南陽殿と玄真殿の小神官の受難ふと、意識が浮上するのを感じた。
窓の向こうは暗く、まだ深夜だと判る。
殺気を感じたわけでもなく、寝付きが悪くなるような出来事があったわけでも無い。
何故目が覚めたのだろう?
僅かな疑念を抱きながらも、慕情はまた目を閉じる。
しかし、拭えぬ違和感に目は冴えるばかりだ。
何なのだろう。
慕情は気分を変えようと傍らの水差しに手を伸ばし………その手を止めた。
やけに居心地が悪いわけだ。纏う衣が僅かに大きい。
そして、その袖から伸びた手は少しばかり輪郭が丸かった。
目を凝らさないと分からないような微妙な変化だが、慕情が自身の体の変化に気付かないわけがない。
「…………?」
反射的に、慕情は自身の顔に触れていた。
頬も丸みを帯びており、斬馬刀を使い込んだ証の手の平のまめも無い。
6289