「青木」
「……?」
「おい、あおき、そんなところで寝たら風邪引くぞ」
とんとん、と背中のあたりを軽く叩かれて俺は目を覚ました。
「んえ?」
覚ましたというか、うっすらと目を開けようとしただけだけれど。
「髪濡れたままだぞ、大丈夫か」
井田が何やら心配してくれているみたいだが、まぶたは意思に反して重たく、しっかりと目に蓋をしている。
「う~……んん……かだい、課題が……」
どうしても目が開かないので、もう開くのは諦めて閉じたまま井田の声がする方向に顔を向けて返事をする。
そうだった。今週から来週にかけては偶然課題がいくつも重なって、しかも提出日もほぼ同じ日程という地獄のような二週間なんだった。
「そんな状態じゃ出来ないだろ。今日は諦めて寝た方がいいんじゃないか」
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