どれだけ離れたって巡り会えるのさ(水麿)「本丸で、また会えたらさ」
水心子はそう言ってはにかんだ。この世に数多の同位体を持つ自分たちだけれど、この彼のことだけは間違うはずがない。
「今度こそいっぱい抱き締めるから、時間をかけて、好きだってこと伝えるから、……そうしたら、それからはずっと一緒にいてね」
泣き出しそうな語尾は転送装置に飲み込まれて消えた。先に本丸へと迎えられていった水心子を見送る。
政府職員が面食らった顔をしていた。これまで二人きりの時以外ではあんな柔らかい話し方をしたことがなかったのに、この施設での最後だったからなのだろうか。
「…大丈夫、すぐに行くよ」
そう呟く。本丸へ向かった水心子に反して、清麿はこれからまた江戸の地に赴くけれど、不安なんて微塵もなかった。
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