさに足を竦めていると……
竜は少女へすり寄ってきました。
そんなもの言わぬ竜に少女もまたその小さな体で抱きしめました。
少女も竜も一人ぼっち……寂しかったのです……。
行く当てのない少女はこの無人の街で竜と共に過ごす事にしました。
それから少し経った頃……。
捜査官達は彼女の居場所を探し当てます。
無人の街へ乗り込む捜査官達……
少女を見つけた彼らは少女を捕らえようと手を伸ばします…。
すると瓦礫の竜がそれを阻止する為にその大きな身体を使って捜査官達を追い払いました。
なす術のない捜査官達は撤退します。
少女は嬉しくて竜を思いっきり抱きしめてありがとうと言いました。
それからまた捜査官が何度も訪れますが、その度に竜は少女を庇う為に身を挺して…時には体の一部を犠牲にして少女を守り続けました。
……そしてとうとう竜は少女と同じくらいに小さくなってしまいました…。
少女は何度も他のところへ逃げるからもう守らなくていいよと竜に言います。
でも竜はその言葉を聞き入れませんでした。
たとえ辛く苦しくても少女と一緒に居たかったのです……。
そしてとうとう彼女を守る力がなくなってしまった竜は少女と共に追い詰められます。
竜はそれでも捜査官から少女を守ろうと前に出ました。
……すると
「もういいよ…。私…十分生きたから…」
少女は泣きながらそう言い竜を抱きしめます。
そんな少女に殺気立っていた竜は首を垂らし少女の方へ向きその小さくなった体をすり寄せました。
ただひたすらに……もの言えぬ竜は何かを伝えるかのように少女へ体をすり寄せます。
それに応えるように少女も小さな竜を抱きしめ続けます。
ですがそんな少女へ無情にも捜査官の手は伸ばされます。
捜査官が少女の腕を掴みました。
少女はこの先の事を思い目を固く閉じます。
固く目を閉ざす少女へ捜査官は口を開きこう言いました。
「私は……間違っていた……」
数年後……
少女は両親と共に人目のつかない静かな村で過ごしています。
そしてその隣には小さな竜の姿が………
完