【指輪がない】中央の国の元騎士団長カイン・ナイトレイはいつになく焦燥していた。
本人は特に意識していないかもしれない。
けれど周囲から見れば何か起きているのであろうということが容易に推測できる。
それほどに彼は焦っていた。
「カインや、カイン。そんなに慌ててどうしたのじゃ?」
「我らで手伝えることがあれば力になるぞ。」
「双子先生。いや、何でもないんだ。ありがたい申し出だけど気持ちだけ受け取っておくよ。」
その様子を耳ざとく聞きつけやってきた双子の提案をカインはやんわりと断る。
実際心配1割、興味9割といったところだ。
まだその辺りの判断はできる程度に、彼は焦っていた。
足が急ぐ。
「ねぇケルベロス。さっきから騎士様は何をしているんだろうね?同じところを行ったり来たり。」
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