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    KNever2tyo

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    KNever2tyo

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    ビスケットの妖精と白狼
    🧚ガララギや🐺ジャクがが出てくるお話。おおむね気分転換に書いたやつ。
    ジャラっぽさはないけど、ジャラと言い張る何かです。

    #かきかけ
    unfinished
    #ジャクラギ
    jackrabbits

    ビスケットの妖精と白狼

     最近、狼をよく見る。
     獣の王と形容したくなるほど大きな身体をした白い狼で、尻尾と耳の先だけが黒い。
     その狼には不思議な風格があった。群れることを良しとせず、いつも一匹でいる癖にか弱い草食獣や幼い子どもの動物を襲うことはなかったし、森を害そうとする人間に立ち向かうことすらあった。
     事実、森に住む動物たちは彼を『王』と定めたらしく、やんちゃなキツネもイタズラ好きなウサギも狼を目にすると、たちまち頭を垂れて大人しくなるのだ。
     その上、彼はひどく利口な性質らしく、森を無闇矢鱈と荒らしたり、ラギーたち妖精が住む集落を襲ったりもしなかった。
     することと言えば、満月を思わせる冷たい金色の瞳で妖精の集落を見つめること、それから、ラギーが仲間と離れてひとり森を歩いているとどこからともなく現れて見守ること。それぐらいだ。
     仲間の妖精たちは『何を考えているかわからない』『どうせ本性は残酷なのよ』と悪しざまに語っていたが、ラギーはそうは思わなかった。

     というのも、狼はラギーを助けてくれたことがあったのだ。

     陽気の良い春のある日、仲間と離れてひとり森でベリーを摘んでいた彼は、突然の雨に見舞われた。
     大慌てで枝ぶりの良い木陰に飛び込んで雨宿りをしたものの、ここから集落まではだいぶ距離がある。
     柔らかな新緑色の葉の下に立ち尽くして、空を見上げれば、分厚い灰色の雲に覆われていてちっとも止みそうになかった。
    「うわっ……最悪、濡れちまうじゃねぇか。くそっ、さっさと止んでくれねえかなー」
     悪態をつくも、雨あしは強くなる始末だ。このままでは濡れ鼠になりかねない。ラギーはぶるっと背筋を震わせた。

     彼が暮らす妖精の集落は、木や花に属する小柄な妖精たちが住まっている。カナリアか、大きくても野ウサギ程度の身の丈しかない仲間たちの中で、ラギーは異質な存在だった。
     背中に羽はなく、時折森に紛れ込む人間と同じぐらい図体がでかい。その上、耳は頭の上にピンと動物のように伸びていて……小柄な妖精たちと並ぶとまるで別種族が紛れ込んだようなちぐはぐさだ。
     だが、集落の妖精たちは、そのちぐはぐさも含めてラギーを受けれいていた。
     焼き菓子を思わせる色彩の髪にくすんだ空灰色の瞳、くるくる変わる表情を集落の誰もが愛していた。それに、銀糸の刺繍で飾られた白い衣装を着た彼の姿ときたら、少年らしい若々しさと見るものの心をざわめかせる可憐さで、誰もがラギーを見ると嬉しそうに顔を輝かせて、寄ってくるのだ。
     特に、少女のように若々しい『母』はラギーを何よりも慈しんでくれた。彼女は自分よりずっと大きな息子のためにせっせと大量の食事を作り、雨風をしのげるようラギー専用の家を用意してくれた。
     母は口癖のようにラギーに言い聞かせた。
    『あなたは特別な妖精。ビスケットみたいに甘くてもろくて大切な子だから、絶対に水に濡れてはいけないの』と。
     好奇心旺盛な彼のこと、じゃあ水に濡れたらどうなるんだ、とも思ったが、その度に母の心配そうな眼差しを思い出して思いとどまっていた。自分よりずっと大きな息子を何よりも慈しんでくれる母を悲しませたくなかったのだ。

     だから、雨の中立ち往生するはめになって、ラギーは心底途方に暮れた。
     この木から顔を出せばたちまち濡れ鼠になって母の言いつけに背いてしまう。かといって、ずっとここに居ては、母や仲間たちが心配する。
     どうしよう、と籠を握りしめ、顔を曇らせた、その時だった。
     緑と茶色、それから原色の花々といった鮮やかな色彩で構成された森に、ひときわ目立つ白い獣が現れたのは。
     それが最近集落で噂になっている狼であることはすぐに分かった。
     狼はしずしずとラギーの前に歩み寄ると、咥えていた大ぶりの葉を落とし、身を低く沈めた。
    「……あの、オレに乗れってコト?」
     狼はアウゥンと低く鳴いた。
     持ってきた葉っぱは傘代わりには使えそうなほど大きいし、狼に乗ればあっという間に集落までつけるだろう。だが、この狼を信用して良いものか。
     迷った末に、ラギーは葉を拾い上げて狼の背に乗った。賢いと言ってもどうせ獣だし、いざとなれば飛んで逃げてしまおう。
     ラギーが乗るや否や、狼は嬉しそうに鳴くと、大地を蹴って走り出した。
    「うわっ!! っと、早ぇえな」
     傘代わりの葉が飛ばされないように両手で抱えて、バランスを取るべく身を低くする。自然とラギーは狼の背に寝そべるような姿勢となった。
     鼻先を埋めれば、真っ白い毛並みは干し草のような優しい匂いがして、無性に心が落ち着いた。自分を乗せて飛んでくれる上等のベッドみたいだ。
     すっかりいい気分でラギーは狼に身体を預けた。
     落ち着いて辺りを見れば、狼は雨あしを避けれるよう木陰を選んで走っているようだった。握りしめた葉のおかげもあって、ほとんど濡れていない。
     力強い足が大地を蹴るたびにあたりの景色はあっという間に過ぎ去って、ラギーの全力疾走よりも早く、森を駆け抜けていった。
     どれほどそうしていただろうか。気がつけば、集落の門が見えてきた。
     狼は妖精たちが好んで住まう大きなキノコの影に駆け寄るなり、ラギーを乗せた時と同じように身を低くした。
     雨に濡れないよう傘変わりの葉を持ったまま降りれば、狼はまたアウゥンと低く鳴いた。
     この獣はラギーの事が大好きで、役に立てたのが誇らしくて仕方ないのだ。そう理由もなく思った。
     初めて会ったはずなのにひどく懐かしい、不思議な親しみに胸の奥がきゅっと苦しくなった。
    「ねぇ、アンタ、は……」
     そう呼びかけるも、狼は突然目を丸くすると、ラギーの頬に鼻先を擦りつけたと思えば、あっという間に走り去ってしまった。
     何が起きたのだろう。
     呆然とするラギーの耳に飛びこんできたのは、聞き慣れた仲間たちの声だった。
     小鳥ほどの大きさの色とりどりの羽と髪をはためかせた少女たちの姿は見慣れたものだ。だが外見の可憐さとは裏腹に、手に手に魔法石がついた杖を持ち、今にも狼を追って飛んでいきかねない剣幕だった。
    「ラギー!! 大丈夫だった!??!」
    「あなた、狼に襲われそうだったのよ」
    「まったく……こんな集落の近くに来るなんてふてぶてしいわね!」
     ラギーへの心配と狼に対する敵意を口々にまくし立てる仲間たちにラギーは圧倒されつつも反論を試みた。
    「いやー、オレなら平気っつうか。あの狼くん、むしろ助けてくれたぐらいで……」
    「何言ってるの!!! それが狼の手口なのよ」
    「そうよ。そうやって近づいて、油断したところをパックリなんだから」
    「特にラギーはきれいなんだから気をつけないと! 色々と危ないわ」
     噛み付く勢いの仲間たちにラギーは思わずのけぞりながら、まあまあと宥めた。
    「あー。わかったッス、わかったッスから〜。とりあえず、落ち着いて、一回戻りましょ、ね?」
     仲間たちを宥めて集落に帰る。気がつけば、雨はすっかり止んで雲間からは金色の太陽が覗いている。その色彩は、あの狼の目によく似ていた。


     それから、狼はラギーの周囲によく現れるようになった。
     とはいえ何をするでもなく行儀よくラギーを見守るだけだ。苔や若葉の緑と土の黒、それから木々の太い幹の茶色……様々な色彩が織りなす森を行く真っ白い衣装のラギーと、その後ろをついて回る白い毛並みの狼。何にも染まらぬ白い妖精と白い獣という光景はすぐにラギーの日常となった。
     やたらと付きまとわれることに最初こそ居心地の悪さを覚えたが、次第に『まあとって食われるわけでもないしまあいいか』と思うようになった。
     元々、神経は図太いほうだ。何かと繊細だったり気難しかったりする仲間の妖精や心配性の母親とは別の生き物なんじゃないか、と思うことだってあるぐらいだ。
     閑話休題。
     斯くして、狼はラギーの日常に溶け込んでいった。
     森の奥で母親が持たせてくれたビスケットを食べる傍ら、あるいは昼寝をしている間、狼はいつもラギーの傍らで行儀よく座っていた。
     そんな彼に、言葉が帰ってくるわけない、と理解しながらも話しかけるのが常になった。
    「あんたも変わってるッスね。何か得するワケでもねぇのにオレなんかについてくるなんて」
     実際、ラギーは集落の妖精でも魔法が使えず、動物の言葉もわからないみそっかすだ。母親や仲間たちは良くしてくれるけれど、でかい図体を活かして食べ物を取ってくるぐらいしか役に立てない。
     自嘲気味に笑うラギーに、狼は獣らしからぬ仕草で首を振った。
    「あーあ、オレも魔法石とか持たせてもらったら魔法とか仕えるようになるんスかねー」
     家に使っていない魔法石ならあるけれど、母親が触らせてくれないのだ。
     ぼやいてみせれば、狼は人間じみた仕草で首を竦め、しばし何かを考え込んでいるようだった。
     やがて、彼は『ウルル……』と鳴いて鼻先をラギーの頬に擦り付けると、森の樹と樹の間に消えていった。
    「『待ってろ』って言われた、んだよな?」
     狼の言葉なんて分かるはずもないのに、何故か頭にそう浮かんだのだ。
     ラギーはしばし、おやつに持ってきたビスケットをかじりながら木々の緑の間に狼の白い毛並みが現れるのを待った。
     やがて、たくさんあったビスケットが残り数枚になった頃、狼は姿を現した。その口には先程はなかったバスケットが咥えられている。彼はラギーの下へと歩み寄ると、器用にそれを差し出した。
     一体どこから取ってきたのだ、と訝しみながらも受け取って、バスケットにかかっていた布を取る。入っていたのは、黄金みたいな色をしたカボチャのパイだった。
    「コレ、食べて良いんスか?」
     戸惑いがちに尋ねれば、狼はひとつ頷いた。
     ご丁寧に食べやすくカットされたそれをひと切れ口に放り込む。
     よく言えば素朴、悪く言えば田舎くさい品だ。丁寧に作ってあるのだけど、安物の粉やカボチャを使ってるのか味は悪くないけど、舌触りがボソボソする。
     初めて食べるなのに、不思議な懐かしさを感じた。胸の奥にある優しくてあたたかい気持ちを呼び起こすような、そんな味だ。
     ひと切れ、もうひと切れ、とせき立てられるようにラギーはパイを貪った。
     狼は、何かを堪えるような顔でじっとラギーを見守っていた。
     やがて、最後のひと切れを食べ終えた時、ラギーはぼそりと呟いていた。
    「……ばあちゃん」
     我知らず出た言葉に彼は口元を押さえた。ラギーに居るのは母親だけで、祖母なんていない筈なのに、何故自分はそんな事を口走ったのだろう。
     動揺と混乱で頭がぐちゃぐちゃだ。それでも、ラギーはたったひとつの手がかり……パイを持ってきた狼に詰め寄った。
    「ねぇ! キミ、今のパイって一体どんな……っ!」
     必死で問いただすラギーの耳に、二人の背中の方からパキリ、と枝が折れる音がした。
     慌てて振り返れば、森の木々の間からひとりの少年が顔を出していた。
    「……っ!!」
     それは、ラギーと同じぐらいの背丈をした真っ白い服の少年だった。上等な焦がしバターのような肌に、まん丸い瞳、笑顔が癖になっているように上がった口角。いかにも人懐こそうで、その出で立ちに驚異は感じられない。
     だが、何よりラギーを驚かせたのは少年の服の意匠があまりに自分が着ているそれと似ていた事だった。頭の花冠からつま先のブーツまで真っ白で、キラキラした糸をふんだんに使った刺繍で彩られている。
     ラギーと狼に気づかれたと悟った少年は困ったように頬をかいて、それから何か言おうとした。が、木々の間から伸びてきた別の誰かの手がたちまち真っ白い衣服の少年を緑の繁みの中に隠してしまった。

    「おい……っ!! 勝手に出るなって言っただろう!!」
    「ごめんごめん。上手く行くかって思ったら、つい身体が乗り出しちまって」
    「まったく。ラギーに警戒されたらどうするんだ」

     二人が隠れた繁みの中から、潜めた話し声がする。
     いずれも聞いた事のない、けれど親しみのような何かを覚える声だ。
     どうして彼らが自分の名を知っているのだろう。さっきのパイとこの話し声は何か関係があるのだろうか。
     繁みをじっと見つめるラギーの裾を、狼がクゥンと鳴いて引っ張った。繁みの方へと誘っているのだ。
     いつも賢く、大人しい彼にしては珍しく、急かすような仕草に、ラギーの中の好奇心が疼いた。
     彼は狼に誘われるように、繁みへと歩き出した。一歩、ニ歩、三歩、やがて伸ばした指先が繁みをかき分けようとしたその時……!!
     突然吹いてきたそよ風によって、ラギーの身体はふわりと宙に浮いた。
    「うわっ!!」
     咄嗟に飛び跳ねる狼に向けて手を伸ばすも、あまりに高く浮いてしまったせいで届かない。
     離れていく大地にラギーが目を白黒させていると、不意に母親の声が聞こえてきた。
    「ラギー!! こいつらから離れなさい!!」
    「母ちゃん!?」
     見れば、森の大樹の上にオウムほどの身の丈の、ラギーと同じ髪と目の色をした妖精、ラギーの母親が停まっていた。
     彼女はラギーの返事を聞こうともせず、魔法石が填められた身の丈ほどもある杖を振った。
     すると、森の木々をなぎ倒さんばかりの旋風が発生し、ラギーを見上げる狼やその後ろにある繁み目がけて吹き付けた。
     狼はアオォーンと高く遠吠えをするなり、繁みの中へと飛び込み、一瞬中で何かをしたかと思えば、すぐに繁みの向こうに飛び出してきた。
     その背中には先程の人懐こそうな少年とまた別の蛇を思わせる長髪の青年が乗っていた。
    「おー!! すごいな! 魔法のじゅうたんにも負けない乗り心地だぜ」
    「そんなのんきな事を言ってる場合が!! くそ、頼むぞジャック!!」
     青年の叱咤に狼は喉を鳴らして応えると、迫りくる旋風から逃れるべく大地を蹴ってラギーや母親がいるのと逆側へとたちまち走り去ってしまった。
     その勢いと来たら、旋風でも追いつけないほどだ。狼に乗っている二人も身を屈めて必死でしがみついている。
    「くっ、待ちなさい!!」
     ラギーの母が再度杖を振れば、木々の枝が折れたかと思えば、空に浮かび上がり、矢のように狼たちめがけて降り掛かる。彼らは逃げるのに必死で上空からの攻撃に気がついていないようだ。
    「危ねえっ!!」
     そう叫んだ矢先、狼たちにふりかからんとしていた木の枝は一瞬で消えた。正確に言えば、砂となったのだが上空から見下ろすラギーはそこまで気がつくことができなかった。
     何が起きているのかも理解できぬまま、ラギーはただ去り行く狼の背中を見つめていた。

     *

     その後、母親によって妖精の集落に連れ帰られたラギーはこっぴどく怒られた。 でかい図体のラギーのためにわざわざ建て直した自宅に入るなり、彼女は滔々と異種族の危険さや彼らが妖精にした仕打ちを語りだした。
     元々母はひどい異種族嫌いで、ラギーに近づく狼を快く思っていなかった。その上、ラギーと同じような身の丈の者たちまで森に現れたとあってか、彼女はまるで烈火の如く勢いで危険を解き、豪雨が如く勢いで心配を語った。
    「……お願い。私にはもう貴方しか居ないの。知らないやつらに近づいたり、無防備に身を晒さないでちょうだい」
     大きな目いっぱいに涙を溜めて、少女のように手を組んで哀願する母にラギーはすっかり参ってしまった。
     何かされたわけではないのに、一方的に襲いかかるなんてこっちの方が悪者ではないか。オレだってあいつらと同じような外見してるけど無害なんだから良いじゃないか。
     言葉を尽くして反論したものの、母親はちっとも譲らない。怒られるだけならまだ良いけれど、泣かれるのは苦手だ。小さい頃から『女の子には優しくするんだよ』と言い聞かされたせいで、涙を見るとどうして良いかわからなくなるのだ。
    ーーあれ。言い聞かされたって、誰にだっけ?
     記憶を辿ろうとしても、靄がかかったように思い出せない。ただ、頭を撫でてくれる皺くちゃの優しい手が浮かぶだけで、何もーー。
     ラギーの沈黙を良いように解釈したのか、母親の妖精は羽根をはためかせて飛びついてきた。
    「……ああ!! わかってくれたのね。大丈夫、お母さんがあいつらなんて追い払ってあげるから。まったく、人間たちと来たら『あの子』だけじゃなくラギーまで狙うなんて!」
    「い、いや? 母ちゃん??」
     何やら勝手に話を進めだした母親を呼ぶも、彼女はすっかり自分の世界に入ってしまっていた。こうなると中々戻ってこないのだ。
    「きっと拐って売り飛ばしたり見世物したりするつもりなんだわ……ああ、考えただけで恐ろしい! とにかく、危ないから貴方は集落から出ずに過ごしなさい!」
    「……へーい」
     内心でぺろりと舌を出しながら、ラギーはとりあえず頷いた。
     そんな二人を見張るように、窓の外に一匹のコウモリが停まっていたが、ラギーも母親もそれには気づかないまま、日常に戻っていった。

    つづく
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    KNever2tyo

    MAIKINGビスケットの妖精と白狼
    🧚ガララギや🐺ジャクがが出てくるお話。おおむね気分転換に書いたやつ。
    ジャラっぽさはないけど、ジャラと言い張る何かです。
    ビスケットの妖精と白狼

     最近、狼をよく見る。
     獣の王と形容したくなるほど大きな身体をした白い狼で、尻尾と耳の先だけが黒い。
     その狼には不思議な風格があった。群れることを良しとせず、いつも一匹でいる癖にか弱い草食獣や幼い子どもの動物を襲うことはなかったし、森を害そうとする人間に立ち向かうことすらあった。
     事実、森に住む動物たちは彼を『王』と定めたらしく、やんちゃなキツネもイタズラ好きなウサギも狼を目にすると、たちまち頭を垂れて大人しくなるのだ。
     その上、彼はひどく利口な性質らしく、森を無闇矢鱈と荒らしたり、ラギーたち妖精が住む集落を襲ったりもしなかった。
     することと言えば、満月を思わせる冷たい金色の瞳で妖精の集落を見つめること、それから、ラギーが仲間と離れてひとり森を歩いているとどこからともなく現れて見守ること。それぐらいだ。
     仲間の妖精たちは『何を考えているかわからない』『どうせ本性は残酷なのよ』と悪しざまに語っていたが、ラギーはそうは思わなかった。

     というのも、狼はラギーを助けてくれたことがあったのだ。

     陽気の良い春のある日、仲間と離れてひとり森でベリーを摘ん 6976

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     最近、狼をよく見る。
     獣の王と形容したくなるほど大きな身体をした白い狼で、尻尾と耳の先だけが黒い。
     その狼には不思議な風格があった。群れることを良しとせず、いつも一匹でいる癖にか弱い草食獣や幼い子どもの動物を襲うことはなかったし、森を害そうとする人間に立ち向かうことすらあった。
     事実、森に住む動物たちは彼を『王』と定めたらしく、やんちゃなキツネもイタズラ好きなウサギも狼を目にすると、たちまち頭を垂れて大人しくなるのだ。
     その上、彼はひどく利口な性質らしく、森を無闇矢鱈と荒らしたり、ラギーたち妖精が住む集落を襲ったりもしなかった。
     することと言えば、満月を思わせる冷たい金色の瞳で妖精の集落を見つめること、それから、ラギーが仲間と離れてひとり森を歩いているとどこからともなく現れて見守ること。それぐらいだ。
     仲間の妖精たちは『何を考えているかわからない』『どうせ本性は残酷なのよ』と悪しざまに語っていたが、ラギーはそうは思わなかった。

     というのも、狼はラギーを助けてくれたことがあったのだ。

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